乳がん治療薬「トラスツズマブ デルクステカン」HER2低発現でも有効性を示唆

文:がん+編集部

 トラスツズマブ デルクステカンの治験の最新データが発表されました。HER2低発現の乳がん患者さんにおいても有効性が示唆されたそうです。

HER2低発現の乳がん患者さんを対象とした第3相臨床試験をまもなく開始

  第一三共株式会社は12月10日、米国テキサス州サンアントニオで開催中のサンアントニオ乳がんシンポジウムで、HER2低発現の乳がん患者さんに対するトラスツズマブ デルクステカンの治験の最新データを報告したことを発表しました。

 前治療を受けたHER2低発現の再発・転移性の乳がん患者さん43人で、全奏効率※1が44.2%、病勢コントロール率が79.1%、奏功期間中央値が9.4か月、無増悪生存期間※2の中央値が7.6か月だったそうです。また、HER2低発現でホルモン受容体陽性の患者さん38人の全奏効率は47.4%、病勢コントロール率は81.6%、奏功期間中央値は11.0か月、無増悪生存期間の中央値は7.9か月でした。安全性に関しては、HER2低発現の乳がん患者さん170人で、グレード3以上の有害事象が認められた人が50.0%、重篤な有害事象は22.9%、原因を問わず死亡に至った有害事象は2.9%でした。

 また、トラスツズマブ デルクステカンのすべての臨床試験で発現した間質性肺炎の中間報告も発表されています。665人の患者さんのうち66人で間質性肺炎の発現が報告され、グレード2以下が53人、グレード5が5人でした。グレード5の乳がん患者さんは4人で、間質性肺炎外部判定委員会によって、4人ともトラスツズマブ デルクステカンとの因果関係ありと判定されています。

 さらにHER2陽性乳がん患者さんに対するトラスツズマブ デルクステカンの推奨用量設定については、有効性と安全性を踏まえ、HER2陽性乳がん患者さんを対象とした第2相臨床試験と2つの第3相臨床試験で、5.4mg/kgに決定したという報告もありました。

 現在、HER2低発現の乳がん患者さんに対する抗HER2療法はありません。今回の最新データの報告により、HER2低発現の乳がん患者さんに対する新たな抗HER2療法としてトラスツズマブ デルクステカンが期待されます。第一三共は、HER2低発現の乳がん患者さんを対象とした第3相臨床試験をまもなく開始する予定です。

※1:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。※2:完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。
奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。