キイトルーダ、効能・効果の6つの変更で承認

2019/01/11

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)の効能・効果について6つの変更が承認されました。

特定のバイオマーカーに基づく、がん種を問わない国内初の治療薬

  MSD株式会社は2018年12月21日、ペムブロリズマブの効能・効果の一部変更に関して承認されたことを発表しました。今回の変更は以下の6点です。

  • がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん(標準的な治療が困難な場合に限る)への適応拡大
  • 悪性黒色腫術後補助療法としての適応拡大
  • 悪性黒色腫について、固定用量への用法・用量の変更
  • PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対する初回治療としてペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法としての適応拡大
  • PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(扁平上皮がん)に対する初回治療としてカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法としての適応拡大
  • PD-L1陽性(TPS≧1%)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する初回治療としての単独療法としての適応拡大

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんへの適応拡大

 MSI-Highへの適応拡大は、MSI-High固形がんを対象とした2つの第2相試験の結果によるものです。1つは、治療歴があるMSI-Highの結腸・直腸がん患者さん61人を対象にしたKEYNOTE-164試験の結果で、奏効率※1は27.9%で、対象者の57.4%に副作用が認められました。主な副作用(10%以上)は、関節痛16.4%、悪心14.8%、下痢13.1%、無力症11.5%およびそう痒症11.5%でした。

 もう1つの試験は、治療歴があるMSI-Highの結腸・直腸以外の固形がん患者さん94人を対象にしたKEYNOTE-158試験で、奏効率37.2%で、対象者の61.7%に副作用が認められました。主な副作用(10%以上)は、疲労11.7%およびそう痒症11.7%でした。

 共通のバイオマーカーに基づいてがん種横断的に効能・効果(適応)を有するがん治療薬は、国内初です。

悪性黒色腫の術後補助療法への適応拡大および悪性黒色腫の用法・用量

 悪性黒色腫に関する適応拡大と用法・用量の変更は、EORTC1325/KEYNOTE-054試験の結果によるものです。適応拡大に関しては、切除後の再発リスクが高い悪性黒色腫ステージ3A患者さん1019人を対象に、術後補助療法の有効性と安全性が示されました。全患者における無再発生存期間を有意に延長し、再発または死亡のリスクが43%低減しました。

 用法・用量の変更に関しては、1回2mg/kgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する用法・用量から、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する用法・用量へ変更です。

非小細胞肺がんに関する適応拡大

 非小細胞肺がんに関する適応拡大は、KEYNOTE-189試験KEYNOTE-407試験KEYNOTE-042試験の結果によるものです。

 KEYNOTE-189試験では、PD-L1発現にかかわらず未治療の転移性非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)患者さん616人を対象に、ペムブロリズマブと+ペメトレキセド(製品名:アリムタ)+プラチナ製剤併用療法と標準化学療法を比較した結果、全生存期間※2を有意に改善し、死亡リスクが半減しました。

 KEYNOTE-407試験では、PD-L1発現にかかわらず、未治療の転移性非小細胞肺がん(扁平上皮がん)患者さん559人を対象に、ペムブロリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法とプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルの併用療法を比較した結果、全生存期間が有意に改善し、死亡リスクが36%低下しました。

 KEYNOTE-042試験では、PD-L1陽性(TPS≧1%)の未治療の非小細胞肺がん患者さん1274人を対象に、ペムブロリズマブ単独療法がプラチナ製剤併用化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルまたはカルボプラチン+ペメトレキセド)と比較した結果、全生存期間を有意に延長しました。

製品名キイトルーダ®点滴静注 20mg
キイトルーダ(R)点滴静注 100mg
一般名ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
効能・効果根治切除不能な悪性黒色腫
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌
がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
用法・用量根治切除不能な悪性黒色腫>
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mg2mg/kgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。ただし、術後補助療法の場合は、投与期間は12カ月間までとする。
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
承認取得日根治切除不能な悪性黒色腫:2016年9月28日
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌:2016年12月19日
再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫:2017年11月30日
がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌:
2017年12月25日
根治切除不能な悪性黒色腫(用量:1回200mg2mg/kg
PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る):2018年12月21日
薬価基準収載日
発売日
2017年2月15日
薬価キイトルーダ(R)点滴静注 20mg:1バイアル 75,100円
キイトルーダ(R)点滴静注 100mg:1バイアル 364,600円

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※1:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。