最新がん5年/10年生存率が発表、改善傾向
2019/04/16
文:がん+編集部
最新のがん5年生存率と10年生存率のデータが発表されました。5年生存率、10年生存率とも前回の発表から改善していますが、臨床的に意味のある変化とは認められませんでした。
5年生存率、前立腺がんは100%、膵がんは9.2%
国立がん研究センターの研究開発費に基づく研究班「がん登録データと診療データとの連携による有効活用に関する研究班(班長:東 尚弘)」は4月9日に、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟施設(32施設)での診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計し、全がん協ホームページで一般公開したと発表しました。同研究班では、1999年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公開し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システムKapWebを、さらにより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公開するなど、先駆的な取り組みを行い諸問題の調査、研究に取り組んでいます。
全部位で全病期の5年相対生存率(がん以外の死因による死亡などの影響を取り除いた生存率)は67.9%で、前回の62.3%から徐々にではありますが、改善傾向にあります。化学療法、放射線治療、早期発見の進歩の貢献によるものと考察されています。部位別の5年相対生存率は、前立腺がんが100%、乳がんが93.9%、甲状腺がんが92.8%と高く、一方で胆のう胆道がんは28.0%、膵臓がんは9.2%と低いことがわかります。
10年相対生存率(全部位で全病期)は56.3%で、前回の55.5%から若干の改善が見られました。多くの部位で改善傾向はみられましたが、生存率が低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化とは認められなかったとしています。
5年相対生存率 | 10年相対生存率 | |||
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部位 | 生存率 | 部位 | 生存率 | |
前立腺 | 100% | 前立腺 | 95.7% | |
乳 | 93.9% | 甲状腺 | 84.3% | |
甲状腺 | 92.8% | 子宮体 | 80.0% | |
子宮体 | 85.7% | 乳 | 83.9% | |
大腸 | 76.6% | 大腸 | 66.3% | |
子宮頸 | 76.2% | 胃 | 64.2% | |
胃 | 74.9% | 腎 | 63.3% | |
卵巣 | 64.4% | 子宮頸 | 69.0% | |
肺 | 43.6% | 卵巣 | 45.0% | |
食道 | 45.9% | 肺 | 31.0% | |
肝 | 36.4% | 食道 | 30.3% | |
胆のう胆道 | 28.0% | 胆のう胆道 | 16.2% | |
膵 | 9.2% | 肝 | 14.6% | |
膵 | 5.4% |
今回発表されたデータの概要
- 対象施設
- 全国がんセンター協議会32加盟施設 2019年4月現在
- 収集症例
- 1997~2010年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った60万4,910症例
- 収集対象
(5年相対生存率) - 2008~2010年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした14万675症例
- 収集対象
(10年相対生存率) - 2002~2005年に診断治療を行った症例のうち、以下の条件を満たした7万285症例
- 集計基準
- 5歳未満95歳以上除外
良性腫瘍・上皮がん・0期・転移性腫瘍は除外
解析対象は、自施設診断自施設治療、および他施設診断自施設治療症例(診断のみは解析対象外)
臨床病期判明率60%以上、追跡率(予後判明率)90%以上の基準を満たした施設のデータのみを集計