がん免疫は抑制されるのに、感染免疫は抑制されない仕組み

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント分子のPD-1とPD-L1が結合することで、T細胞のがん細胞への攻撃が抑制される一方で、感染防御など生体に有益な免疫応答が抑制されないメカニズムが解明されました。

PD-1免疫応答は使い分けられているという発見

 徳島大学は4月15日に、PD-1が感染免疫応答などの生体にとって有益な免疫応答を抑制せずに、自己免疫疾患につながる免疫応答やがん免疫応答を選択的に抑制するメカニズムを解明したと発表しました。徳島大学先端酵素学研究所の杉浦大祐特任助教、岡崎拓教授らの研究グループによるものです。

2018年のノーベル生理学・医学賞は、免疫チェックポイントによるがん免疫の抑制メカニズムを解明し、免疫チェックポイント阻害薬を開発したことで、本庶佑博士とJames P. Allison博士が受賞しました。がんを攻撃するT細胞が発現しているPD-1と、がん細胞に発現しているPD-L1が結合することで、がん免疫応答が抑制されること、および、この結合をPD-1抗体で阻害することで、再びT細胞を活性化できるという発見は、がん治療ならびにがん研究に大きな変革をもたらしました。

 一方で、PD-1は自己組織やがん細胞を攻撃するT細胞の活性化を抑制するにもかかわらず、感染症などから自己を守るための通常の免疫応答を抑制することがないことから、PD-1の機能は使い分けられているのではないかと考えられていましたが、メカニズムは解明されていませんでした。

 これまで、抗原を認識するだけではT細胞は活性化せず、T細胞に発現しているCD28が抗原提示細胞上に発現するCD80かCD86と結合することが必要ということはわかっていました。また、T細胞上のPD-L1が抗原提示細胞上のCD80と、さらにはT細胞上のCD80が抗原提示細胞上のPD-L1と結合することで、T細胞に抑制性のシグナルを伝達すると、報告されていました。研究グループは、PD-L1とCD80がT細胞と抗原提示細胞の間で向かい合って結合するのではなく、同じ細胞上で隣り合わせに結合することを見出したことから、その生物学的意義を解析し、今回の発見に至ったそうです。

 本研究により、PD-1が感染免疫応答などの生体にとって有益な免疫応答を抑制せずに、自己免疫疾患につながる免疫応答やがん免疫応答を選択的に抑制するメカニズムが解明されました。新たな自己免疫疾患の治療法開発につながることが期待されます。