膵臓がん、次世代抗がん剤の創薬を目指し産学連携

2019/05/10

文:がん+編集部

 がん吸収性ペプチドを応用した、膵臓がんに対する次世代抗がん剤の創成を目指し、新潟大学と米エーザイ・インクが共同研究を開始します。

膵臓がん、からだにやさしく十分な効果がある新薬開発として期待

 新潟大学は4月25日に、難治がん征圧に向けたがん吸収性ペプチドを応用した次世代創薬技術に関して、エーザイ株式会社の米国子会社エーザイ・インクと提携し共同研究を実施すると発表しました。同大学大学院医歯学総合研究科分子細胞病理学分野の近藤英作教授らが開発した、膵臓がんへの薬物送達システムの輸送体となる特殊なペプチドを使った、標的化新薬の共同開発です。

 ペプチドは、数個から数十個のアミノ酸の連続体で構成される小分子です。健康食品やサプリメント、飲料にも使われていますが、きわめて多彩な生理機能を担っています。そうしたペプチドの中に、細胞や組織を損傷せず細胞内に取り込まれる細胞透過性ペプチドがあります。研究グループは、難治性の膵臓がん細胞・組織の内に選択的に取り込まれる性質を持つ新規のペプチド(腫瘍ホーミングペプチド)の開発に成功しました。

 今回の共同開発は、このペプチドに抗腫瘍効果のある薬を載せて、選択的にがん細胞へ薬を運ぶようにした次世代創薬技術を使い、次世代抗がん剤の創成を目指したものです。

 今回開発された腫瘍ホーミング技術を基にして作られたオリジナルペプチドは、浸潤性膵管がんに高度にシフトした吸収性を発揮し、なおかつ生体低侵襲性も実現しています。このペプチドに、既存の臨床で使用されている抗がん剤を組み合わせることで、患者さんのからだにやさしく、かつ十分な効果が期待されます。

 同大は「本学とエーザイが協働し、依然として予後不良の難治がんとして大きな課題となっている膵がんの患者さんのための革新的な治療薬として、次世代抗膵がん薬(抗膵がん PDC)の創成と、本邦発信の膵がん先進医療の確立、そしてがん患者さんのベッドサイドに届けることを目標として、21世紀の新しい革新的ながん征圧医療技術の展開を目指していきます」と今後の展望を述べています。