アーリーダ、転移のない去勢抵抗性前立腺がんの治療戦略

2019/06/20

文:がん+編集部

 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんの効能・効果で2019年3月に承認されたアパルタミド(製品名:アーリーダ)の発売に伴い、製造販売元であるヤンセンがメディアセミナーを開催しました。

前立腺がん治療における次なる課題とQOL

 ヤンセンファーマ株式会社は6月19日に、2019年3月に承認されたアパルタミドが5月30日に販売開始となったことに伴い、「前立腺がん治療における次なる課題とQOL」と題したメディアセミナーを開催。横浜市立大学附属市民総合医療センター教授の上村博司先生と前立腺がん患者会「腺友倶楽部」理事長の武内務氏を招き講演が行われました。

 超高齢社会に伴い前立腺がんの罹患数は増加傾向にあります。前立腺がんは、他のがんに比べて、5年生存率でも10年生存率でも比較的予後のいいがん種といわれています。しかし、初診時に遠隔転移がなくても、初期治療後さまざまな治療経過をたどり、ホルモン療法後、治療抵抗性となり病勢が進行していく患者さんも存在します。こうしたホルモン療法抵抗性になった病態を「去勢抵抗性前立腺がん」といいます。遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんの予後は総じて良好と言われている一方で、比較的早期に転移をきたして亡くなる患者さんも存在します。そのため、去勢抵抗性となった後、転移までの期間を延長することの重要性が見直されていますが、転移がない状態から転移するまでの治療は、アンメットニーズ(治療法の開発が強く望まれるところ)でした。

 今回発売されたアパルタミドは、こうした遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんに対する第2世代の経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬です。「アンドロゲンとアンドロゲン受容体の結合を阻害」「アンドロゲン受容体ががん細胞内への移行を阻害」「アンドロゲン受容体ががん細胞のDNAへの結合を阻害」という3つの作用機序でがん細胞の増殖を抑制するお薬です。

 上村博司先生は講演の中で「遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がん患者さんの中には、死亡/転移のリスクが高い患者さんが存在します。患者さんはできるだけ転移までの期間を延長したいと考えており、転移までの期間の延長とQOLの維持が遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺がんの治療のポイントです。第2世代の抗アンドロゲン薬であるアパルタミドは、こうした患者さんのために開発されました。アパルタミドは、無転移生存期間を大幅に延長し、臨床症状の悪化を遅らせるなど、QOLを保ちながら転移を抑制します」と、話されました。

 武内務氏は「がんを宣告されたとき、再発を告げられたとき、これまでなかった転移が出現したとき、去勢抵抗性になったと告げられたとき、もはや使う薬がないと告げられたき。これらは患者がショックを受けるポイントです。私たちは、転移の出現を遅らせることはできないのか、去勢抵抗性になる期間を長くできないのか、もっと使える薬が開発されないのか、など、それぞれどのポイントでも、こうした願いをもっています」と、がん患者としての希望を話されました。