〇手術後の食事療法について

回答者: 岡山済生会総合病院栄養科科長 大原秋子

1日の食事摂取量の把握を

手術後の食事療法では、消化しやすいものを食べる。食事の回数を増やす-ということがよく言われます。もちろん、手術後はタンパク質や糖質は大切です。

その前に、1日にどのくらいの量の食事を食べられていますか?

体重が増えないことから考えますと、足りていない可能性があります。1カ月で1㎏の体重を増やすには、約240kcal(ご飯150gくらい)をプラスすることをイメージしてください。ご自身にとって、飲み込みやすく、食べやすいものを美味しく召しあがってください。

下痢に注意しながら効率よく脂質を取り入れる

現在、タンパク質と糖質は意識されて摂取出来ておりますので、下痢に注意しながら、効率の良い脂質を取り入れてはいかがでしょうか。

最近では、ココナッツオイルなどの中鎖脂肪酸(MCT)が注目されています。ポテトサラダのようなマヨネーズで合えた料理や、煮物に油を追加した炒め煮、コロッケや天ぷらなどの揚げ物類を食事に取り入れ、ゆっくりよく噛んで召し上がってください。

また、クロワッサンやデニッシュパンはバターが多く含まれるため、少量でもエネルギーが摂取できます。今度は脂質を適切に摂ることをお勧めします。

また、糖尿病や腎臓病に関しては、主治医の先生とよくご相談下さい。何事も摂りすぎはよくありませんので、血液検査などを行いながら食事療法を進めていただければと思います。

筋肉量を増やすためには体を動かすことも

タンパク質、糖質、脂質以外の栄養素も重要です。旬の野菜類や果物も食事に取り入れ、ビタミン、ミネラルの補給もしてください。

そして筋肉量を増やすには、充分量の食事にプラスして動くことが必要です。まずは日常生活の中で、しっかりと動くことを心がけましょう。もっと食欲が湧わいてくるかもしれませんよ。

回答者: 岡山済生会総合病院栄養科科長 大原秋子

手術前の体重や減少期間の把握を

手術前はお太りでしたでしょうか?

元々の体重や、どのくらいの期間で体重が減られたかによっても変わってくるので、一概に体重や食事量を増やす必要はありません。

体重の減少しすぎ、痩せすぎは問題

膵臓の手術後は、食べる量が減ったり下痢をしたりして、ある程度の体重減少はやむを得ないのですが、減りすぎ・痩(や)せすぎは問題です。

BMI(ボディマス指数 [肥満指数])や血液検査などで、栄養状態を評価してもらってはいかがでしょうか。がん患者さんは、管理栄養士による栄養指導を受けることができますから、主治医の先生とご相談ください。

膵臓がんでは明らかではありませんが、胃がんでは食べられずに体重が落ちすぎる人ほど、抗がん薬治療を続けられなくなり、治りやすさにも関わってきます。また、一般的に体重が減ると体力がなくなり、副作用が強くなります。

“今の体重維持” の工夫を

栄養状態は、がん治療にとって非常に大切です。「がんだったら」「がんの治療をしたら」→「食事が摂れなくても当たり前」「体重が減っても当たり前」と思うのではなく、まずは “今の体重を維持” できるように工夫しましょう。

食事を摂るのが苦痛という方もおられます。外食をしたり、みんなと一緒に食べたりして、食事の環境を変えてみることで何か変化があるかもしれません。

食事をまずは楽しむ

食事では主食・主菜・副菜をそろえ、旬の食材や料理をして食事をまずは楽しんでください。食事は栄養を摂ることだけじゃないですからね。

作ることが大変な場合は、無理をしないでお弁当や総菜類、レトルト食品なども取り入れることも一案です。また、ドラッグストアで販売されている栄養補助食品を利用すると、効率よく栄養摂取をすることができます。

最近はどれもおいしくなっているので、一度試してみてはいかがですか。

あと一度に食事量を増やすのではなく、食事の間で摂取するおやつや飲み物も積極的に取り入れてはいかがでしょう。折角ですから、楽しんで取り組んでいきましょう。

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