「あけぼの会」乳がん患者さんを孤独から救いたい、同じ立場から患者さんをサポート

あけぼの会会長 ワット隆子さん
あけぼの会会長 ワット隆子さん

2018.2 取材・文 星野美穂

 あけぼの会は、乳がん患者のワット隆子さんが「同じ経験をした人と助け合いたい」という思いから立ち上げた、患者さんによる患者さんのための患者会です。40周年の節目を迎え、ワットさんが感じる時代の変化や、「ひとりでも多くの患者さんを不安や孤独から救いたい」と語る思い、これからの活動についてお話を伺いました。

同じ経験をした人に会える場

 あけぼの会は、乳がんの患者会として1978年に発足しました。2018年で40周年を迎えます。発足当時、私も乳がん患者のひとりとして、再発の不安や死に対する恐怖、孤独を感じていました。自分と同じ経験をした人と話したい、助け合いたいという思いで立ち上げたのが、あけぼの会です。

 活動としては、全国的に展開している「あけぼのハウス」でのイベントや相談会、医師による講演会や研修会、食事会や温泉旅行など、会員同士が“顔を合わせる”活動を中心に行なっています。また、講演会の記録や全国で行うイベント報告、最新治療の解説などを掲載したニュースレター「AKEBONO NEWS」を年4回発行。「届くのを楽しみに待っています」という声もよくいただきます。

 私は、「同じ経験をした人に会えること」がこの活動の意義だと感じています。がんは不安が多い病気です。患者同士でなければ、家族でさえわかちあえないような悩みもあります。だから、同じ経験をした人と不安や辛さを共有し、安心感を得られることが、とても大事なことだと思います。

多くの情報を得られる時代、難しい決断を迫られることも

 あけぼの会が発足した40年前に比べて、乳がん患者を取り巻く環境は大きく変わりました。私が乳がんになった頃は、がんは“隠す”時代で、医師によるがんの告知は行われていなかったですし、患者自身もがんに関する情報をほとんど持っていませんでした。でも現在では、医師は当たり前のようにがんの告知を行い、治療に関する説明も行います。また、インターネットなどで容易にがんに関する情報を得られるようになり、患者も多くの知識を持つようなりました。ただ、その分、患者自身が難しい決断を迫られる状況が増えていっています。これは患者にとって、時には難題で、とても大変なことです。

 先日、ある人から電話相談を受けました。「主治医との関係に、9年近く我慢をしてきました。今さらですが、病院を変わってもいいでしょうか?」という相談でした。私は、「我慢しているくらいなら、勇気を出して変わるべき」とアドバイスしました。少し、きつく感じられるかもしれません。でも、患者のためになることであれば、多少きついことでもこちらが言ってあげることで、その人は一歩を踏み出すことができます。あとから、「あのとき、言ってもらえて良かった」という反応が多いです。

今も昔も変わらぬ患者さんの不安を減らすために

 患者会としての活動も、少しずつ変わっていかなくてはいけない部分もあると感じています。以前は、患者同士が直接会って話をし、情報を交換するといったことが1番良いと考えていました。でも、今は直接顔を合わせなくても情報のやりとりができるようになり、多くの情報をインターネットで入手できるようになりました。今後は、インターネットなどを利用した患者を支援する仕組みづくりなども、検討していかなくてはいけないと感じています。

 ただ、インターネットで得られる情報だけでは解決できない、患者の孤独や不安は今も昔も変わりません。医師にできる相談もあれば、同じ経験をした患者だからこそできる相談もあると思います。ひとりでも多くの患者を救うために、これからも私たちは活動していきます。

あけぼの会 外部リンク

がん種
乳がん
地域
全国
連絡先
TEL 03-3792-1204(月・水・金 10:00~16:00)
FAX 03-3792-1533
akebonoweb@m9.dion.ne.jp
活動内容
乳がん患者さんによる患者さんのための患者会です。全国的に展開している「あけぼのハウス」でのイベントや相談会、医師による講演会や研修会、食事会や温泉旅行など、会員同士が“顔を合わせる”活動を中心に行なっています。

相談室

毎週水曜日、東京のあけぼの会事務局にて、13:00~15:00までオープン。