「オレンジティ」女性特有のがん体験者を支援、悩みのわかちあいが“一歩を踏み出す力”に

オレンジティ
認定NPO法人オレンジティ (とうきょう・おしゃべりルーム)

2018.2 取材・文 がん+編集部

 子宮がん、卵巣がん、乳がんといった女性特有のがん体験者の自立を支援するために静岡県で設立された「オレンジティ」は、患者さんがそれぞれの悩みを共有する場を提供し、自立を支援するセルフヘルプグループです。その活動は、若年世代(AYA世代)への支援や、全国の患者会の立ち上げのサポートも行うなど多岐にわたります。今回は、東京で活動するスタッフの皆さんと、事務局長の矢後綾子さんにお話をうかがいました。

子宮がん・卵巣がん・乳がん“女性特有”のがん体験者を支援

 オレンジティは、子宮がんと卵巣がんの婦人科がん体験者やその家族や支援者に情報を提供し、自立を支援するために2002年1月に設立。その後乳がんも含めた女性特有のがんを対象とした会となりました。2004年1月9日には、特定非営利活動法人として認証を受け、2011年6月に認定NPO法人の認証を受けました。

 主に、月に1度、静岡県の東部・中部・西部、東京の4会場で開催する交流の場「おしゃべりルーム」、最新の医療情報などを学ぶ「定例会」、会報誌「オレンジティ通信」の発行、がんに関する啓発活動を行っています。本年度から若年性のがん体験者向けの「オレンジブロッサムCafé」の運営や、里親養子縁組制度の情報提供をおこなう「オレンジツリープロジェクト」がスタートしました。

後遺症やセクシャリティに関する悩み、それぞれの悩みを共有する「おしゃべりルーム」

 とうきょう・おしゃべりルームは、毎月第4日曜日に飯田橋で開催しています。東京は、婦人科がん限定で、参加する女性は、リピーターの方や初めての方、闘病中の方や治療を終えている方、これから治療を受ける方などさまざまです。年齢は幅広いですが、30代から40代の方が多く参加することが特徴的です。千葉、神奈川、埼玉県など、他県からも参加されています。最初に、全員で輪になって自己紹介やそれぞれの悩みを共有する“わかちあいの時間”、その後、お茶やお菓子を食べながらお話する“ティータイム”で交流を深めます。リンパ浮腫や美容に関するレクチャーも行っています。

 がんを体験した女性が抱える悩みは、治療のこと、副作用や後遺症のこと、仕事との両立のこと、家族との関係、美容のこと、性に関すること、恋愛のこと、子どもを持てないことなど、さまざまです。東京のおしゃべりルームの特徴は、年齢的にも仕事に関する悩みや、リンパ浮腫に関する話題が多いことです。スタッフの中には、医師の診断や指示に基づいてリンパ浮腫の治療を行う「医療リンパドレナージセラピスト」もいるので、個別相談を開いています。

 昨年の1月から新たにスタートした若年性のがん体験者向けおしゃべりルーム「オレンジブロッサムCafé」は、同年代(思春期から30代)でなければ分かち合えない悩みや情報を共有していく場にしていきたいと思い、工夫しながら開催しています。

“がん患者さんのリアルな悩みに応える”美容に関する情報も提供

 また、とうきょう・おしゃべりルームで昨年から力を入れているのが「Kirei研究所=キレイラボ」。がん体験者向けの美容に関する情報の提供を行うために、スタッフも研修を受け、スキルを身につけながら企画を練っています。

 抗がん剤の副作用で、頭髪だけではなく、眉毛、まつ毛も抜けてしまいます。眉毛やまつ毛がないと、顔の印象が変わってしまうため、女性にとっては特に大きな問題です。例えば、「脱毛に対するカモフラージュはどうしたらいい?」、「眉毛やまつげが抜けてしまったときの対処法は?」といったがん体験者ならではのリアルな悩みに応え、社会復帰への一歩につながるようにと情報提供を行っています。

患者会の立ち上げをサポート、全国の患者さんのために

 また、オレンジティの取り組みとして、2011年から患者会の立ち上げや運営のサポートも行ってきました。「自分たちの県にも婦人科がんの患者会がほしい」という患者さんからの声を受けて、各県に婦人科がんの会を作りたいという思いから始まりました。立ち上げてから1年後には、地域の患者会として独立できるようにサポートしています。秋田、千葉、群馬、富山、神戸、岐阜で独立をしてもらい、独立後にはそれぞれの情報交換や研究協力をしていくためのネットワーク「COGS.net(コグス・ネット)」をつくりました。

 地域ごとに運営していくうえで、少しだけ地域特有の悩みもあります。例えば、秋田で立ち上げをサポートした患者会スノーホワイトでは「なかなか患者会に参加できない人が多い」という悩みがあります。「人に見られたくないから、会に参加できない」といった理由が考えられます。その一方で、「参加はできないけど、こういう会があるだけで嬉しい」「一度しか参加できなかったけど、会報誌が心の支えです」という声をいただけたときはとても嬉しく思います。会報誌「オレンジティ通信」や「コグス通信」は、こういったなかなか活動に参加できない人のためにも発行する意味があると感じています。

 患者会の活動は、“目に見えるもの”だけがサポートではないと思います。ただ、やはり実際に参加して、直接悩みをわかちあうことが“一歩を踏み出す力”につながるということも事実です。このように、活動に参加できず孤独を感じているかもしれない女性たちをいかにサポートしていくかを今後、工夫していきたいと考えています。

認定NPO法人オレンジティ 外部リンク

がん種
子宮がん、卵巣がん、乳がんなど女性特有のがん
地域
静岡県、東京都
連絡先
TEL 090-7434-2002(9:00-19:00)
ot@o-tea.org
活動内容
女性特有のがん体験者を支援するセルフヘルプグループです。最新の医療情報などを学ぶ「定例会」、若年性のがん体験者向けの「オレンジブロッサムCafe」の運営や、里親養子縁組制度の情報提供をおこなう「オレンジツリープロジェクト」などを行っています。

体験者の交流の場「おしゃべりルーム」

【静岡市】毎月第1土曜日、【沼津市】毎月第3土曜日、【浜松市】毎月第3日曜日、【東京都飯田橋】毎月第4日曜日に開催