CAR-T療法の副作用「サイトカイン放出症候群」に対する治療薬の承認申請
2018/06/05
文:がん+編集部
CAR-T療法で比較的多く見られる副作用のひとつにサイトカイン放出症候群があります。重症化すると生命に関わることもありますが、サイトカイン放出症候群に対する治療薬としてアクテムラの承認申請が行われました。
一部の患者さんでは重度の低血圧や呼吸困難などで亡くなることも
中外製薬株式会社は5月29日、キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞輸注療法(CAR-T療法)に伴う副作用のひとつサイトカイン放出症候群(CRS)に対する治療薬として、トシリズマブ(製品名:アクテムラ)の効能・効果追加の承認申請を行ったと発表しました。
CRSは、CAR-T療法で比較的多く見られる副作用のひとつで、多くの患者さんで、軽度または中等度の発熱、悪心・悪寒、筋肉痛といったインフルエンザのような症状が現れます。軽度の場合は、副腎皮質ステロイドホルモンや抗ヒスタミンによる炎症を抑える対処療法が行われます。しかし、一部の患者さんでは重度の低血圧、頻脈、呼吸困難などによって症状が急激に進展し、亡くなることがあります。過剰な免疫反応によって細胞から多量のサイトカイン※が放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することが原因で起こるため、重症度が高い場合は、抗サイトカイン療法が行われます。
今回の申請は、ノバルティス社が実施したキメラ抗原受容体T細胞医療の有効性および安全性を検討した、第2相国際共同治験等の成績に基づくものです。
※サイトカインは、細胞同士の情報伝達を担う主に免疫細胞から分泌されるたんぱく質のことです。