光線力学療法の新デバイス、副作用や負担の少ない次世代型治療法として期待
2018/07/17
文:がん+編集部
光線力学療法の新デバイスの無線給電式・埋め込み型光がん治療の臨床応用が実現すれば、負担が少ない次世代型がん治療法として、将来、患者に恩恵をもたらすと期待されます。
シールのように貼れる無線給電式発光デバイス
早稲田大学と防衛医科大学校は7月17日、シールのように貼れる無線給電式発光デバイスによる光がん治療システムを開発し、担がんモデルマウスで腫瘍を消失させることに成功したと発表しました。早大高等研究所の藤枝俊宣准教授、同大先進理工学研究科の山岸健人博士、同理工学術院の武岡真司教授、防衛医科大学校生理学講座の守本祐司教授らの研究グループとの共同開発によるものです。
光でがんを治療する光線力学療法(PDT)は、1994年以降、早期の肺がん、胃がん、食道がん、子宮頸がんに対して保険適用されています。しかし、腫瘍と光源の位置が少しでもずれると治療効果が得られないため、深部の臓器がんなどに対して、体の中に長期的安定して固定できる埋め込み型の発光デバイスの開発が望まれていました。
研究グループでは、高分子ナノ薄膜と無線給電式LEDを組み合わせることでシールのように貼り付けられる発光デバイスを開発しました。
光線力学療法は、レーザー光線とレーザー光線が当たることで化学反応を起こす光感受性物質を使った治療法です。がんに集まる光感受性物質を体内に入れ、がんに向けてレーザー光をあてると化学反応を起こし、活性酸素を生み出します。この活性酸素によりがん細胞を死滅させるため、がんを含めた部位に照射しても、正常細胞にほとんどダメージを与えないため、比較的副作用も少なく体への負担も少なく治療ができます。
「本研究で開発した体内埋め込み型の発光デバイスは、移植する際に縫合を必要としないため、脳や肝臓、膵臓のような重要な血管や神経を巻き込む組織、構造的に脆弱な組織にも適用ができます。さらに、肝がんや膵がんといった深部臓器がんへの適用が困難とされていたPDTの適用範囲を拡げることができます。無線給電式・埋め込み型光がん治療の臨床応用が実現すれば、負担が少ない次世代型がん治療法として、将来、患者に恩恵をもたらすと期待されます」とリリースでは今後の展開として発表しています。