非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの治験

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治験

プラチナ製剤併用化学療法歴を有する非小細胞肺癌患者を対象に、atezolizumab(抗PD-L1抗体)の有効性及び安全性をドセタキセルと比較する、第3相多施設共同非盲検ランダム化試験

治験概要

この臨床試験は、過去にプラチナ製剤併用化学療法の施行中または施行後に増悪した局所進行・転移性NSCLC患者さんを対象に、アテゾリズマブの有効性と安全性をドセタキセルとの比較により評価する第3相多施設共同非盲検ランダム化試験です。アテゾリズマブ投与群またはドセタキセル投与群に1対1の比率でランダム割付けします。

疾患解説:非小細胞性肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。

肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの順に、割合が少なくなります。

特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。

がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 進行/転移性のIIIB/IV期/再発の非小細胞肺がん(NSCLC)患者さん
  • 先行するプラチナ製剤併用化学療法の施行中または施行後に増悪している、もしくはプラチナ製剤を含む術後/術前補助化学療法の後6か月以内に再発している患者さん
  • RECIST v1.1による測定可能病変がある患者さん
  • ECOG PS 0または1の患者さん
  • 年齢:18歳以上の患者さん
  • 性別:男女
対象とならない人
  • 脳転移があり治療を受けていない患者さん
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴がある患者さん。ただし、手術のみで治癒し、無病期間が持続している患者さんは適格
  • 自己免疫疾患の既往歴がある患者さん
  • 特発性肺線維症(肺臓炎を含む)、薬剤誘発性肺臓炎、器質化肺炎(閉塞性細気管支炎、特発性器質化肺炎)の既往歴、またはスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者さん。ただし、照射野内の放射線性肺臓炎(線維症)の既往歴は適格
  • 活動性B型肝炎またはC型肝炎を有する患者さん
  • ドセタキセル投与歴がある患者さん
  • CD137アゴニスト、抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬、または経路標的薬の投与歴がある患者さん

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP) 」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。

※この記事は、JAPIC-CTIUMIN-CTRなど治験情報の出典元と、がんプラスで過去に掲載した記事の内容に基づき、一般の方でも理解しやすいように治験情報を解説しています。薬剤名や適格者など試験内容に関する表現は、出典元が優先されます。

試験詳細

試験の名称プラチナ製剤併用化学療法歴を有する非小細胞肺癌患者を対象に、atezolizumab(抗PD-L1抗体)の有効性及び安全性をドセタキセルと比較する、第3相多施設共同非盲検ランダム化試験
試験の概要本試験は、過去にプラチナ製剤併用化学療法の施行中又は施行後に増悪した局所進行・転移性NSCLC患者におけるatezolizumabの有効性と安全性をドセタキセルとの比較により評価するためにデザインされた、第3相多施設共同非盲検ランダム化試験である。Atezolizumab投与群又はドセタキセル投与群に1対1の比率でランダム割付けする。
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名アテゾリズマブ
用法・用量1200mgを3週間隔で点滴静注
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザインランダム化、多施設共同、非盲検試験
目標症例数1100
適格基準
  • 進行/転移性のIIIB/IV期/再発のNSCLC
  • 先行するプラチナ製剤併用化学療法の施行中又は施行後に増悪している、若しくはプラチナ製剤を含む術後/術前補助化学療法の後6カ月以内に再発している
  • RECIST v1.1による測定可能病変がある
  • ECOG PS 0又は1
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 脳転移があり治療を受けていない患者
  • 最近5年間に他の悪性腫瘍の既往歴がある患者。ただし、手術のみで治癒し、無病期間が持続している患者は適格とする
  • 自己免疫疾患の既往歴
  • 特発性肺線維症(肺臓炎を含む)、薬剤誘発性肺臓炎、器質化肺炎(閉塞性細気管支炎、特発性器質化肺炎)の既往歴、又はスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者。ただし、照射野内の放射線性肺臓炎(線維症)の既往歴は適格とする。
  • 活動性B型肝炎又はC型肝炎を有する患者
  • ドセタキセル投与歴
  • CD137アゴニスト、抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬、又は経路標的薬の投与歴がある患者
主要な評価項目全生存期間
主要な評価方法
副次的な評価項目
  • 安全性:有害事象の発現率
  • 奏効率、無増悪生存期間、奏効期間
  • 副次的な評価方法RECIST version1.1
    予定試験期間2014年5月~2018年12月

    出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより