大腸がん、生検を受けると内視鏡治療に悪影響
2018/11/09
文:がん+編集部
大腸がんの術前生検を行った人は、生検を行わなかった人に比べて内視鏡治療に悪影響があるという研究報告が発表されました。
生検を行った場合でもESDでは悪影響なし
大阪市立大学は10月31日、大腸がんの術前に診断目的の生検をすることで、粘膜下層に内視鏡的粘膜切除術(EMR)を困難にする高度繊維化が生じやすくなることを初めて証明したと発表しました。同大学の大学院医学研究科消化器内科学の福永周生病院講師と永見康明講師らの研究グループによるものです。
大腸がんの多くは腺腫などのポリープから発生します。このポリープを摘出することで大腸がんによる死亡を減らせることが判明しています。しかし、下部消化管内視鏡検査でポリープが発見された際に診断目的の生検を行うと、EMRで切除するための病変を持ち上げることが困難になってしまいます。そのため、日本消化器内視鏡学会の大腸ESD/EMRガイドラインでも、診断目的の生検はしないことが望ましいとされています。
画像はリリースより
病変が持ち上がらなくなる原因は、腫瘍直下の粘膜下層の繊維化が原因といわれていましたが、今回の研究ではそれを証明したことになります。また、生検が内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に与える治療成績への影響もこれまでは明らかではありませんでしたが、生検が行われてもESDによる治療には悪影響がないことも明らかになりました。
画像はリリースより
同大学の発表では、期待される効果として「生検は高度線維化の原因となり得ることが判明し、大腸ESD/EMRガイドラインのコメントを支持する根拠が得られました。さらに、生検群と未生検群でESDの治療成績に差がなかったことから、なんらかの理由でやむを得ず生検を受けた患者においては、ESDが第一選択となる根拠の一つになると思われます。よって、生検を受けた場合は、ESDが可能な施設で治療を受けることが推奨されます」としています。
研究内容
論文名:大腸側方発育型腫瘍の内視鏡的粘膜下層剥離術における粘膜下層高度線維化に対する術前生検の効果:傾向スコア分析を用いて
対象者:大阪市立大学医学部付属病院でESDを受けた表面型大腸腫瘍の代表である側方発育型腫瘍患者
対象数:395人
生検群1:136人
未生検群2:259人
を対象に、粘膜下層の高度繊維化の有無を比較検討
研究結果
すべての患者での解析結果
生検群:20.6%
未生検群:13.9%
患者背景を揃えた解析結果
生検群:20.6%
未生検群:11.0%
すべての患者の解析結果では、統計学的な有意差は認められませんでしたが、患者背景を揃えた解析では、統計学的に有意に高い結果でした。