CAR-T細胞医療のCTL019、血液がんの2つの治験で持続的奏功を維持

2018/12/26

文:がん+編集部

 チサゲンレクロイセル(製品名:CTL019/米国製品名:Kymriah(キムリア))の2つの治験の長期追跡調査の解析結果が発表されました。進行血液がん患者さんで持続的な奏功を維持しているそうです。

CAR-T細胞医療が進行B細胞性悪性腫瘍の患者さんの生命予後を改善する可能性

  スイス・ノバルティス社は12月1日、CAR-T細胞医療のチサゲンレクロイセルの2つの治験に長期追跡調査の結果を発表しました。再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病の小児患者さんを対象としたELIANA試験と、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんを対象としたJULIET試験の結果です。

 ELIANA試験は、再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病小児を対象とした初のCAR-T細胞医療の国際共同試験です。チサゲンレクロイセルを投与して、全寛解率を評価しました。最新解析では、輸注後3か月時点の寛解率は82%、24か月時点の無再発生存率は62%で、寛解の持続期間中央値は未達です。

 JULIET試験は、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者さんを対象とした初めての多施設国際共同試験です。チサゲンレクロイセルを投与して、全奏功率を評価しました。長期追跡調査の解析では、18か月時点の無再発率は64%、全生存率は43%で、奏功期間中央値は未達です。

 両試験の安全性に関する新たなシグナルはもとめられず、これまで報告された安全性プロファイルと一致しています。

 ノバルティス・オンコロジー・グローバル医薬品開発の責任者であるサミット・ヒラワット医師は「初のキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)医療を患者さんにお届けして以来、ノバルティスは先駆者として、進行が速い血液がん患者さんの治療を変革することに全力で取り組んでいます。これらの解析は、CTL019による奏効の長期持続とその一貫した安全性プロファイルを明確に示すものであり、私たちは、CAR-T細胞医療がこれらの進行B細胞性悪性腫瘍の患者さんの生命予後を改善する可能性があると確信しています」とコメントしています。

ELIANA試験

対象:再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病
条件:3~30歳の患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:単一グループ、オープンラベル
登録数:81人
試験群:チサゲンレクロイセル単回投与
主要評価項目:全寛解率
副次的評価項目:無再発生存期間、全生存期間ほか

JULIET試験

対象:再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
条件:リツキシマブおよびアントラサイクリンを含む2剤以上の化学療法後、自己造血幹細胞移植に失敗もしくは同意しなかった再発・難治性の18歳以上の患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:単一グループ、オープンラベル
登録数:116人
試験群:チサゲンレクロイセ
主要評価項目:全奏効率
副次的評価項目:無増悪生存期間、全生存期間ほか