悪性リンパ腫 病型や悪性度、腫瘤の部位や大きさに応じた治療選択

2018.9 取材・文:町口充

 超高齢社会となった現在、悪性リンパ腫の患者数は年々増えています。悪性リンパ腫は病型が極めて多く、進行のスピードや治療法もそれぞれの病型によって異なるのが特徴です。さらに、全身のあらゆる部位で発症するため、部位に応じた治療選択も大切です。近年、薬や治療法の開発が大きく前進し、一部の病型のリンパ腫の治療成績は飛躍的進歩をとげています。悪性リンパ腫の中でも、罹患率が高い病型や新たな治療法が登場してきた4種類の悪性リンパ腫の治療法を解説します。

悪性リンパ腫とは

 悪性リンパ腫は、生体の免疫機能を担う白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気です。罹患数は1985年に人口10万人あたり5.5人だったのが年々増え続け、2010年には18.7人、2013年には20.2人にまで増加しています。ほかのがん種と比べても悪性リンパ腫の増え方は抜きん出ています。罹患数は、男性のほうが女性より少し多く、発症のピークは70歳代です。

 悪性リンパ腫という病名は、リンパ球のがんをまとめた総称で、実際にはさまざまな病型からなっています(表1参照)。WHO分類(2017年版)では80ほどの病型が示されており、大別すると、病気の発見者の名前にちなんで命名されたホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、日本では非ホジキンリンパ腫が9割ほどを占めています。

 悪性リンパ腫と同じ「血液のがん」である白血病の多くは、血液が作られる過程の未熟な白血球(顆粒球〔好中球、好酸球、好塩基球〕、単球、リンパ球〔Tリンパ球、Bリンパ球など〕)の細胞ががん化するのに対して、悪性リンパ腫では、がん化するのは、成熟したリンパ球がほとんどです(図1参照)。また、白血病はがん化した細胞が血液によって骨髄中から全身に運ばれるのに対して、悪性リンパ腫は、身体の特定の場所に腫瘤という塊をつくりやすい性質があります。腫瘤が発生する部位について大まかにいうと、免疫システムの防衛基地であるリンパ節に発生するタイプ、リンパ節の外の胃や骨髄などの臓器(節外臓器)に発生するタイプ、リンパ節と節外臓器の両方に発生するタイプが、それぞれ3分の1ずつあります。

 非ホジキンリンパ腫では、無治療の場合の予後(自然史)を予測する臨床分類として、悪性度によって、3つに分類されています。「低悪性度(インドレントリンパ腫)」はがん細胞の増殖速度が遅く年単位で病気が進行するもの、「中悪性度(アグレッシブリンパ腫)」は月単位で進行するもの、「高悪性度(高度アグレッシブリンパ腫)」は増殖速度が速く週単位で進行するものです。どの悪性度に分類されるかは、病型ごとにほぼ定められています。

表1 悪性リンパ腫の主な病型と臨床分類

病型臨床分類
悪性リンパ腫非ホジキンリンパ腫成熟B細胞腫瘍慢性リンパ性白血病/ 小リンパ球性リンパ腫
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺緑帯リンパ腫
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
節性辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫低から中
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
成熟T細胞/NK細胞腫瘍T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
成人T細胞白血病・リンパ腫(くすぶり型、慢性型)
菌状息肉症/セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫低から中
末梢性T細胞リンパ腫,非特定型
腸症関連T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
成人T細胞白血病・リンパ腫(急性型、リンパ腫型)中から高
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
急速進行性NK細胞白血病
ホジキンリンパ腫結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
古典的ホジキンリンパ腫結節性硬化型
混合細胞型
リンパ球豊富型
リンパ球減少型

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

図1 造血幹細胞と血液の分化

悪性リンパ腫の原因と発症

 悪性リンパ腫のはっきりとした原因は明らかになっていません。関与が考えられる要因には、遺伝子の異常、免疫亢進や免疫低下などの免疫異常、およびウイルスや細菌の感染がありますが、そのいくつかが次第に蓄積してから発症する「多段階発がん」であることが知られています。

 免疫異常による慢性の炎症が発症に関係しているという報告もあります。自己免疫疾患の1つである橋本病では甲状腺に慢性の炎症が起こりますが、甲状腺のB細胞リンパ腫の患者さんを調べたところ、95%以上が橋本病をもっていたという報告があります。橋本病の患者さんのうち悪性リンパ腫を発症するのは数%ですが、慢性の炎症から浸潤したリンパ球ががん化することによって悪性リンパ腫が発症することがあると考えられています。

 また、かつて国民病といわれた肺結核では、膿胸という胸腔内に膿性液が溜まる病状に至る人が多くいました。膿胸には手術などの処置が行われますが、遷延した膿胸の慢性炎症から数十年後に胸腔壁にEBウイルス(Epstein Barr Virus)が関与した悪性リンパ腫が発生する例が多く見られたのです。さらに、胃炎や胃潰瘍を引き起こすピロリ菌感染者の胃壁でも、悪性リンパ腫の危険性が高まることが指摘されています。

 最近注目されているのは、慢性関節リウマチと悪性リンパ腫との関係です。慢性関節リウマチの患者さんは悪性リンパ腫の発症リスクが高くなることが知られています。特に、慢性関節リウマチの第一選択薬の1つである免疫抑制剤のメトトレキサート(製品名:メソトレキセート、リウマトレックスなど)を服用していると、ときに悪性リンパ腫を発症することが報告され、重篤になると死に至るケースもあります。

 メトトレキサート関連の悪性リンパ腫は、メトトレキサートの服用を中止すると数割の患者さんで自然によくなることもわかっています。したがって、メトトレキサート服用中に発熱したり、リンパ節が腫れた場合などは、医師と相談して服用の中止を検討すべきでしょう。

 

悪性リンパ腫の症状

 悪性リンパ腫は自覚症状によって発見されるケースが少なくありません。首や脇の下、足の付け根などのリンパ節が、触れるとグリグリとした塊がわかるほどに腫れてきたために医療機関を受診し、悪性リンパ腫が見つかることがあります。また、健診で腹部や胸部の深い部分のリンパ節が腫れているのが指摘され、悪性リンパ腫が疑われることもあります。

 症状としては、発熱、盗汗(寝汗)、体重減少も重要です。この3つは、「B症状」と呼ばれる悪性リンパ腫の特徴的な全身症状です。これらの症状がない場合と区別して各ステージは(病期)、B期またはA期と分類されます。この3つの症状が出るのは、リンパ球の機能の1つに免疫応答があり、免疫応答を調節するときにサイトカインと呼ばれる特殊なタンパク質が放出されるためです。例えばインフルエンザに罹患したときは、免疫応答によりこのサイトカインが放出され、発熱などの症状が現れます。ところが、リンパ球のがん化が進むと免疫応答に狂いが生じ、サイトカインが過剰に継続して放出されるようになって発熱、盗汗(寝汗)、体重減少といった持続的な症状があらわれます。

悪性リンパ腫の検査

 悪性リンパ腫を疑う場合は、触診、血液検査、造影CT検査などを行います。最終的に悪性リンパ腫の診断と病型分類を確定するために欠かせないのが、リンパ節や腫瘍の一部を切り取って顕微鏡で観察する生検です。さらに、正確な組織型を知るためには細胞表面抗原マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査も重要です。

 悪性リンパ腫は、全身のどの部位にも発症する可能性があるため、治療を始める前にはどの程度まで病気が広がっているかを調べるため、超音波検査、MRI検査、消化管内視鏡検査なども必要に応じて行いますが、ステージングと呼ばれる病期(ステージ)決定のためにはリンパ腫の広がりと悪性度を評価できるPET/CT検査は必須です。

 病気の勢いや悪性度を調べる検査として、血清LDH(乳酸脱水粗酵素)、CRP(C反応性タンパク)、可溶性インターロイキン2受容体の検査も重要です。このうちLDHはリンパ球が増殖すると数値が上昇するとともに、悪性度が高い悪性リンパ腫では数値が上がるため、治療方針を決定するうえでも大切な検査といえます。

 例えば、初診時にリンパ節が大きく腫れていてもLDHが正常値ならば急いで治療を開始しなくてもよい低悪性度である可能性が高く、また、逆にリンパ節が腫れてLDHも異常な高値を示している場合は高悪性度である可能性を考え、一刻も早く診断して治療を始めるためにそのまま入院することもあります。

 最終的な治療方針は、さまざまな検査による正確な病理診断と、病気の広がりや進行度による病期分類(表2参照)にもとづいて、腫瘍の部位や大きさ、全身状態と年齢を考慮のうえ、具体的な治療方法が選択されます。

表2 悪性リンパ腫の病期分類(Lugano分類,2014)

病期病変部位節外病変の状態
限局期I期1つのリンパ節病変。または隣接するリンパ節病変の集合リンパ節病変を伴わない単独の外臓器の病変
II期横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節病変の集合リンパ節病変の進展による、限局性かつリンパ節病変と連続性のある節外臓器の病変を伴うI期またはII期
II期bulkybulky(大きい)病変を伴うII期該当なし
進行期III期横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変、または脾臓病変を伴う横隔膜の上側の複数のリンパ節病変該当なし
IV期リンパ節病変に加えて、それとは非連続性のリンパ外臓器の病変該当なし

各病期はB症状の有無により、BまたはAに分ける
造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

悪性リンパ腫の治療

 悪性リンパ腫の治療では、がん化した細胞が有する膜表面の蛋白抗原または増殖するために重要な遺伝子やタンパク質をピンポイントで攻撃する分子標的薬が次々と登場し、従来からの抗癌剤、放射線療法と合わせて効果を上げています。このため、どの分子標的薬が効くタイプのリンパ腫なのかを見極めることが大切です。

 例えば、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)の治療を劇的に変えたリツキシマブ(製品名:リツキサン)は、Bリンパ球の表面に発現しているCD20抗原というタンパク質に結合する抗体としてつくられた薬剤です。ほかにも抗CD30抗体とチューブリン毒素を結合させたブレンツキシマブ・ベドチン(製品名:アドセリス)、抗CCR4抗体であるモガムリズマブ(製品名:ポテリジオ)などもあります。

 CD20は、B細胞リンパ腫の9割以上で陽性です。悪性リンパ腫で一番患者数が多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と次に多い濾胞性リンパ腫(FL)に有効であるため、悪性リンパ腫の過半数でリツキシマブが効くことになります。これに対してCD30が陽性になるのはホジキンリンパ腫と未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)のほぼ100%で、CCR4が陽性になるのは成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の95%以上、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の約30%です。

 以下では、代表的な4つの病型について治療法を解説します。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)

 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、日本人の非ホジキンリンパ腫の中で3割強を占める最も発生頻度の高い病型です。現在の標準治療はR-CHOP療法です。これは、リツキシマブ+シクロホスファミド(製品名:エンドキサン)+ドキソルビシン(製品名:アドリアシン)+ビンクリスチン(製品名:オンコビン)+プレドニゾロン(製品名:プレドニン)を併用する多剤併用療法です。病期I、II期の限局期と病期III、IV期の進行期とでは治療が異なり、限局期では腫瘍径が10cmを超えるような巨大腫瘤があるかないかでも異なります(図2参照)。

 限局期で巨大腫瘤なしの場合は、「R-CHOP療法3コースを行ったあとに放射線治療を行う方法」と、「R-CHOP療法を6~8コースを行う方法」の2つの標準治療があり、効果は同等です。一般的には、腫瘤のある部位や患者状態によって選択されます。例えば、のどの周辺の腫瘤では、放射線を照射すると飲食にかかわる口腔内の障害を免れない場合があります。そのような場合は、放射線を併用しない「R-CHOP療法6~8コース」を選択することがあります。また、高齢者では、抗がん剤を短期間に抑えて心毒性や末梢神経毒性などの副作用を軽減するため「R-CHOP療法3コース+放射線治療」を選択することもあります。

 初回治療で過半数のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんは治癒します。寛解になったものの再発した場合と寛解に至らなかった難治性の場合は、サルベージ治療と呼ばれる救援化学療法が行われ、R-CHOPより少し強い薬の併用化学療法が行われます。この救援療法で効果が認められた比較的若年者(65歳未満程度)の場合、自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法を行うことで一部の患者さんは治癒も可能となります。

 再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、CAR-T療法(キメラ抗体受容体T細胞療法)という新しい治療法が登場し注目されています。この治療法は、患者自身の血液からT細胞を採取し、B細胞リンパ腫などで発現するCD19というタンパク質を特異的に認識してがん細胞を攻撃するようにした遺伝子を導入して行う、遺伝子改変T細胞療法です。米国で昨年、世界で初めて小児を含む25歳以下の再発・難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病の治療薬としてチサゲンレクロイセル(製品名:キムリア)が承認され、日本でも今年4月、25歳以下の再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病とともにCD19陽性再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫について承認申請が行われています。

図2 びまん性大細胞性リンパ腫の治療アルゴリズム

限局期(I、II期)
巨大病変なし巨大病変あり
R-CHOP療法3コース+二次元治療計画による放射線治療
R-CHOP療法6~8コース±二次元治療計画による放射線治療
R-CHOP療法6~8コース±二次元治療計画による放射線治療
完全寛解部分寛解安定/進行完全寛解部分寛解安定/進行
二次元治療計画による放射線治療二次元治療計画による放射線治療
無治療経過観察完全寛解部分寛解安定/進行無治療経過観察完全寛解部分寛解安定/進行
進行進行
二次治療

巨大病変 : 最大腫瘍径が10cmを超える、または縦隔病変の最大横径が最大胸郭内径の1/3以上
造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成


図2 びまん性大細胞性リンパ腫の治療アルゴリズム

進行期III、IV期
完全奏功進行安定/進行
無治療経過観察化学療法併用放射線療法
無治療経過観察
再発
二次治療

巨大病変 : 最大腫瘍径が10cmを超える、または縦隔病変の最大横径が最大胸郭内径の1/3以上
造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

濾胞性リンパ腫(FL)

 日本で近年、患者数が他のリンパ腫よりも明らかに増えているのが濾胞性リンパ腫(FL:follicular lymphoma)です。もともと欧米では多く日本では少ないタイプでした。ここ30年ほどで増加傾向にあり、生活スタイルの欧米化との関連が指摘されています。

 濾胞性リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と同じB細胞由来のリンパ腫ですが、一般的に進行が遅いという特徴があり、低悪性度の代表といえます。このため、治療方針を決めるにあたり、病期で大多数を占める進行期(IIIまたはIV期)の場合に重視されるのは腫瘍の量です(図3参照)。腫瘍の量で7.5cm以上のものが1個以上あるとか、3cm以上が3個以上ある、などの高腫瘍量のときはリツキシマブを併用した化学療法を行いますが、低腫瘍量のときは濾胞性リンパ腫と診断がついてもすぐに治療を開始するのではなく、濾胞性リンパ腫による症状や臓器障害をきたすまで無治療で経過観察を行う「ウォッチフル・ウェイティング」がしばしば選択されます。濾胞性リンパ腫は低悪性度のリンパ腫であり進行はゆっくりなため、低腫瘍量であれば症状も出にくく、無治療でも命にかかわる状況ではないからです。

 ただし、ここで注意したいのは、低悪性度のリンパ腫は進行がゆっくりでも治りにくい病気であることです。中悪性度・高悪性度のリンパ腫は週単位、月単位で病状が進む進行性であるため、治療を開始しても早期に亡くなる患者さんが多いですが、治療が奏効した場合では完治する患者さんが多いです。

 低悪性度のリンパ腫では進行がゆっくりであり、治療を行うと病変が消える(完全寛解といいます)こともあるものの、何年か経つと再発します。診断がついて早く治療を開始しても、症状があらわれてから治療を開始しても再発することに変わりはなく、低腫瘍量の場合はどちらにしても生存期間に差はあまりなく、治らないまま経過することが多いのが特徴です。

 治療すれば何かしらの副作用が現れます。そもそもリンパ腫による症状がない場合は通常の生活が送れるのだから、治療の副作用による支障は避けたいという場合などで、腫瘍量が多くないときは、治癒が望めない濾胞性リンパ腫では無治療経過観察が選択されます。実際、濾胞性リンパ腫の診断から5年後の段階で治療を開始しなくてもよい患者さんは数割います。さらに、1割程度の患者さんではそのまま病変が小さくなって、自然寛解していくこともあります。

図3 濾胞性リンパ腫の治療アルゴリズム

初発
限局期進行期
放射線療法進行期と同様の治療方針低腫瘍量高腫瘍量
無治療経過観察リツキシマブ単剤リツキシマブ併用化学療法±リツキシマブ維持療法

再発組織学的形質転換
無治療経過観察局所治療全身治療
放射線療法リツキシマブ単剤放射性同位元素標識抗体療法化学療法±リツキシマブ
造血間細胞移植
・自家移植
・同種移植

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

胃MALTリンパ腫

 MALTリンパ腫(mucosa associated lymphoid issue)は、ゆっくり進むのが特徴です。発症原因として慢性的な炎症反応との関連が指摘されています。

 病変の多くは胃に現れ、胃のMALTリンパ腫の場合、胃に感染したヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)による慢性炎症が病気に関与していると考えられています。このため、胃のMALTリンパ腫ではピロリ菌感染の有無を調べることが重要です。ピロリ菌検査の結果が陽性で、胃に限局したMALTリンパ腫なら、ピロリ菌の除菌だけで7~8割は長期完全寛解するといわれています。

図4 胃MALTリンパ腫の治療アルゴリズム

胃MALTリンパ腫限局期
ヘリコバクター・ピロリ菌陽性ヘリコバクター・ピロリ菌陰性
除菌
成功失敗
再除菌
腫瘍縮小一定期間後腫瘍縮小せず成功失敗
腫瘍縮小一定期間後腫瘍縮小せず
放射線療法
リツキシマブ単剤
リツキシマブ+化学療法
無症状の場合、経過観察も考慮
放射線療法
リツキシマブ単剤
リツキシマブ+化学療法
無症状の場合、経過観察も考慮
放射線療法放射線療法の適応がない場合
・リツキシマブ単剤
リツキシマブ+化学療法
経過観察
増悪
嚢胞性リンパ腫再発時治療に準じる。
再生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫との境界病変がある場合、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に準じた治療を行う

胃MALTリンパ腫進行期
進行期嚢胞性リンパ腫の治療に準じる
経過観察
増悪
嚢胞性リンパ腫再発時治療に準じる。
再生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫との境界病変がある場合、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に準じた治療を行う

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)

 末梢性T細胞リンパ腫(PTCL:peripheral T-cell lymphoma)は、リンパ球のT細胞ががん化する比較的まれな非ホジキンリンパ腫でいくつかの病型からなり、病気が月単位で進行する中悪性度に分類されています。

 基本的な治療は化学療法ですが、B細胞リンパ腫で用いられるリツキシマブはCD20陰性のT細胞リンパ腫では効果が期待できないため、末梢性T細胞リンパ腫ではリツキシマブを除いたCHOP療法が行われます。ただし、CHOP療法の治療成績は必ずしも良好ではなく、二次治療以降では、臨床試験への参加も治療選択肢の1つとなっている状況です。

 そこへ最近、再発または難治性のPTCLについては、フォロデシン(製品名:ムンデシン)、プララトレキサート(製品名:ジフォルタ)、ロミデプシン(製品名:イストダックス)の3つの薬が相次いで承認されました。このうちフォロデシンは酵素の働きを阻害することでがんを死滅させる経口薬です。プララトレキサートはがん細胞が必要とする葉酸を作らせないようにすることでがんを死滅させる葉酸代謝拮抗薬であり、ロミデプシンはやはり酵素の働きを阻害することでがんを死滅させる薬です。

 いずれの薬も奏効割合は3割前後で、効果はそれほど高いわけではありません。しかし、これらの薬で寛解になるとかなり長期にわたり寛解を維持している患者さんが少なからずいます。この点は高齢者に多い病気であるだけに朗報といえるでしょう。

図5 末梢性T細胞リンパ腫の治療アルゴリズム

ALK陽性末梢性T細胞リンパ腫
CHOP療法(→放射線療法)
完全奏功部分奏功以下
無治療経過観察
臨床試験
救援療法
臨床試験
完全奏功部分奏功以下
無治療経過観察
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
同種造血幹細胞移植
臨床試験
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
同種造血幹細胞移植
救援療法 臨床試験
緩和的化学療法、緩和的放射線療法
緩和ケア

非特定末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、ALK陰性末梢性T細胞リンパ腫
CHOP(類似)化学療法(→放射線療法)
臨床試験
完全奏功部分奏功以下
無治療経過観察
臨床試験
救援療法
臨床試験
完全奏功部分奏功以下
無治療経過観察
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
同種造血幹細胞移植
臨床試験
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
同種造血幹細胞移植
救援療法 臨床試験
緩和的化学療法、緩和的放射線療法
緩和ケア

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

プロフィール
塚崎邦弘(つかさき・くにひろ)

1984年 長崎大学医学部卒業。長崎大学医学部原研内科研修医
1998年 米国シーダスサイナイ医療センター研究員
2002年 長崎大学医学部原研内科講師
2004年 長崎大学大学院医歯学総合研究所附属原爆後遺障害医療研究施設分子治療研究分野准教授
2012年 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科長
2018年 埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科准教授