膀胱がんの再発・転移

膀胱がんの経過観察、再発や転移に対する治療法、支持療法緩和ケア)を紹介します。

膀胱がんの経過観察

 膀胱がんの経過観察は、膀胱が温存されている筋層非浸潤性がんと膀胱を全摘した患者さんで異なります。

筋層非浸潤性がんの経過観察

 筋層非浸潤性がんに対する経過観察は、膀胱内再発の早期発見により侵襲度の高い治療を避けることを目的に行われます。

 膀胱癌診療ガイドライン2019年版では、筋層非浸潤性がんに対しBCG膀胱内注入療法を行わない場合の5年膀胱内再発率は31~78%、5年筋層進展率は0.8~45%とされています。BCG膀胱内注入療法を行った場合の5年再発率は25.9~55.4%、5年筋層進展率は2.4~18.9%に低下するとされています。

 経過観察中の検査方法、頻度、期間などはリスク分類に応じて行われますが、世界の主要機関によるガイドラインでも異なります。

筋層非浸潤性がんの経過観察

AUA全患者治療後3~4か月以内に膀胱鏡(1)
低リスク(1)の後、6~9か月後に膀胱鏡。その後、1年後ごと、初回から最低5年間の追跡
中リスク(1)の後、3~6か月ごとに2年間の膀胱鏡。3・4年目は6~12か月ごと。その後は1年ごと
高リスク(1)の後、3~4か月ごとに2年間の膀胱鏡+細胞診。3・4年目は6か月ごとに膀胱鏡+細胞診。その後は1年ごと
上部尿路観察低リスクには不要。中・高リスクには1~2年ごとに画像診断を考慮
EAU全患者治療後3か月後に膀胱鏡(1)
低リスク(1)の後、9か月後に膀胱鏡。その後、1年後ごとの膀胱鏡を5年間。5年再発なければ経過観察中止を考慮
中リスク低リスクと高リスクの中間程度の経過観察
高リスク3か月ごとの膀胱鏡+細胞診を2年間。5年までは半年ごと、その後は1年に1回
上部尿路観察高リスクは1年ごとの画像診断を推奨。低・中リスクは言及せず
NCCN低リスク3か月、12か月に膀胱鏡。5年間1年ごとに膀胱鏡。その後は臨床的判断で、細胞診は不要
中リスク3、6、12か月に膀胱鏡+細胞診。2年目は6か月ごと。3~5年は1年ごとに膀胱鏡+細胞診。その後は臨床的判断で実施
高リスク2年間は3か月ごとに膀胱鏡+細胞診。3~5年目は6か月ごとに膀胱鏡+細胞診。10年目までは1年ごとに膀胱鏡+細胞診。その後は臨床的判断で。尿の分子マーカーを適宜考慮(2年間)
上部尿路観察低・中リスクには臨床的判断で適宜。高リスクは1年後に観察、その後1~2年ごとに10年間観察
日本低リスク3か月後に膀胱鏡。その後、6か月ごとの膀胱鏡+細胞診を2年間。その後は1年ごとの膀胱鏡を5年まで。その後は臨床的判断で実施
中リスク3か月後に膀胱鏡+細胞診。その後、6か月ごとの膀胱鏡+細胞診を3年間。その後は1年ごとの膀胱鏡+細胞診を5年まで。その後は臨床的判断で実施
高リスク2年間は3か月ごとに膀胱鏡+細胞診。3~5年目は6か月ごとに膀胱鏡+細胞診。10年目までは1年ごとに膀胱鏡+細胞診。その後は臨床的判断で実施。尿中分子マーカーは適宜考慮。CT+CTUを3年までは毎年、その後は2年ごとに計10年程度観察
上部尿路観察初診時にCTUなどでスクリーニング。その後、低・中リスクは臨床的判断で適宜CTU.高リスクはCTUを3年までは毎年、その後は2年ごとに計10年程度観察

出典:日本泌尿器学会 膀胱癌診療ガイドライン2019年版 VII膀胱癌の経過観察 表1より作成

膀胱全摘後の経過観察

 膀胱全摘後の経過観察に関して、ステージや再発リスクに合わせた明確なスケジュールや方法は、EAU、AUA、NCCNのガイドラインでは提示されていません。膀胱癌診療ガイドライン2019年版では、「T2以下かつN0」と「T3以上あるいはすべてのT、N1~3」の2つの分類として、膀胱全摘後の経過観察スケジュールが提示されています。

膀胱全摘後の経過観察

T2以下かつN0T3以上またはすべてのT、N1~3
手術後
(年)
血液検査CT+細胞診血液検査+CT+細胞診
1年目3か月ごと3か月
6か月
12か月後
3か月
2・3年目6か月ごと6か月ごと6か月ごと
4年目6か月ごと12か月ごと6か月ごと
5年目6か月ごと12か月ごと6か月ごと
5年目以降がん再発モニタリングは症例ごとに考慮。尿路再発に関しては細胞診でフォロー。腎・上部尿路のフォローは超音波と血液検査で年1回。VB12、代謝異常、腎機能などの血液検査の年1度観察を生涯行うことが望ましい

出典:日本泌尿器学会 膀胱癌診療ガイドライン2019年版 VII膀胱癌の経過観察 表2より作成

膀胱がんの再発・転移に対する治療

 膀胱がんの再発治療は、ステージやリスク分類に応じた初回治療や、再発時期によって選択されます。

ステージ1の再発治療

 ステージ1の低・中リスクで抗がん剤の単回注入や抗がん剤維持膀胱内注入療法後に再発した場合は、中・高リスクと同様に二次治療としてTURBTやBCG膀胱内注入療法が行われます。

 ステージ1の高リスク(上皮内がん以外)でBCG膀胱内注入療法後に再発した場合は、膀胱全摘術が考慮されます。再発までの期間が1年以上の場合は、BCG膀胱内注入療法の再導入が治療選択の1つとして推奨されています。

上皮内がんの再発治療

 上皮内がんで初回BCG膀胱内注入療法後に上皮内がんが残存する場合は、BCG膀胱内注入療法の再導入が推奨されています。ただし、初回治療から6か月時点でも残存する場合は、膀胱全摘術が考慮されます。

 上皮内がんに対し1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法後に高リスクの腫瘍が再発した場合は、膀胱全摘術を考慮することが推奨されています。

ステージ2・3の再発治療

 ステージ2・3の初回治療として膀胱全摘術と術後補助化学療法後に転移再発した場合は、転移のあるステージ4の治療と同様に、全身治療としてのゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC療法)が推奨されています。腎機能に障害があり、それ以外の予後不良因子がない場合は、ゲムシタビン+カルボプラチン併用療法(GCarbo療法)が推奨されています。

 ステージ2・3の初回治療として膀胱温存療法後に膀胱内再発した場合は、ステージ1と同様の治療、もしくは膀胱全摘術が行われます。転移再発の場合は、GC療法、腎機能に障害がある場合は、GCarbo療法が推奨されています。

ステージ4の再発治療

 ステージ4の初回治療(プラチナ製剤併用化学療法)後に再発または進行した場合は、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブによる治療が推奨されています。また、プラチナ製剤併用化学療法による術前・術後の補助化学療法の治療終了後、12か月以内に再発または転移した場合も、ペムブロリズマブによる治療が推奨されています。

膀胱がんの支持療法(緩和ケア)

 膀胱がんでは、がんの進行、治療の副作用などによって、さまざま症状が現れます。こうした症状を軽減するために支持療法(緩和ケア)が行われます。支持療法は、つらい症状や副作用などを軽減させ、生活の質を上げるために行われる治療です。がんが進行してから始める治療ではなく、がん治療中の痛みや症状に対して適宜行われます。

 膀胱がんでは、局所進行による膀胱出血や、骨や脳への転移による症状改善を目的として、緩和的放射線治療が行われることが多くあります。

参考文献
日本泌尿器学会 日本病理学会 日本医学放射線学会 日本臨床腫瘍学会 泌尿器科・病理・放射線科 腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 第2版. 医学図書出版
日本泌尿器学会 膀胱癌診療ガイドライン2019年版.医学図書出版

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