ステージ1/2期非小細胞肺がんに対するデュルバルマブ+SBRTの治験

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治験

PACIFIC-4/RTOG-3515

非切除ステージ1/2リンパ節転移陰性非小細胞肺がん患者さんの治療として、体幹部定位放射線治療SBRT)とデュルバルマブを併用する第3相無作為化プラセボ対照二重盲検国際多施設共同試験

治験概要:

リンパ節転移陰性非小細胞肺がんに対する治験。非切除ステージ1/2の患者さんが対象です。
デュルバルマブ+SBRTとプラセボ+SBRTを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、630人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、二重盲検。
試験群:デュルバルマブ+SBRT
対照群:プラセボ+SBRT
有効性、安全性、薬物動態、薬力学などで評価します。

疾患解説:非小細胞肺がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に肺がんに罹患した人は、約11万5000人です。男性は、50代くらいから増加し始め、70歳前後をピークに、その後は減少します。女性は、80代前半までは同様ですが、80代後半に再び増加します。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化した悪性腫瘍で、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に分けられます。非小細胞肺がんは、さらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つに分類されます。このうち腺がんが肺がん全体の60%を占め、次いで扁平上皮がん、大細胞がんと小細胞肺がんの割合な少なくなります。
特に非小細胞肺がんでは特定の遺伝子変異にあわせた治療薬ができたことで、治療法も異なるため、組織型や遺伝子変異を見極めることが必要になっています。

治験薬:デュルバルマブ

デュルバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • ステージ1/2リンパ節転移陰性で、SBRTによる根治治療が予定されている患者。医学的に手術不能と医師が判断した者、または医学的に手術可能であるが、外科手術を拒否した者、医学的に手術可能な疾患を有し、SBRTを選択した患者も組入れ可
  • 根治治療として標準SBRTを予定している患者
  • WHO全身状態(Performance Status:PS)が0、1または2
  • 12週間以上の生存が期待される患者
  • 体重が30kg超の患者
  • 提出可能な腫瘍試料を提出できる患者
  • 内臓および骨髄の機能が適切である患者
  • 中枢性または末梢性病変がある患者
  • 無作為割付け前10週間以内に病期分類検査を実施した患者
  • 登録1年超前に外科手術のみ、またはSBRTのみにより根治的に治療した異時性のステージ1/2の非小細胞肺がんの既往歴がある患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 小細胞肺がんと非小細胞肺がんの混合型肺がんがある患者
  • 同種臓器移植歴がある患者
  • 別の原発性悪性腫瘍の既往がある患者
  • 活動性の原発性免疫不全症の既往がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称非切除ステージI/II リンパ節転移陰性非小細胞肺癌患者の治療として、体幹部定位放射線治療(SBRT)とデュルバルマブを併用する第III 相無作為化プラセボ対照二重盲検国際多施設共同試験(PACIFIC-4/RTOG-3515
試験の概要非切除臨床ステージI/IIリンパ節転移陰性(T1~T3N0M0)NSCLC患者を対象に、標準SBRTとの併用時におけるデュルバルマブの有効性及び安全性をプラセボとの比較により評価する第III相無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同試験
疾患名非小細胞肺癌
試験薬剤名標準SBRT+デュルバルマブ
用法・用量3、4、5又は8分割でSBRTを実施する
デュルバルマブ1500mgを点滴静注により、最長24カ月間、4週間毎に投与する
対照薬剤名標準SBRT+プラセボ
用法・用量3、4、5又は8分割でSBRTを実施する
適量のプラセボを点滴静注により、最長24カ月間、4週間毎に投与する
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、並行群間、二重盲検
目標症例数630
適格基準
  • 年齢が18歳以上である患者
  • 臨床ステージI/IIリンパ節転移陰性(T1~T3N0M0)疾患を有し、SBRTによる根治治療が予定されている、組織学的又は細胞学的にステージI~IINSCLCが確認された患者。医学的に手術不能と医師が判断した者、又は医学的に手術可能であるが、外科手術を拒否した者、医学的に手術可能な疾患を有し、SBRTを選択した患者も組入れ可
  • 根治治療として標準SBRTを予定している患者
  • 世界保健機関(WHO)/ECOG PSが0、1又は2である患者
  • 12週間以上の生存が期待される患者
  • 体重が30kg超の患者
  • 提出可能な腫瘍試料を提出できる患者
  • 内臓及び骨髄の機能が適切である患者
  • 中枢性又は末梢性病変を有する患者
  • 無作為割付け前10週間以内に病期分類検査を実施した患者
  • 登録1年超前に外科手術のみ、又はSBRTのみにより根治的に治療した異時性のステージI/II(T1~T3N0M0)NSCLCの既往歴を有する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 小細胞肺癌とNSCLCの混合型肺癌を有する患者
  • 同種臓器移植歴がある患者
  • 別の原発性悪性腫瘍の既往がある患者
  • 活動性の原発性免疫不全症の既往がある患者
主要な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬力学/pharmacodynamics
主要な評価方法
副次的な評価項目有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
副次的な評価方法
予定試験期間2019年2月1日~2025年10月31日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより