大腸がんの発症と進展の新メカニズムを解明 新たな治療法の開発に期待
2018/04/25
文:がん+編集部
大腸がんの発症と進展に関わる新しいメカニズムが解明されました。大腸がんの発症や進展を抑制するナルディライジンというたんぱく質を標的とした新たな治療法の開発につながる可能性が期待されます。大腸がんのほかにも、胃がんや肝臓がんなどこのたんぱく質が重要な役割を果たすこともわかっています。
ナルディライジンを標的とする新たな治療法の開発に期待
京都大学は4月20日に、ナルディライジンというたんぱく質が、大腸がんの発症と進展に関わるメカニズムを解明したと発表しました。同大学の医学研究科の妹尾浩教授と滋賀医科大学の西英一郎教授らの研究グループによるものです。
本研究は、大腸がんのモデルマウスを使った動物実験によるものです。腸管の上皮にあるナルディライジンを抑制すると大腸がんの進展が抑制され、逆に増やすと大腸がんの進展が促進されることが示されたそうです。このナルディライジンは、がんの抑制因子として知られているP53を調節する因子であることも明らかになりました。
P53は、DNAの損傷によりがん化してしまった細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導する機能があることが知られています。このP53を調節するナルディライジンを抑制することで、P53の安定した発現、上昇することでがん化した細胞のアポトーシスが誘導され、大腸がんの発症や進展が抑制されることが示唆されました。
大腸がんの死亡者数は、30年間で3倍に増加しており、女性の死亡率では1位となっています。今回の大腸がんの発症や進展のメカニズムが解明されたことで、ナルディライジンを標的とする新たな治療法の開発が期待されます。同時に、同じメカニズムと考えられる胃がんや肝臓がんなどほかのがん種の治療法としての可能性も期待が持てます。