子宮頸がんの前がん病変「子宮頸部異形成」 治療薬開発に期待

2018/05/23

文:がん+編集部

 「FIT-039」という薬が、子宮頸がんの前がん病変の子宮頸部異形成(CIN)に対して効果があることがマウスを用いた実験で明らかになりました。2018年度中に医師主導臨床試験が実施される予定です。

医師主導臨床試験、2018年度に実施予定

GGN病変
画像はリリースより

 京都大学は5月18日、研究グループが開発した抗ウイルス薬「FIT-039」が抗ヒトパピローマウイルス(HPV)作用を示し、子宮頸がんの前がん病変である子宮頸部異形成(CIN)の治療薬となりうることを明らかにしたと発表しました。

 子宮頸がんは、主にHPVの感染によって引き起こされるウイルス性のがんです。HPVは性交渉により感染し、大半は自然に消失しますが、子宮頸部の上皮組織などで感染し続けることがあります。そして。数年の期間をかけてCINというがんに進行する確率が高い状態となり、一部の症例では子宮頸がんになります。HPV感染を予防するワクチン(子宮頸がんワクチン)の導入が世界で進みつつありますが、日本での接種率は0.5%を下回っています。そのため、CINや子宮頸がんになる患者さんの数は今後も増え続けると予想されています。

 また、一度HPVに感染すると、HPVワクチンによる予防効果は得られず、ウイルスに対する効果もありません。CINの治療では、子宮頸部を部分切除する円錐切除という手術を行うことが一般的ですが、子宮頸部の機能が損なわれることで、早産や流産といったリスクが生じることもあります。そのため、患者さんの体を傷つけない新しいCIN治療法の開発が望まれています。

 今回、研究グループは、子宮頸がんマウスを用いた実験で、サイクリン依存性キナーゼ9(CDK9)阻害剤FIT-039が、HPV感染腫瘍の増殖を抑制する効果を確認したそうです。FIT039投与による有害事象は認められなかったとしています。

 FIT-039については、HPV感染によるウイルス性いぼの再発予防効果を検証する貼付薬の医師主導第1・2a相臨床試験が京都大学医学部附属病院皮膚科で進行中です。また、子宮頸がんの前がん病変であるCINに対する医師主導臨床試験についても同病院産婦人科で2018年度実施される予定だとしています。

 「本研究では抗ウイルス薬FIT-039がHPVを抑制し、手術に代わる画期的な治療法となることが期待されます」と研究者からコメントが発表されています。