日本初、遺伝性乳がんの治療薬が承認

2018/07/10

文:がん+編集部

 リムパーザが、「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」で適応追加承認されました。日本で初めての遺伝性乳がんに対する治療薬となります。

がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの適応

 アストラゼネカ株式会社は7月2日、オラパリブ(製品名:リムパーザ)について、「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」で適応追加の承認を取得したことを発表しました。遺伝性乳がんの治療薬としては、日本で初めての承認になります。

 BRCA遺伝子は、損傷したDNAの修復に関わるタンパク質を生成するヒト遺伝子のことで、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たします。BRCA遺伝子に変異があると、損傷されたDNAが適切に修復されない可能性があり、がんを発症するリスクがBRCA遺伝子に変異がない人と比べて高くなります。

 オラパリブは、BRCA遺伝子変異などのDNA損傷応答経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する治療薬です。オラパリブの処方は、コンパニオン診断プログラム「BRACAnalysis診断システム」による、BRCA遺伝子変異の判定結果に基づいて決定されます。

 第3相臨床試験OlympiAD試験の結果、化学療法群との比較で主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)※1を有意に延長し、病勢進行または死亡リスクの42%低減が示しました。オラパリブを投与した患者さんでは86.3%に副作用が認められ、悪心が50.2%、貧血が32.2%、疲労が22.4%だったとしています。

※1 奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。