ALK陽性非小細胞肺がんに対するブリグチニブの治験 無増悪生存期間を改善

2018/10/05

文:がん+編集部

 ALK陽性の非小細胞肺がんに対する1次治療としてALK阻害剤ブリグチニブが、無増悪生存期間を改善とする治験の中間報告が発表されました。特に脳転移のある患者さんで顕著な結果だったそうです。

中間報告、病状進行または死亡リスクが50%以上低下

  武田薬品工業株式会社は9月26日、ブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)クリゾチニブ(製品名:ザーコリ)を比較した第3相試験ALTA-1Lの中間解析結果を発表しました。

  ALTA-1L試験は、ALK陽性の非小細胞肺がんを対象に1次治療として、ブリグチニブとクリゾチニブを比較評価した試験で、成人患者275人が登録されました。ブリグチニブ180mgを1日1回投与するグループとクリゾチニブ250mgを2日2回投与するグルプで比較されています。その結果、無増悪生存期間※1が改善され、病状進行または死亡リスクが50%以上低下し、特に脳転移のある患者さんでの効果が顕著だったそうです。

 転移性非小細胞肺がんの約3~5%がALK陽性とされています。 ALK融合遺伝子は、ALK遺伝子とほかの遺伝子が融合してできる特殊な遺伝子で、ALK融合たんぱくをつくります。このたんぱく質の作用により、がん細胞を刺激することでがんの増殖、生存、血管新生が起こります。ブリグチニブは、ALK融合遺伝子を選択的に阻害する分子標的薬です。

 ALTA-1L試験の治験責任者であるRoss Camidge医師は「ALK陽性非小細胞肺がんに対する治療はこの10年間で大きく変化しています。ALTA-1L試験では、ブリグチニブがフロントライン治療において重要な役割を果たす可能性が示されました。ALTA-1L試験のデザインは実臨床へのデータの適用可能性という点も含めたユニークな特徴を持っています。この試験では化学療法による治療歴のある患者さんであっても組み入れ可能とし、中央検査機関による判定を義務付けるのではなく、各施設の標準的ALK検査に基づいて患者さんを選択しています。日々進化する状況の中でブリグチニブがどのような役割を担うのか、今後の情報によってさらに理解が深まると思います。続報が期待されます」とコメントしています。

※1 奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。