ダロルタミドが非転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する治験で無転移生存期間を延長

2018/11/12

文:がん+編集部

 転移のない去勢抵抗性前立腺がんを対象としたホルモン療法治験の結果が発表されました。治験薬であるダロルタミドは、転移や死亡までのすべての生存期間である無転移生存期間を延長したそうです。

経口アンドロゲン受容体阻害薬ダロルタミド、管理しやすい治療薬として期待

 ドイツ・バイエル社は10月24日、第3相ARAMIS試験の結果を発表しました。

 ARAMIS試験は、転移のない去勢抵抗性前立腺がん患者さんを対象とした第3相試験です。標準治療としてアンドロゲン遮断療法を受けている、転移リスクが高い患者さんを対象に、経口薬ダロルタミドとプラセボを比較して安全性と有効性を評価しました。

 主要評価項目である、転移の確認または死亡までの期間である無転移生存期間の延長が達成されたそうです。また、安全性に関しては、これまで公表されているダロルタミドのデータと一致していました。

 ダロルタミドは、非ステロイド性の経口アンドロゲン受容体阻害薬です。受容体と高い神話性で結合し、強力な阻害作用を発揮する独自の化学構造をもっています。

 バイエル社のシニア・バイス・プレジデントで医療用医薬品部門のオンコロジー開発責任者のスコット・フィールズ氏は「非転移性去勢抵抗性前立腺がん治療における近年の進歩にもかかわらず、転移までの期間を遅らせるだけでなく、管理しやすい安全性プロファイルを有する新たな治療選択肢に対する高いアンメットニーズが依然として存在します。ARAMIS試験の結果はバイエルにとって励みとなるものであり、我々は今後開催される学会で詳細なデータを発表することを楽しみにしています」とコメントしています。

 去勢抵抗性前立腺がんは、体内のテストステロン量が極めて低いレベルにまで減少しているにもかかわらず、がんが進行し続ける状態の前立腺がんです。去勢抵抗性前立腺がんの治療は急速に進歩していますが、アンドロゲン遮断療法中に前立腺特異抗原(PSA)値上昇を認めるが転移が確認できない去勢抵抗性前立腺がんに対しては、有効な治療選択肢はありませんでした。こうした患者さんに対する新たな治療薬として、ダロルタミドは期待されます。

ARAMIS試験

対象:去勢抵抗性前立腺がん
条件:転移のない転移リスクの高い患者
登録数:1508(2:1で割付)
被験薬:ダロルタミド
対照薬:プラセボ
主要評価項目:無転移生存期間
副次的評価項目:全生存期間、症候性骨関連事象の初回発現までの期間、細胞障害性化学療法の初回実施までの期間、疼痛増悪までの期間、およびダロルタミドの安全性および忍容性の評価