進行・転移性乳がんの新規分子標的薬の治験を国がん主導で開始

2018/11/19

文:がん+編集部

 進行・転移性乳がんを対象とした医師主導試験が国立がん研究センター中央病院の主導で開始されました。パルボシクリブ(製品名:イブランス)というCDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬治験です。

CDK4/6を阻害する新薬パルボシクリブと内分泌療法を併用

  国立がん研究センターは11月12日、進行または転移性乳がんを対象とした日本主導のアジア国際共同医師主導治験を開始したと発表しました。このNCCH1607/WI217662/PATHWAY試験は、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の進行または転移性乳がんの患者さんが対象です。

 NCCH1607/ WI217662/ PATHWAY試験は、CDK4/6を阻害する新規の経口薬のパルボシクリブ+タモキシフェン(±ゴセレリン)併用投与とプラセボ+タモキシフェン(±ゴセレリン)併用投与を比較する、アジア共同、国際、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較第3相試験です。2年間で180人の患者さんを登録する予定です。同試験は、パルボシクリブと新たな内分泌療法の併用投与を支持するエビデンスの構築を目的としており、薬事承認を目指します。同センター中央病院が主導して、日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設で行われます。

 パルボシクリブは、CDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬です。CDK4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こします。同剤はCDK4および6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させることにより、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。同剤は、米国をはじめ世界85カ国以上で承認されており、日本でも2017年9月に承認されています。しかし、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されているため、タモキシフェンとの併用の有効性や安全性は確立されていません。

NCCH1607/WI217662/PATHWAY試験

対象:進行または転移性の乳がん
条件:ホルモン受容体陽性/HER2陰性の局所進行または転移性乳癌を有する閉経状態を問わない女性
登録予定数:180人
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較
試験群:パルボシクリブ+タモキシフェン(±ゴセレリン)
対照群:プラセボ+タモキシフェン(±ゴセレリン)
主要評価項目:無増悪生存期間※1
副次的評価項目:全生存期間※2、1年生存割合、2年生存割合および3年生存割合、全奏効、奏効期間、臨床的有用性、薬物動態、安全性、患者報告アウトカム

※1:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。