肺がん細胞が分子標的薬から生き残るメカニズム解明

文:がん+編集部

 EGFR遺伝子変異陽性の肺がんで、分子標的薬にさらされたがん細胞の一部が生き残るメカニズムが解明されました。まだ、動物実験の段階ですが、今後肺がんを根治させる治療につながることが期待されます。

分子標的薬とAXL阻害薬の併用で根治や再発期間の顕著な延長が期待できる可能性

 金沢大学は1月16日、分子標的薬にさらされた肺がん細胞がAXL(アクセル)というたんぱく質を使って生き残るメカニズムを解明したと発表しました。同大学がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授と、京都府立医科大学の山田忠明講師、長崎大学病院の谷口和助助教らの共同研究グループによるものです。

 遺伝子変異を対象とした分子標的薬による治療は、高い確率で効果が期待できますが、耐性ができて再発するという問題もあります。そのため、薬剤耐性の原因を見つけ、耐性がおきても効果が期待できる分子標的薬を開発するという、いたちごっこの状態が続いています。

 今回の研究では、EGFR遺伝子変異陽性の肺がんに対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブ(製品名:タグリッソ)の投与により、一部のがん細胞が生き残るメカニズムを解明しました。EGFR遺伝子変異のあるがん細胞は、変異したEGFRたんぱく質からの「生存シグナル」によって増殖しますが、そのシグナルが強すぎてもがん細胞は死んでしまいます。そのため、普段は生存シグナルを補うAXLというたんぱく質にブレーキがかっています。一方、EGFR-TKIを使用することで生存シグナルが抑制されると、そのブレーキがはずれ、がん細胞に対して生存シグナルを補うようにAXLが働き、一部のがん細胞が抵抗性細胞として生き残るようになることが明らかになりました。

 動物実験では、EGFR-TKIとAXL阻害薬を併用することで、がん細胞をほぼ死滅させ、再発を顕著に遅らせることも確認されたそうです。

 今回の研究により、AXLが高発現している患者さんでは、分子標的薬とAXL阻害薬を併用することで、根治あるいは再発までの期間を延ばせる可能性があることが確認されました。研究グループは今後、効果や副作用を考慮してAXL阻害薬を選び、分子標的薬と併用する臨床試験も行いたいとしています。