切除可能な膵臓がん、術前化学療法で治療成績が向上

2019/02/01

文:がん+編集部

 手術可能な膵臓がんに対する、術前と術後の化学療法を比較した治験の結果が発表されました。術後に比べて術前に化学療法を行った方が、治療成績がよったそうです。

切除可能でもまず化学療法を行うことで死亡リスクを28%減少

  東北大学は1月22日、切除可能な膵臓がんに対して、ゲムシタビン(製品名:ジェムザール)テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(製品名:TS-1)の併用療法(GS療法)による術前化学療法の有効性を評価するランダム化比較試験 Prep-02/JSAP-05試験の結果を発表しました。この研究成果は、東北大学病院総合外科科長の海野倫明教授が代表を務める膵癌術前治療研究会によるものです。

 同試験では、手術後に化学療法を受けた患者さんの平均生存期間が26.65か月だったのに対し、手術前に化学療法を受けた患者さんの平均生存期間は36.72か月と、生存期間を有意に延長することが明らかになりました。また、2年生存率は、術後化学療法で52.5%、術前化学療法で63.7%と、術前化学療法を行うことで死亡リスクを28%減少させたそうです。術前化学療法による有害事象は、白血球減少、好中球減少などで重篤な有害事象は認められませんでした。この比較試験の結果は、切除可能な膵臓がんでもすぐに切除を行わず、化学療法を行った後に切除手術を行うことがよりよい治療法だということを、世界で初めて示したものです。

 東北大学の発表では、「今回の成果により、膵がんの診療ガイドラインが改定され、切除可能膵がんの標準治療に術前化学療法が取り入れられるとともに、国内の医療機関で広く実施されることにより、膵がんの治療成績の向上が期待されます」と述べられ、今後の標準治療となり得る可能性が示唆されています。

Prep-02/JSAP-05試験

対象:切除可能な膵臓がん
条件:遠隔転移がない浸潤性膵管がんで根治手術に耐えられる患者
フェーズ:第2/3相臨床試験
試験デザイン:非盲検、ランダム化、並行群間比較
登録数:360人
試験群:GS療法→手術→S-1による補助療法
対照群:手術後→S-1による補助療法
主要評価項目:切除率(第2相)、生存率(第3相)
副次的評価項目:有害事象(第2相)、有害事象、切除率、無再発期間ほか(第3相)