ALK陽性肺がんの分子標的薬耐性化メカニズムを解明

文:がん+編集部

 ALK癒合遺伝子陽性の肺がんに対する、分子標的薬の耐性化メカニズムが解明されました。分子標的薬の効果がなくなった患者さんに対する、治療法の開発が期待されます。

HDAC阻害薬との逐次治療で次世代分子標的薬の耐性を克服できる可能性も

 金沢大学は2月12日、分子標的薬にさらされたALK融合遺伝子陽性肺がんが、腫瘍細胞の遺伝子変異と上皮間葉転換という2つのメカニズムで薬剤耐性を獲得していることを解明したと発表しました。この研究成果は、同大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授と福田康二助教、同大附属病院がんセンター/ナノ生命科学研究所の竹内伸司講師らの研究グループによるものです。

 がんの薬物治療で使われる分子標的薬は、がんに発現している特有の遺伝子やタンパク質を標的とした薬剤です。治療当初は効果があっても、薬剤耐性が起こり、効果がなくなることが多く、課題とされていました。これまでに、分子標的薬の薬剤耐性は、がん細胞内の分子に遺伝子変異が起こり、結合部位の構造が変化することがわかっていました。また、上皮間葉転換という細胞の性質の変化の関与も疑われていました。

 今回の研究では、分子標的薬で耐性化したALK融合遺伝子陽性の肺がん患者さんのがん細胞を解析。がん細胞の組織内で遺伝子変異が起こっている領域と上皮間葉転換が起こっている領域が独立して存在していることを発見したそうです。このことから研究グループは、この2つが分子標的薬の耐性かの原因となっていると考えました。

 遺伝子変異に対する治療薬は、次世代分子標的薬として使用されていますが、上皮間葉転換による耐性に対する治療法はまだありません。そこで研究グループは、どうして上皮間葉転換がおこるのかを調べたところ、遺伝子発現を制御するマイクロRNAのうちmiR-200cの発現をがん細胞が低下させ、上皮系から間葉系へ形質を変化させていることを突き止めました。さらに研究グループは、間葉系に変化したがん細胞を上皮系に戻すことで、薬剤耐性を克服できるのではないかと考え、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬のキジノスタットで、間葉系から上皮系へと戻し、薬剤耐性を克服することに成功しました。さらに、動物実験では、キジノスタットの治療後に分子標的薬を投与したところ薬剤耐性を顕著に抑えられることを発見しました。

 今回、次世代分子標的薬とHDAC阻害薬を逐次的に使用する治療法で、ALK融合遺伝子陽性肺がんに対する分子標的薬の薬剤耐性が克服できる可能性が明らかになりました。研究グループは「今後は、効果や副作用の面から最適なHDAC阻害薬を選び出し、次世代分子標的薬と併用する臨床試験を行いたいと考えています」としています。