肺がんマルチ遺伝子診断法が承認
2019/03/07
文:がん+編集部
肺がんのマルチ遺伝子診断法が承認されました。進行肺がんから採取した微量検体を使って複数の遺伝子を同時かつ迅速に診断することが可能になりました。
EGFR、ALK、ROS1、BRAFを同時診断、8種類の分子標的薬の治療適応判定が可能に
国立がん研究センターは2月27日、「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」が、肺がんから採取した検体を用いて複数の遺伝子異常を同時に調べられる診断法として、追加承認されたことを発表しました。同診断システムはこれまでBRAF遺伝子変異の診断法としてのみの承認でした。
分子標的薬が適応となる肺がんでは、遺伝子変異を特定することが重要です。これまでは、EGFR、ALK、ROS1、BRAFなどの遺伝子変異を1つずつ検査していました。そのため、遺伝子変異を調べるために、多くの時間と検体量が必要となり、遺伝子変異を確認するまえに薬物療法を開始しなければならないことも多くありました。
今回の追加承認で、進行肺がんから採取した微量検体でも複数の遺伝子を同時に、かつ迅速に診断することができるようになります。その結果、肺がん患者さんに有効な治療薬をより早く、確実に届けることが可能となり、肺がんにおける最適な医療(プレシジョンメディシン)がさらに推進されていくと考えられます。
今回の承認の基となったのは、国立がん研究センター東病院の呼吸器内科長後藤功一先生が研究代表者となって、全国約260施設で行われている LC-SCRUM-Japanという研究のデータです。6年間で7000例を超える肺がん患者さんの遺伝子解析が実施されました。この大規模な遺伝子解析データを基に、次世代シーケンシング技術で、遺伝子診断システム(「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」)の臨床性能評価を行い、複数の肺がん標的遺伝子について、極めて良好な診断性能が示されました。これによりBRAF遺伝子に加えて、EGFR、ALK、ROS1という4つの遺伝子の診断が可能となり、8種類の分子標的薬の治療適応を同時に判定することができるようになりました。
国立がん研究センターは今後の展望を次のように発表しています。「今回の本診断システムの追加承認によって、これまで多くの検査時間と検体量を使いながら、ひとつずつ診断してきた複数の標的遺伝子を、一度の解析で同時に診断することが可能になり、より迅速に、かつ多くの患者さんに有効な治療薬(分子標的治療薬)を届けることが出来るようになります。今後も、LC-SCRUM-Japanは、全国の参加施設や肺がん患者さんの協力のもと、大規模な遺伝子解析データや臨床データの蓄積によって、新しい遺伝子診断法や新しい治療薬の開発を推進し、肺がんの最適医療(プレシジョンメディシン)の確立に挑戦していきます」