がんの早期発見・早期治療のために企業ができることとは?

文:がん+編集部

「がん検診と早期治療の重要性」e-ラーニングで社員が学ぶ取り組みも

 企業との連携により、職場でのがん検診受診率向上などを目指す厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」は3月5日、平成30年度統括セミナーを開催しました。同セミナーでは、平成30年度がん対策推進企業の表彰や取り組みの紹介が行われ、東京大学医学部附属病院放射線治療部門長でがん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長の中川恵一先生らが講演しました。

 がん対策推進企業アクションでは、推進パートナー企業を対象に、がん対策に積極的に取り組んでいる企業・団体を表彰しています。平成30年度のがん対策推進企業として選出されたのは、厚生労働大臣賞にヤフー株式会社、がん対策推進パートナー賞「検診部門」に研冷工業株式会社、がん対策推進パートナー賞「がん治療と仕事の両立部門」にローソン株式会社、がん対策推進パートナー賞「がんの情報提供部門」に株式会社ポーラです。同セミナーでは、これらの受賞企業が表彰されました。

 厚生労働大臣賞を受賞したヤフーは、がん検診の受診率向上のために「がん検診と早期治療の重要性」などに関するe-ラーニングを全社員対象に実施し、社員へのがん教育に力を入れています。また、がんの早期発見のために、定期健康診断にがん検診の項目を取り入れ、さらに勤務時間内に検診を受けられる体制を整えました。そして、もしがんになった場合に活用して欲しいのが「健康相談窓口」。がん治療と仕事の両立について、産業医や看護師にすぐに相談することができる環境が整っているそうです。

仕事や生活への影響を最小限に留めるために「早期発見・早期治療」を

中川先生
東京大学医学部附属病院放射線治療部門長
中川恵一先生

 「多くの人は、まさか自分が “がん”になるとは思っていません」と語るのは、2018年12月に膀胱がんが発覚した中川先生。中川先生は、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長として、さまざまな企業での出張講座などを通じて大人のがん教育を行っています。日々、がん対策の大切さを伝えている中川先生でさえ、自分ががんになるとは思わなかったといいます。中川先生は「多くの人が、自分が重い病になるとは想定せずに生活しているからこそ、がんになる前に、がんのことを知ることが大切なのです」とし、改めてがん教育の大切さを述べました。

 そして、がん教育とともにがんの早期発見・早期治療の大切さも解説。中川先生の場合は、早期に膀胱がんを見つけることができたため早期に治療ができ、仕事や生活への影響を最小限に留めることができたといいます。がんの発見が遅くなれば、その分がんは進行し、入院・治療の期間が長くなるなどして、仕事への影響も大きくなります。また、例えば膀胱がんの場合、進行度によっては膀胱の全摘が必要となり、生活の質(QOL)への影響も大きくなるでしょう。仕事や生活への影響を抑える意味でも、早期発見・早期治療は大切です。中川先生は「自分ががんになることを想定していない人に、どのようにがんへの対策を行動に移してもらうよう促したらよいか、企業側は改めて考えて欲しい」としました。

早期発見・治療ができて、がん治療と仕事の両立が可能に

昆さん
がん対策推進企業アクション認定講師
昆広海さん

 最後に、がん対策推進企業アクション認定講師でがん経験者の昆広海さんが自身の体験談を紹介しました。乳がんのセルフチェックをしていた際にしこりを発見したことから受診に至り、ステージIIの乳がんと診断を受けた昆さん。治療と仕事の両立、休職を経験されたといいます。

 昆さんは、治療をしながら仕事している時期、体調が優れないときに、柔軟な働き方を選べたことで助かった経験を話しました。例えば、抗がん剤の副作用で脱毛の症状がひどくなってしまった時は、時短かつ在宅で仕事をさせてもらったこともあったそう。抗がん剤の副作用が辛かったこともあり、抗がん剤投与直後は仕事を休んだこともあったといいます。今回表彰された企業の中でも、時短勤務や在宅ワークを認めるなど、治療にあわせた働き方制度を取り入れている企業がありました。昆さんは、治療と仕事の両立のために「柔軟に働ける制度を取り入れる企業が増えて欲しい」とコメントしました。また、休職中は「無事に復職できるかな…」という不安に苛まれることもあったそう。「復職後でもできる仕事がある」という上司の言葉が励みになったとし、職場復帰できる環境があることに感謝を述べました。

 昆さんは「がん治療と仕事の両立は可能です。でも、それには早期発見が大前提です。早期発見・治療ができて、結果として早く元の生活に戻ることができるのです」と述べ、改めて早期発見のためのがん検診の大切さに触れました。がん患者さんの3分の1が働く世代といわれる現代。企業が社員に対してがん検診の受診を促し、がんになった場合でも働きやすい環境を整える必要があるといえそうです。