免疫チェックポイント阻害薬の新たな治療耐性メカニズムを発見

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント阻害薬の新たな治療耐性メカニズムが発見されました。抗PD-L1抗体薬の耐性克服の可能性につながる発見です。

血液や体液検査で、抗PD-L1抗体の治療効果予測も可能に

  日本医療研究開発機構は3月14日に、免疫チェックポイント阻害薬の新たな治療耐性メカニズムを発見したと発表しました。がん研究会がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長と東京大学大学院新領域創成科学研究科大学院博士課程の龔博氏らの研究グループによるものです。

 2018年、免疫チェックポイント分子を介してがん細胞が免疫システムから逃れるメカニズムの発見で、本庶佑博士とジェームズ・アリソン博士がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この発見により開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。免疫チェックポイント阻害薬による治療では、2~3年を超える長期奏効例が一部の患者さんで観察される一方で、治療耐性となる症例も多く観察され始めています。

 免疫チェックポイント阻害薬の薬剤耐性に関しては、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)をはじめとした抗PD-1抗体を対象とした研究が多く、がんを攻撃する目印となる抗原が消失しているなどのメカニズムが明らかになってきています。しかし、 PD-1のリガンドであるPD-L1に対する抗体薬の薬剤耐性のメカニズムは、わかっていませんでした。

 今回研究グループは、抗PD-L1抗体薬治療に対して獲得耐性となった17症例について網羅的な遺伝子解析を行い、4症例(約20%)で治療標的にあたるPD-L1タンパク質で分泌型PD-L1バリアントが出現することを発見しました。PD-L1はがん細胞の表面に発現しています。しかし、分泌型PD-L1バリアントは、PD-L1と似たような構造をもちながら、がん細胞から離れて分泌されます。そのため、抗PD-L1抗体ががん細胞の表面に発現しているPD-L1と結合する前に、抗PD-L1抗体と結合してしまうのです。その結果、がん細胞の表面に発現しているPD-L1とT細胞に発現しているPD-1が結合し、T細胞は攻撃できなくなってしまいます。こうしたメカニズムがわかった研究グループは、分泌型PD-L1バリアントによる耐性は、PD-1に対する抗体により克服できる可能性があることを、培養細胞、ヒトiPS由来T細胞、および動物実験により示すことに成功したそうです。

 さらに研究グループは、分泌型PD-L1バリアントを持つがん患者さんの血漿中と胸水中には、高い濃度の可溶型PD-L1が検出されていること、分泌型PD-L1バリアントを発現する細胞ががん細胞中の1%程度でも存在するだけで、薬剤耐性を誘導する可能性を明らかにしました。

 本研究から、今後血液などの体液を用いた分泌型PD-L1のモニタリングが治療効果予測に有益な情報を与える可能性があります。また、分泌型PD-L1バリアントによる治療耐性は抗PD-1抗体薬により克服できる可能性が明らかとなり、分子メカニズムに合わせた免疫チェックポイント阻害薬の治療に役立つことが期待されます。