国内初、CAR-T細胞療法キムリア承認

2019/04/01

文:がん+編集部

 国内初、 CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(製品名:キムリア)の製造販売が承認されました。

再発または難治性のCD19陽性B-ALLとDLBCLの治療薬として

 ノバルティスは3月26日に、CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセルの製造販売承認を取得したことを発表しました。再発または難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発または難治性のCD19 陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する効能・効果です。今回の承認は、 再発または難治性のCD19陽性のB-ALLとDLBCLを対象とした、 持続的な奏効と一貫した安全性プロファイルを示した初めてのCAR-T細胞療法の国際多施設共同第2相試験ELIANA試験、 JULIET試験の結果に基づいています。

 ELIANA試験は、再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病小児を対象とした初のCAR-T細胞医療の国際共同試験です。チサゲンレクロイセルを投与して、全寛解率が評価されました。主解析時点までに92名が登録され、75名が投与を受けた結果、主要評価項目とされた全寛解率は、中間解析時点で82.0%(41/50名)でした。また主解析時点で、寛解を達成した患者さんの解持続期間の中央値は未到達ですが、持続した寛解が得られています。最も高頻度に認められた副作用は サイトカイン放出症候群(77%、58/75名)で、そのうち重篤だったのが63%(47/75名)でしたが、死亡に至った例はありませんでした。高頻度に認められたその他の副作用は、低γグロブリン血症(39%)、発熱性好中球減少症(27%)、発熱、低血圧(各25%)、頻脈(24%)、脳症(21%)、食欲減退(20%)などでした。

  JULIET試験は、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者さんを対象とした初めての多施設国際共同試験です。チサゲンレクロイセルを投与して、全奏功率※1が評価されました。追加解析時点までに165名が登録され、111名が投与を受けた結果、主要評価項目の奏効率は、中間解析時点で58.8%(30/51名)でした。また、追加解析時点では、奏効が得られた患者さんの奏効持続期間の中央値は未到達ながら、持続した奏効が得られています。最も高頻度に認められた副作用は、サイトカイン放出症候群(58%、57/99名)で、そのうち重篤だったのは29%(29/99名)でしたが、死亡に至った例はありませんでした。高頻度に認められたその他の副作用は、発熱(25%)、低血圧(21%)などでした。

 CAR-T療法は、がん細胞の表面に発現しているCD19抗原を認識するように、患者さんから採取したT細胞の遺伝子を改変し、体外で培養したのちに再び患者さんに戻すことで、がん細胞を狙って攻撃する治療法です。

 同社のオンコロジージャパンのプレジデントであるブライアン・グラッツデンは「再発又は難治性のB-ALLとDLBCLの患者さんは、治療選択肢が非常に限られており予後も不良です。今回の承認は、新しい治療選択肢を必要としている患者さんの転帰を改善する可能性があり、治療を大きく前進させるものです。ノバルティスでは、この治療法を、安全かつ適切に、日本の患者さんに届けられるよう、医療機関へのトレーニングの実施や製造インフラの構築などに、引き続き、全力で取り組んでまいります」とコメントしています。

ELIANA試験

対象:再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病
条件:3~30歳の患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:単一グループ、オープンラベル
試験群:チサゲンレクロイセル単回投与
主要評価項目:全寛解率
副次的評価項目:無再発生存期間、全生存期間※2ほか

JULIET試験

対象:再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫
条件:リツキシマブおよびアントラサイクリンを含む2剤以上の化学療法後、自己造血幹細胞移植に失敗もしくは同意しなかった再発・難治性の18歳以上の患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:単一グループ、オープンラベル
試験群:チサゲンレクロイセ
主要評価項目:全奏効率
副次的評価項目:無増悪生存期間、全生存期間ほか

※1:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。
※2:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。