「食道がんサバイバーズシェアリングス」食道がんに特化した患者支援団体として

髙木 健二郎さん
食道がんサバイバーズシェアリングス代表 髙木 健二郎さん

2024.2 取材・文 がんプラス編集部

 食道がんサバイバーズシェアリングスは、食道がんに特化した患者支援団体として2020年に設立されました。食道がんの治療や後遺症に関わる情報を発信する支援活動などを行っています。代表の髙木健二郎さんも食道がんサバイバーの1人です。設立の経緯から現在の活動までのお話をうかがいました。

食道がんに特化した全国規模の患者会がなかった

 私は2012年、48歳の時に胸部食道がん(ステージ3)が見つかり、抗がん剤治療後に食道亜全摘胃管再建術を受けました。7年後の2019年、再発について少し勉強しようと思い、キャンサーネットジャパンさんのセミナーに参加。そこで初めて他のがん患者さんと交流を持ち、「自分のがんの治療経験を誰かに話す」という経験をしました。それまでは主治医とのコミュニケーションだけで、先生の話さえ聞いていればいいんだと思っていたので、とてもインパクトがありました。これをきっかけに、何かしたいと考えるようになったものの、どうしていいかわからない…。がん関連のイベント運営ボランティアとして関わったり、食道がん専門の先生の集まりに参加したりして、いろいろ考えてみたのですが、目標が定まらない日々が続きました。

 2020年初夏、別のがんの疑いで検査入院をしました。がんは見つからなかったのですが、検査結果が出るまでの間に、「あの時やっておけばよかったと思うことがないようにしよう」と考えました。そこで、食道がん専門の先生が「全国規模の食道がんの患者会がない」と話していたことを思い出し、それなら自分が運営する会を作ろう、と急いで企画書を作りました。先生方も「ぜひ作ってほしい、何でも協力するから」と後押ししてくださって。このようにして、企画から約1か月で食道がんサバイバーズシェアリングスは設立されました。

約1,000人が登録、オンライン交流会を中心に

 現在の会員は約1,000人(LINE会員登録)です。毎月開催しているオンライン交流会(1回約90分、Zoom)は、誰でも参加できる会のほか、女性ならではの話をしたいという要望から、女性患者さんだけが集まる会も別日に開催しています。また、毎年4月の食道がん啓発月間には大型イベントを日本食道学会と共催として開催。このほか、「リレー・フォー・ライフ」などがんの啓発イベントに参加したり、専門医による解説動画を作成し患者会YouTubeアカウントで配信するなどしています。

イベント
リレー・フォー・ライフジャパン2023 東京・上野公園

 正確に集計してはいませんが、登録者は50~60代で男性が多いです。一方、交流会に参加される方は女性患者さんの方が多いです。早期から進行している方まで、いろいろなステージの方がいらっしゃいます。

 2023年には、食道がん治療後の合併症や後遺症への対処法に関する体験談をまとめた冊子「あるある生活」を発行しました。食道がん治療を受ける患者さんは、治療前に合併症や後遺症のことを聞いて知ってはいても、実際に治療を経験してみると「かなりギャップを感じる」ことがあると、アンケート調査の結果からわかりました。そのギャップとして、特に「病院を退院して、社会生活に戻るまで」に必要な情報が乏しいようでした。そこで患者会メンバーから有志を募り、同冊子の発行に至りました。企画から取材、原稿まで、全てメンバーで分担しながら作成していきました。

後遺症や合併症に関する「共感」の場

 交流会では、初めての参加者は治療に関するお話、複数回以上参加されている方は後遺症や合併症のお話が多くなっています。

 例えば、「のどに詰まる」という感覚について、食道がん患者の感じ方と健康な方の感じ方には違いがあると思っています。私自身は治療後、左側の反回神経(声帯の動きを司る神経)が麻痺し、声帯が動いていないため音域がなくなり、カラオケを歌うことはできなくなりました。腸液があがってくることやダンピング症候群にも悩まされていますが、生活の一部だと思って10年以上付き合っています。

 後遺症や合併症の話は、多くのがん種を対象とした会ではなかなか共感を得られないのですが、ここではあうんの呼吸で、その状況を理解し、どうしたら克服できるか、対処できるかについて話ができます。そうした声は設立当初からよく聞かれます。

実地開催、他団体とのコラボ企画も

 2024年は設立4年目になります。コロナによる規制も緩和されつつあり、多くの要望をいただいていることから、リアルな対面形式でのイベントを実施できたらと思っています。また、他の患者団体さんとのコラボレーション企画も予定しています。第一弾としては、血液がん、がん啓発団体と共同で緩和ケアに関するイベントを計画しています。

 いろいろ取り組んでいきたいことはあるものの、私自身も仕事と両立しながら運営を行っており、がん患者の一人であります。得意な部分を生かして運営に関わってくださる方を増やし、この会を持続可能な形にすることも検討していきたいと思います。

一般社団法人 食道がんサバイバーズシェアリングス 外部リンク

主ながん種
食道がん
地域
全国
連絡先
https://www.shokuganrings.com/contact
活動内容
食道がんに罹患した患者さんの不安を解消するための、食道がん経験者による生活に関するQ&A形式を含めた情報共有Webサイトを運営。定期的にオンライン交流会を開催するほか、調査やセミナー、シンポジウム、勉強会の企画運営も行っています。医師セミナー(アーカイブ)をYouTubeで配信。