「ブーゲンビリア」女性特有のがん体験者が自分らしく生きるお手伝いを

内田絵子さん
NPO法人ブーゲンビリア総括理事長 内田絵子さん

2018.5 取材・文 大場真代

 NPO法人ブーゲンビリアは、「がんになっても自分らしく生きる」をモットーに、主に乳がんを中心に女性特有のがん体験者を支援しています。「おしゃべり会」などを通じた患者さんへの支援に加えて、アンケート調査などを通じて患者さんの声を社会に発信しています。また、より良い医療を目指して、国への提言や政策を動かすために政治家にはたらきかけるロビー活動を大事にしています。統括理事長の内田絵子さんにお話をうかがいました。

「患者参加型の医療」「患者に寄り添う医療」の実現に向けて

 ブーゲンビリアは、主に乳がんを中心に、子宮がん、卵巣がんといった女性特有のがん体験者を支援するNPO法人です。2018年に創立20年を迎え、「がんになっても自分らしく生きる」をモットーに活動しています。主な活動として、再発乳がん・若年性乳がん等、より自分と近い経験をした人と語り合うことができる「おしゃべり会」や、病院での出前おしゃべりサロンやピアサポート、医療従事者への相談の場の提供を行う「がんカフェたま」の活動にも参加しています。それ以外にも、遠足や女子ランチ会などのお楽しみもあります。また、医療の課題や最新の治療法などの学習会、シンポジウムなどを行っています。「癒やし」「学び」「アドボカシー(提言)活動」「国際ボランティア」「がん征圧研究支援」の5つの柱を中心として活動を行っています。

 私自身、今から24年前の44歳の時に乳がんの告知を受けたがん体験者です。当時住んでいたシンガポールで、乳房の全摘手術、抗がん剤治療、乳房の再建手術を経験しました。今でも私は、主治医をはじめ、自分の治療に関わってくれた全ての医療従事者に感謝しています。なぜなら、私が受けた医療は、「インフォームドコンセントの充実」「セカンドオピニオンの重要性の理解」「初期からの緩和ケアへの心遣い」「腫瘍内科医の存在」「人間の尊厳を尊重した医療」によって、不安になることなく、患者の自己決定を尊重してくれるものだったからです。当時のシンガポールの医療には感謝しています。まさに、「患者参加型の医療」であり「患者に寄り添う医療」だったと、今でも感じています。

 しかし、治療が終わり日本へ戻ってきたとき、自分とは全く別の思いを抱く乳がん患者さんたちのお話を聞く機会がありました。患者さんの多くが、「主治医と上手くコミュニケーションが取れなくて辛い」といった悩みを抱えていたのです。自分がシンガポールで受けた「患者参加型の医療」と「患者に寄り添う医療」を日本でも広めたいと、ブーゲンビリアの活動を始めました。

治療について理解しようと努力する「患者力」「セルフマネージメント力」の大切さ

 おしゃべり会では、患者さん同士でお話する中で大切にしていることがあります。それは、自身のがん体験を話すだけでなく、他の患者さんのがん体験を真剣に聞くということです。自身のがん体験を誰かに話すということは、とても大変なことです。話すことができずに悩んでいる患者さんもいます。そのため、「おしゃべり会で話せたことで、元気になった」「元気をあげたりもらったりの双方向ね、私の体験が役立った」と言う患者さんもいます。

 また、同じがん患者さんのお話を真剣に聞くことで、多くの気付きがあります。例えば、がん治療では、抗がん剤治療やホルモン剤治療などによって副作用が現れることがあります。そのため、「治療の副作用が辛い」といったことで悩んでいる患者さんは少なくありません。ただ、そのような辛いことだけに目を向けないで欲しいと私は願っています。なぜなら、がんになることは自分の人生の中でとても大きな出来事ですが、それが全てではないからです。乳がんに罹患したショックや悲しみと向き合った後、この出来事から何を学ぶかが大切なのではないでしょうか。受け身で治療を受けるのではなく、副作用を含めた治療全体について自ら理解しようと努力する「患者力」や「セルフマネージメント力」を多くの患者さんに身につけてほしいと思います。また、会のキャッチコピーでもある「せっかく乳がんになったのだから」の心意気を持って、強く生きてほしいと思っています。

患者と医師のすれ違いをなくすために

 私たちは、「患者参加型の医療」「患者に寄り添う医療」の実現に向けた活動のひとつとして、2016年に「乳がんホルモン療法服薬アドヒアランス 患者QOLに関するアンケート調査結果報告書」を作成しました。これは、日本全国のホルモン療法を受けた経験のある乳がん患者さん564名を対象に、ホルモン療法に関する満足度や副作用の度合いなどを調査したものです。患者さんの声について、医師にもコメントしていただきました。

 この調査からは、患者さんが医師に対して「治療についてもっと説明してほしい」と感じていることや、医師が患者さんに対して「もっと能動的に行動してほしい」と感じていることがわかりました。このようなすれ違いを失くしていくことが、今後の課題だと考えています。「患者参加型の医療」「患者に寄り添う医療」の実現に向けて、患者さん等と共に、これからも患者さんの声を社会に発信していきたいと思います。

NPO法人ブーゲンビリア 外部リンク

がん種
主に乳がんなど女性特有のがん
地域
東京都
おしゃべり会
【ピンクリボンおしゃべり会】毎月2回(1日・第3日曜日)開催
【リボーンの会(再発乳がん)】毎月1回(1日)開催
【カチューシャの会(若年性乳がん&シングル)】毎月2回(1日・第3日曜日)開催
詳しくは公式ウェブサイトをご覧ください。
連絡先
TEL 070-3355-2020
mail buugenvilia@gmail.com
活動内容
ブーゲンビリアは、「がんになっても自分らしく生きる」をモットーに、主に乳がんなどの女性特有のがん体験者を支援するNPO法人。「おしゃべり会」などの患者さん支援に加えて、患者さんへのアンケート調査などを通じて患者さんの声を社会に発信する活動も行っています。