「頭頸部がん患者友の会」頭頸部がん患者さんと医療従事者をつなげる

佐野敏夫さん
頭頸部がん患者友の会 東京患者会代表理事 佐野敏夫さん

2018.10 取材・文 大場真代

 頭頸部がん患者友の会は、頭頸部がん患者さんを支援する患者会です。同じ頭頸部がん患者さんと出会える場の提供だけでなく、医療従事者を通じた情報提供を行っています。東京患者会代表理事の佐野敏夫さんに、活動に対する思いをうかがいました。

舌がんになり後遺症に苦しむ日々

 頭頸部がんとは、頭から首までの範囲に発生するがん(脳・脊髄の病気や目の病気は除く)のことで、舌がんなどの口腔がんなど、さまざまな種類に分かれます。頭頸部がんは他のがんに比べて発生頻度が少なく、がん全体の5%程度といわれています。患者数は少ないですが種類は非常に多いため、それぞれの頭頸部がんに関する情報を手に入れることは簡単ではありません。頭頸部がん患者友の会は、患者さんのために正しく有益な情報発信を行うこと、また患者さん同士の交流の場を設けることを目的に2016年に設立しました。

 私自身、2007年に舌がんとなりました。最初は、お酒を飲むたびに口の中がしみるようになり、口内炎ができたのかと思いました。しかし、数か月経っても治らないので病院へいくと舌がんと診断され、2度手術を経験しています。手術の後遺症により、唾液が出ず、常に口が渇いていて満足に眠れず、言葉が上手く伝わらなくなりました。また、これまで美味しいものを食べるのが大好きでしたが、流動食しか食べられなくなりました。

 そんなときに、口腔外科での口腔リハビリに出会い、マウスピースや口腔ジェルの存在を知りました。こうした存在や多くの方々の支えがあり、以前と同じように仕事をこなせるまで回復したのです。そして、リハビリで出会った先生から「佐野さんの元気な姿を見せることで、他の頭頸部がん患者さんたちに勇気を与えることになるよ」と背中を押してもらい、頭頸部がん患者友の会を立ち上げました。

頭頸部がん患者さん・さまざまな医療従事者と出会える場

 頭頸部がんは、治療によって声を出すことが難しくなったり、顔の形が変わってしまったり、食事が満足に取れなくなったりなど、さまざまな後遺症が残ることから、患者さんの自殺率が高いといわれています。実際に、私も手術をしてからはさまざまな不自由があり、外出することや人と会うことが億劫になってしまった時期もありました。この辛さは、同じ経験をした患者同士でないとわかりあえないと感じています。だからこそ、同じ頭頸部がん患者同士、気軽に話をできる場所は大切です。

 頭頸部がん患者友の会では、患者さん同士が集まる会を3か月に1回開催しています。参加した頭頸部がん患者さんからは、「先輩患者さんの話を聞くことで先の見通しが明るくなった」「自分と同じように頑張っている患者さんに出会うことで勇気をもらった」といった声が寄せられ、参加した患者さんは明るい表情で帰っていきます。また、会では医師や看護師、言語聴覚士といった医療従事者も毎回出席していますので、かかりつけの病院以外の医療従事者と直接話ができる良い機会だと感じています。

 その他、「セカンドオピニオンを考えているけど、なかなか主治医には言えない」という患者さんや、「今の主治医とは相性が悪いと感じている」という患者さんのケアなども個別に行っています。もし、悩んでいる患者さんがいたら、ぜひ相談してほしいと思います。

医療従事者を巻き込み多くの患者さんをサポート

 頭頸部がん患者友の会では、食事の工夫の仕方やリハビリの方法など、実践的な内容も積極的に発信しています。これまで私自身、悩みを解決してくれるような情報にたどりつけず、悔しい思いをしてきました。情報が得られず、「何か他にできることはないか?」「現状をどうにか変えることはできないのか?」と、苦しんでいる患者さんは少なくありません。私たちは、このように苦しむ患者さんに情報を届けられるよう、これからも活動をしていきます。

 今後は、より多くの医療従事者を巻き込んだ情報交換会の場を増やし、欲しい情報がすぐ得られるような状況を作りたいと考えています。また、患者さん同士での交流をさらに盛んにするなど、頭頸部がん患者さんが一人でも多く笑顔で過ごせるためのサポートをしていきます。

頭頸部がん患者友の会 外部リンク

がん種 頭頸部がん
地域 東京
連絡先 TEL  03-6222-8900
FAX  03-3555-1911
Mail  info@han-cancer.com
活動内容 頭頸部がん患者友の会は、頭頸部がん患者さんを支援する患者会です。同じ頭頸部がん患者さんと出会える場の提供だけでなく、医療従事者を通じた情報提供を行っています。