「口腔・咽頭がん患者会」頭頸部がん患者さんの体験談を共有することで、前向きに生きるお手伝いを
2018.10 取材・文 大場真代
口腔・咽頭がん患者会は、頭頸部がん患者さん同士が思いを共有しあう場所を提供する患者会です。ご自身も舌がんを経験され、現在も術後の後遺症と向き合いながら、精力的に患者支援活動を行っている会長の三木祥男さんに話をうかがいました。
後遺症に最も苦しんだ時期に会を立ち上げ
私は2003年に頭頸部がんの一種である舌がんと診断され、その6年半後に再発しました。手術で舌の約3分の2を切除し、再建しています。後遺症により、現在でも毎回の食事に2~3時間かかり、自分の唾液で誤嚥してしまったり、飲み物も自由に取ることができません。また、言語障害もあり、初めて会う方だと私の言葉がうまく伝わらないこともあります。
このように頭頸部がんは、治療によって多くの機能障害や後遺症が残りやすく、そのショックは想像を絶するものがあります。私の場合、手術から2年後の時期が、後遺症に最も苦しんだ時期でした。そんなときに、大阪府立成人病センター(現:大阪国際がんセンター)耳鼻咽喉科の看護師長から「頭頸部がんの患者会をつくりませんか?」とお話をいただいたことをきっかけに、2005年に患者会を立ち上げました。当時は、私を含む3人の頭頸部がん患者でのスタートでした。その後、2度ほど体制を変え、現在の形に至っています。
頭頸部がん患者さんの体験談が、不安や悩みを解消するヒントに
現在は、頭頸部がん患者さんの体験談を共有する会、患者さん同士の交流会、病気のことやリハビリに関する勉強会の運営を中心に活動しています。私は、患者さんにとって一番の“クスリ”は、同じ病気の人の体験談を聞き、生き様に触れることだと考えています。そのため、交流会では、同じ頭頸部がん患者さんと出会い、直接お話を聞くことで、自分の抱えている不安や悩みを解消するヒントを得て欲しいと思っています。また、勉強会は、がんに関する知識を深めるきっかけにして欲しいと考えています。
私は、患者会の活動を通じて、自分の悩みや不安を打ち明けられる場所があるということは、とても大切なことだと感じています。家族や周囲の人が、いくら励ましてくれたとしても、患者さん自身にしかわからない辛さがあります。頭頸部がん患者さんの多くは、手術後の機能障害によって、「うまく話すことができない」「うまく食事がとれない」「顔の表情がうまくつくれない」など、さまざまな状況に陥ります。退院後、人前に出ることが億劫になり、うつ状態になり、人生を諦めてしまった人も少なくありません。これまでの活動のなかで、思わず声を詰まらせ、涙する患者さんにも多く出会ってきました。このように思いつめた患者さんであっても、同じ頭頸部がん患者さんと触れ合うなかで、多くの患者さんが徐々に前向きな気持ちを取り戻しています。
初めて参加する患者さんには時間をかけてケア
口腔・咽頭がん患者会は2018年現在、80名ほどの会員を抱えています。初めて参加する人が参加する「どんぐり会」は、偶数月の第1日曜日に開催しています。頭頸部がんの患者さんは深刻な後遺症を持っていることが多いので、初めて参加する患者さんに対しては、じっくりと時間をかけて話を聞き、過去の事例などからアドバイスを行っています。2回目以降は、交流会や勉強会、お花見や紅葉狩りなどのイベントに自由に参加してもらいます。
最初の頃は将来への不安を抱えていたり、人生に絶望していたりした患者さんも、活動に参加することで、徐々に生きる気力を取り戻している姿を多くみてきました。今後も、頭頸部患者同士、体験談の共有を通じて、一人でも多くの患者さんを支援していきます。
がん種 | 頭頸部がん |
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地域 | 大阪 |
お問い合わせ | 公式ウェブサイトからお願いします。詳しくはコチラ |
活動内容 | 口腔・咽頭がん患者会は、頭頸部がん患者さん同士が思いを共有しあう場所を提供する患者会です。定期的な交流会、勉強会などを開催しています。 |