【がんプラス5周年×CaNoW】乳がん患者さんが叶えた「治療を支えてくれた人たちに感謝を伝える会」開催

取材・文:がん+編集部

がんプラスはサイトオープン5周年を記念し、グループ会社であるエムスリー株式会社が展開する「CaNoW(カナウ)」と共に、がん患者さん・ご家族の願いを叶えるイベントを開催。乳がん患者さんの堤 安紀子(あきこ)さんが叶えたイベントの様子をレポートします。

堤さん(中央)と岩瀬家の皆さん

「治療を支えてくれた2つの家族に感謝を伝えたい!」

堤さんが今回応募した願いは、「がん治療を支えてくれた人に感謝を伝えたい!」というものでした。乳がんが発覚したのは2021年の秋。その後の検査で右乳房ステージ3cと診断を受けました。当時3歳のしずかちゃん(仮名)、1歳のまさひろ君(仮名)の育児で手いっぱいの最中にがんを宣告された堤さん。当時いろいろ悩んだ末、居住地の大阪から千葉の実家に戻り、お母さんと、同じ敷地内に暮らすお兄さん家族のサポートを受けながら、がん治療を進めていくことになりました。

堤さんのがん治療を支えたのは、実家のほかにもう1家族。それが、堤さんの以前からの友人で、医師の岩瀬真弓さんと、岩瀬さんのお子さんたちでした。岩瀬さんは、堤さんのがんが発覚してからずっとLINEで励まし続けただけでなく、堤さんが治療を受ける病院を一緒に探したり、時には、堤さんとしずかちゃん、まさひろ君を自宅に招いて一緒に時間を過ごすなど、堤さんのがん治療に寄り添ってきました。

「母や兄の家族が2人の子どもを本当によくみてくれて、とても助かりました。また、岩瀬さんとそのご家族の優しさにも救われました。もちろん、夫も1人で寂しいのを耐えてくれて、感謝しています。言葉にしきれないほどの『ありがとう』を、がん治療がひと段落したタイミングで、何かの形で伝えたいと思っていたので応募しました」と堤さん。

堤さんの体調が安定し、がんが寛解状態になったことから、堤さんの願いを叶えることが決定し、「感謝会開催」に向けた準備が始まりました。

アットホームな感謝会を開催―VTR上映、ダンスの余興、プレゼント贈呈

「感謝を伝える」なら、食事会を開くなどが定番ですが、コロナの流行もまだ続いている中で、どのような形が良いのか検討した結果、食事なしで、余興あり笑いありの感謝会を短時間で開催することに。大阪の堤さんと、東京のCaNoWスタッフがリモートミーティングを重ね、堤さんのアイデアを取り入れながら準備が進行。準備期間3か月を経て、ついに12月、感謝会が開かれました。

感謝会には、堤さんの家族4人と、実家のお母さん、義理のお姉さん、小学生の甥っ子さん、そして岩瀬さんと3人のお子さんが参加。しずかちゃんとまさひろ君がムードメーカーとなって、会は終始アットホームな雰囲気の中、進行しました。

会のスタートは、事前に作成した約13分のVTR上映。診断から治療までを振り返る堤さんへのインタビュー、治療期間中の家族とのお出かけや、岩瀬さんと過ごした際の写真などを織り交ぜた内容です。

2人のお子さんもママの話を真剣に聞きます


上映後、ゲストの皆さんから一言ずつ感想をいただきました


会の中盤、堤さんとお子さん2人が余興としてダンスを披露。ゲストは手拍子で盛り上げました。堤さんは、会の数週間前まで放射線治療の影響からか、胸壁エリアのむくみとだるさに悩まされていたそうですが、この日は少し症状が落ち着いていたということで、お子さんを抱っこして一緒に踊りました。

自作のぶどうのお面をつけて、ダンスを披露


堤さんはこの日のために、大阪のガラス工房でペーパーウェイトを手作り。お母さまには赤、岩瀬さんには緑、義理のお姉さんには青とテーマカラーを設定し、花束と一緒にプレゼントしました。

結婚式のキャンドルサービスのように堤さん一家がごあいさつまわり



会の最後は、堤さんから改めてゲストの皆さんに感謝を伝えて、全員で記念写真を撮影。約1時間半の感謝を伝える会は無事終了しました。

「私自身、結婚式をもう1回やったような気分(笑)で、ものすごく充実した時間を過ごすことができました。母は『感動した!』とLINEをくれました。皆さん楽しかったと言ってくださって、実施してよかったなと本当に思っています。また、岩瀬さんはこんなことを言ってくれました。『楽しいだけじゃなく、すごく学ばせてもらったよ、こうして真剣に向き合って、前を向いていることがすごい』と。自分のがん治療を振り返ると、思い出したくないつらいこともありますが、そう言っていただけてうれしかったです」

「遺伝性乳がん卵巣がん」であることと向き合って

堤さんは、「遺伝性乳がん卵巣がん」(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)の患者さんです。右乳房とともに左乳房も予防的に切除、術後の放射線治療を受け、現在は寛解状態にあります。

トリプルネガティブ乳がんで、30代で発症していること、そして母から聞いた話で親族にがんの人が多いことがわかり、そのような状況から、主治医に遺伝カウンセリングを受けてみてはどうですか?と勧められました。遺伝性のがんがあるということすら知らなかったのですが、話を伺い、家族と相談した上で、遺伝子検査を受けました」

検査の結果、BRCA1遺伝子に病的バリアント(変異)があることがわかり、遺伝性乳がん卵巣がんと判明しました。BRCA1遺伝子の病的バリアントは、常染色体優性(顕性)遺伝形式で親から子へ遺伝し、HBOCとなります。HBOCであれば全員ががんを発症するというわけではありませんが、両親のどちらかがBRCA1遺伝子に病的バリアントをもっている(HBOCである)場合、子どもが病的バリアントを受け継ぎ、HBOCとなる確率は50%です。

「体調がいい日もありますが、そうでない日もありますし、今は寛解状態にあっても、この先いつまたがんを発症するかもわからない。そして、子どももHBOCである確率が50%。がんのことを考えない日は1日もありません。子どもが将来、結婚することになった時などに差別されたりしないかとか、考えれば考えるほどつらいこともいっぱいあります」と堤さん。だからこそ、将来、遺伝性のがんが差別されたりすることのない社会であってほしいとの思いが芽生え、当事者として、ご自身の経験を積極的に発信していきたいと考えているそうです。

「遺伝する仕組みなどを含め、病気を理解することも難しいのですが、いろいろ勉強して、正しい情報を発信していきたいと思っています。そして、正しく病気を理解してもらい、判断してもらえたらと。今はSNS(インスタグラム)で〈遺伝性乳がん〉というハッシュタグをつけて、同じ病気の方と交流をしたりしていますが、今後はもっといろいろな方法で発信していければと思っています」

正しい情報をうまくキャッチアップして、前向きに

今回の感謝会は、がん治療に対して前向きな考えをもつ堤さんがいなくてはなし得なかったと言える企画となりました。堤さんが思う、がん治療との向き合い方のコツを教えてもらいました。

「がんそのものの治療は、標準治療で寛解に至ることができ、言葉が適切かわかりませんが、恵まれている方の患者なんだと思います。がんに関連する不安やメンタルについて、私の場合は、不安を軽減するために、感謝会に来てくださった方々だけでなく多くの人に支えてもらって、孤独を感じないように工夫したことと、また、正しい情報をうまくキャッチアップして、本当かどうかわからない情報に惑わされて妙に不安にならないように気を付けながらここまで治療を続けてきました。不安が少しでも和らぐと、気持ちも前向きになれるんじゃないかと思います」

今年、堤さんは卵巣の予防的切除手術を受ける予定です。

※記事中の患者さんのお名前は一部仮名です。※一部画像を加工してあります。