治療
急性骨髄性白血病の治療法をご紹介します。
急性骨髄性白血病の化学療法
高齢者(65歳以上)に対する寛解導入療法は、全身状態、合併症などの程度により異なります。医師は、年齢、全身状態、合併症に基づいて、治療強度の軽減や緩和ケアの選択も検討しますが、減弱基準に関しては明確なエビデンスはありません。
強力化学療法が可能な予後良好または中間の高齢患者さんの寛解導入療法は、ダウノルビシン+シタラビン療法かダウノルビシン+エノシタビン療法が選択されます。ダウノルビシン+シタラビン療法は、ダウノルビシン(40mg/m2)を3日間とシタラビン(100mg/m2)を7日間、点滴で投与されます。ダウノルビシン+エノシタビン療法では、ダウノルビシン(40mg/m2)を3日間、エノシタビン(200mg/m2)を8日間、点滴で投与されます。予後不良の患者さんに対しては、少量のシタラビンが投与されます。
強力化学療法が適応とならない患者さんの寛解導入療法は、ベネトクラクス+アザシチジンまたはベネトクラクス+低用量シタラビンが推奨されています。全身状態や併存疾患の程度により、治療強度の減弱や支持療法が検討されることもあります。
急性骨髄性白血病の救援療法
急性骨髄性白血病の寛解導入療法後、治療に対して抵抗性を示し効果がなくなった場合、あるいは再発や再燃した場合に行われる化学療法を「救援療法(サルベージ療法)」といいます。この治療は、複数の抗がん剤などを組み合わせて行われます。
急性骨髄性白血病の分子標的薬治療
FLT3遺伝子変異陽性の再発・難治性急性骨髄性白血病患者さんに対しては、ギルテリチニブとギザルチニブの2剤が承認されています。両剤とも使用前に、コンパニオン診断が行われ、FLT3遺伝子変異陽性であることが確認されます。ギザルチニブは、FLT3遺伝子変異のうち、FLT3-ITD遺伝子変異陽性に限り承認されています。
急性骨髄性白血病の造血幹細胞移植
造血幹細胞移植には、「骨髄移植」「末梢血幹細胞移植」「臍帯血(さいたいけつ)移植」「骨髄非破壊的移植」の4つの治療法があります。
骨髄移植
骨髄移植を受ける患者さんは、移植前に、化学療法や放射線治療により骨髄中の正常な細胞とともに白血病細胞を破壊します。その後、白血球の型が一致したドナーから採取された正常な骨髄を患者さんに静脈から移入して、血液の元となる骨髄を正常なものに入れ替える治療法です。
末梢血幹細胞移植
骨髄系の白血球細胞である「顆粒球」の分化や増殖を促進するための薬剤である「G-CSF製剤」をドナーに注射することで、骨髄で増え血液中に流れ出てきた造血幹細胞を採取し、患者さんに移植する治療法です。
臍帯血移植
胎児と母体をつなぐ「へその緒(臍帯)」には造血幹細胞が含まれています。臍帯血移植は、白血球の型が一致した臍帯血を骨髄のかわりに移植する治療法です。臍帯血バンクには、さまざまな白血球の型の臍帯血が保管されています。
骨髄非破壊的移植
骨髄非破壊的移植は、ミニ移植とも呼ばれる治療法です。骨髄移植のように大量の化学療法や放射線治療を必要とせず、免疫抑制剤を使うことでドナーから患者さんに造血幹細胞を入れ替えることができるため、高齢者や合併症のある患者さんを対象に行われるようになってきています。移植による合併症や負担が少ないことがわかってきていますが、骨髄移植に比べると再発率は高くなります。
急性骨髄性白血病の支持療法
支持療法は、白血病細胞を攻撃するための治療ではなく、治療中に起こるさまざまな症状や合併症に対して、症状を和らげたり予防したりすることを目的として行われる治療法です。白血病では、白血球の減少により、感染症にかかりやすくなるため、細菌やウイルスが感染しやすい口腔や気道などのケアが大切です。また感染症予防のために抗生物質や抗ウイルス薬、抗真菌薬などが投与されることもあります。貧血症状や出血症状には赤血球や血小板などの輸血が行われます。化学療法や放射線治療にともなう吐き気などの副作用に対しては、制吐剤での対処がされます。こうした治療は、生活の質(QOL)を維持するだけではなく、がんの治療を継続するためにも重要な治療です。
急性骨髄性白血病の寛解導入療法や寛解後療法時のG-CSF製剤の投与は、好中球減少期間の短縮やQOLの改善が期待される支持療法です。また、高齢者や重症感染症を併発した場合にも検討されます。
参考文献:一般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版