再発
慢性骨髄性白血病の治療効果判定、経過観察、再発などをご紹介します。
慢性骨髄性白血病の治療判定
慢性骨髄性白血病の治療は、白血病細胞をコントロールすることで慢性期を維持し、病気の進行を回避することが目的です。慢性期の治療効果は、「血液学的奏効」「細胞遺伝学的奏効」「分子遺伝学的奏効」3つのレベルで判定されます。血液学的奏効の判定基準は、末梢血中の白血球や血小板の数、芽球や顆粒球の割合などです。細胞遺伝学的奏効の判定基準は、骨髄中のフィラデルフィア染色体の割合、分子遺伝学的奏効の判定基準は、血液細胞中のBCR-ABL1遺伝子の発現量です。
慢性骨髄性白血病の治療効果の判定基準
血液学的奏効 | 血液・骨髄検査所見および臨床所見 |
完全奏効 | 1.白血球<10万/μL |
2.血小板<45万/μL | |
3.末梢血液中の幼弱な細胞(芽球、前骨髄球、骨髄球)認めない | |
4.脾臓の増大なし |
細胞遺伝学的奏効 | 骨髄有核細胞中のフィラデルフィア染色体 (BCR-ABL1)陽性率 |
細胞遺伝学的大奏効 | 0% |
細胞遺伝学的完全奏効 | 0~35% |
細胞遺伝学的部分奏効 | 1~35% |
細胞遺伝学的小奏効 | 36~65% |
分子遺伝学的奏効 | BCR-ABL1(国際指標で補正)遺伝子レベル |
分子遺伝学的早期奏効 | BCR-ABL1≦0.1%治療3か月時点 BCR-ABL1≦0.1%治療6か月時点 |
分子遺伝学的大奏効 | BCR-ABL1≦0.1% |
分分子遺伝学的に深い奏効4.0 | BCR-ABL1≦0.01% |
分子遺伝学的に深い奏効4.5 | BCR-ABL1≦0.0032% |
分子遺伝学的に深い奏効5.0 | BCR-ABL1≦0.001% |
慢性骨髄性白血病の経過観察と検査
慢性骨髄性白血病の慢性期と移行期では、Bcr-Ablタンパク質をターゲットとしたチロシンキーナーゼ阻害薬(TKI)が使用され、慢性期を維持するために3か月、6か月、12か月と効果判定が行われます。検査の頻度は、病型、治療内容と効果、継続して行われる治療の有無、合併症、治療後の回復状態などにより異なることもあります。通常、最初は週単位で通院し、その後は月単位になっていきます。治療効果が高く副作用もコントロールできていれば、2~3か月ごとの通院になっていきます。
主な検査は、診察、血液検査、尿検査のほか、心電図、超音波検査、X線検査などの画像検査です。検査結果によっては、骨髄検査を行います。
慢性骨髄性白血病のTKIの効果判定
評価時点 | 効果 | ||
至適奏効 | 要注意 | 不成功 | |
治療前 | 指摘なし | 高リスクELTS※スコア 高リスクフィラデルフィア染色体の付加的染色体異常 | 指摘なし |
3か月 | BCR-ABL1≦10% | BCR-ABL1>10% | BCR-ABL1>10% 1~3か月の間に確認された場合 |
6か月 | BCR-ABL1≦1% | BCR-ABL1>1~10% | BCR-ABL1>10% |
12か月 | BCR-ABL1≦0.1% | BCR-ABL1>0.1~1% | BCR-ABL1>1% |
その後どの時点でも | BCR-ABL1≦0.1% | BCR-ABL1>0.1~1% Loss of BCR-ABL1≦0.1%(分子遺伝学的大奏効) | BCR-ABL1>1% 治療抵抗性ABL1変異 高リスクフィラデルフィア染色体の付加的染色体異常 |
慢性骨髄性白血病の再発(増悪)
慢性骨髄性白血病では、TKIの治療効果が失われた場合や、治療中に移行期や急性転化期へ進行した場合に増悪とみなされ、患者さんの病状にあわせた治療が選択されます。
一次治療の効果判定(ELN基準)で、要注意や不成功と判定された場合、慢性期の慢性骨髄性白血病に対する二次治療としてABL1点突然変異の解析を参考に、未投与の第二世代TKI(ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ)が推奨されています。
三次治療以降は、ABL1点突然変異の解析を参考に、未投与の第二世代TKI、第三世代TKI(ポナチニブ)、STAMP阻害薬(アシミニブ)のいずれかが推奨されています。また、ABL1点突然変異の解析でT3315I変異が認められた場合は、ポナチニブが推奨されています。
TKIが開発されるまでの慢性骨髄性白血病の治療目標は、慢性期から急性転化期への移行を阻止することでした。しかし、TKIの開発により、長期間の深い分子遺伝学的奏効が得られるようになった現在の治療目標は、「治療をしなくても寛解状態を維持すること(TFR)」に変わってきています。分子遺伝学的に深い奏効とは、血液細胞中に発現しているBCR-ABL融合遺伝子が、0.01%以下になった状態です。イマチニブによる一次治療後に、深い分子遺伝学的奏効が得られた一部の症例では、長期のTFRが確認されています。イマチニブの中止後に深い分子遺伝学的奏効を喪失した場合でも、イマチニブを再開することで再び深い分子遺伝学的奏効を得ることができているという報告があります。そのため、イマチニブの治療後に増悪した患者さんの二次治療においても、3か月、6か月、12か月と効果判定が行われます。
参考文献:般社団法人日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版.金原出版
Mahon FX, et al., Discontinuation of imatinib in patients with chronic myeloid leukaemia who have maintained complete molecular remission for at least 2 years : the prospective, multicentre Stop Imatinib(STIM)trial. Lancet Oncol. 2010, 11 :1029-1035.