治療

慢性骨髄性白血病の分子標的薬、化学療法、造血幹細胞移植、支持療法など治療法をご紹介します。

慢性骨髄性白血病の分子標的薬治療

 慢性骨髄性白血病の治療の中心は、BCR-ABL融合遺伝子がつくり出すBcr-Ablタンパク質をターゲットとした分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬:TKI)です。この薬は、第一世代から第三世代まで開発されており、早期に治療を開始すれば、薬の服薬を続けることで病気の進行を抑えることができます。第一世代は、イマチニブ(製品名:グリベック)、第二世代がニロチニブ(製品名:タシグナ)とダサチニブ(製品名:スプリセル)、第三世代がボスチニブ(製品名:ボシュリフ)とポナチニブ(製品名:アイクルシグ)です。ポナチニブは、T315I遺伝子変異がある場合に使用されます。

 第一世代のイマチニブは、慢性骨髄性白血病のTKIとして登場しました。そのため、長期間の服薬に対する効果や安全性に関するデータがそろっています。慢性期の初回治療で、イマチニブの治療を受けた患者さんの長期生存率は90%以上という論文報告もあります。

 第二世代として登場したニロチニブとダサチニブは、イマチニブと比較して白血病細胞を速く減らすことができます。しかし3種類のTKIは、いずれかが優れているものではありません。服薬方法や副作用が異なるため、病状や合併症、生活スタイルなどにあわせ、自分にあった薬を選択し、確実に服薬を続けることが大切です。治療効果が減少したり、副作用により治療の継続が困難になった場合は、他のTKIに変更されます。

 TKIの服薬は、生涯継続していきますが、深い寛解を得られれば、服薬をやめることを目指した治療が可能になってきています。

慢性骨髄性白血病の化学療法

 慢性骨髄性白血病の化学療法は、TKIが開発される以前は、インターフェロンα単剤、あるいは低用量シタラビンとの併用が標準治療でした。しかし、これらの治療は現在、「すべてのTKIに抵抗性および不耐容を示し、同種造血幹細胞移植の適応がない患者さん」「TKIの開発前から同治療の分子遺伝学的効果を得ている患者さん」「妊娠中でTKIが使用できない患者さん」に対してのみ検討されます。血液細胞中のBCR-ABL融合遺伝子の発現量が、100万個以下になると分子遺伝学的効果が得られていると判定されます。

慢性骨髄性白血病の同種造血幹細胞移植

 同種造血幹細胞移植を受ける患者さんは、移植前に、化学療法や放射線治療により骨髄中の正常な細胞とともに白血病細胞を破壊する処置を受けます。同種造血幹細胞移植は、白血球の型が一致したドナー(他人)から採取された正常な骨髄を患者さんに静脈から移入することで、血液の元となる骨髄細胞を正常なものに入れ替える治療法です。治癒が期待できる治療法ですが、有害事象による死亡リスクもあります。「TKI治療の効果がなく、慢性期から移行期・急性転化期へ進行した患者さん」「診断時にすでに移行期・急性転化期の患者さん」に対し、ドナーの確保かつ治療に耐えられる全身状態、年齢などを考慮したうえ検討されます。

慢性骨髄性白血病の支持療法

 支持療法は、白血病細胞を攻撃するための治療ではなく、治療中に起こるさまざまな症状や合併症に対して、症状を和らげたり予防したりすることを目的として行われる治療法です。白血病では、白血球の減少により、感染症にかかりやすくなるため、細菌やウイルスが感染しやすい口腔や気道などのケアが大切です。また感染症予防のために抗生物質や抗ウイルス薬、抗真菌薬などが投与されることもあります。貧血症状や出血症状には赤血球や血小板の輸血などが行われます。化学療法や放射線治療にともなう吐き気などの副作用に対しては、制吐剤で対処されます。こうした治療は、生活の質(QOL)を維持するだけではなく、がんの治療を継続するためにも重要な治療です。

参考文献:般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版,2018.
Ohnishi K et al., Long-term Outcome Following Imatinib Therapy for Chronic Myelogenous Leukemia, With Assessment of Dosage and Blood Levels: The JALSG CML202 Study. Cancer Sci., 2012, 103(6):1071-1078.