膀胱がんの基礎知識
膀胱がんとはどんな病気なのか、症状、罹患率、生存率など基礎知識を紹介します。
膀胱がんとは
膀胱は腎臓で作られた尿を溜めておく臓器で、男性は恥骨と直腸の間、女性は恥骨と子宮と膣の間にあります。膀胱がんの90%以上は、膀胱の内部の尿路上皮にできる尿路上皮がんです。尿路上皮がんにはさまざまな特殊型があり、扁平上皮・腺上皮・栄養膜細胞への分化を伴う「胞巣型」「微小乳頭型」「リンパ上皮腫瘍型」「形質細胞様型」「肉腫様型」などがあります。尿路上皮がん以外の膀胱がんには、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどがあります。
尿路上皮がんは、膀胱の筋層まで浸潤しているかどうか(深達度)で、筋層非浸潤がんと筋層浸潤がんに分類されます。初発時に診断される尿路上皮がんの約75%は筋層非浸潤がんで、25%が筋層浸潤がんです。
膀胱がんの症状
膀胱がんが発見されるきっかけとなる主な症状は、血尿や頻尿、排尿時痛、残尿感などの膀胱刺激症状です。がんが進行すると尿が出にくくなったり、脇腹、腰、背中などの痛み、足のむくみなどの症状があらわれます。
膀胱がんの罹患率と生存率
国立がん研究センターのがん統計2018年によると、新たに膀胱がんと診断される人は、男性1万7.555人、女性5,675人、合計2万3,230人で、男性は女性比べて3倍以上でした。男性は70歳前後をピークにいったん減少し、80歳を契機に再び増加の傾向がありました。女性は60歳代から徐々に増加し、80歳を超えるとさらに増加傾向でした。2019年に膀胱がんで亡くなった人は、男性が6,014人、女性が2,897人でした。
2009年~2011年に何らかのがんと診断された人全体での5年相対生存率は、64.1%でした。一方、膀胱がんに限って見ると、5年相対生存率は男性76.5%、女性63.0%でした。2002年~2006年に膀胱がんと診断された人の10年相対生存率は、男性74.6%、女性62.8%でした。
膀胱がんの進行度による5年相対生存率(1993~2011年診断)は、以下の通りです。
- 限局:87.3%
- 領域:38%
- 遠隔:9.5%
膀胱がんの進行度による10年相対生存率(2002~2006年診断)は、以下の通りです。
- 限局:男性89.6%/女性83.9%
- 領域:男性24.3%/女性15.7%
- 遠隔:男性5%/女性4.5%
限局:原発臓器に限局している
領域:所属リンパ節※転移(原発臓器の所属リンパ節への転移を伴うが、隣接臓器への浸潤なし)または隣接臓器浸潤(隣接する臓器に直接浸潤しているが、遠隔転移なし)がある
遠隔:遠隔臓器、遠隔リンパ節などに転移・浸潤がある
※原発巣と直結したリンパ経路をもつリンパ節の集まり
※各がんのがん罹患率、生存率の最新情報は、がん情報サービス「がんの統計」をご参照ください。
膀胱がんのリスク要因
膀胱がんの最大のリスク要因は「喫煙」で、50%の膀胱がんの原因と推測されています。喫煙者は、非喫煙者と比べて2.59倍の罹患リスクがあり、現在も喫煙中の人は3.47倍、現在は喫煙していなくても喫煙歴のある人は、罹患リスクが2.14倍という報告があります。1日の喫煙本数や喫煙歴が増加するほど、罹患リスクは増加しますが、禁煙することで罹患リスクは減少し、10年以上の禁煙は罹患リスクを2倍以下まで低下します。
その他には、職業性発がん物質への暴露、中東やアフリカ地域などでみられる「ビルハルツ住血吸虫症」「ヒトパピローマウイルス感染」などが膀胱がんのリスク要因です。また、長期間の尿道カテーテルの留置、シクロフォスファミドの使用、骨盤内放射線治療による膀胱への被ばくなどもリスク要因となります。
参考文献:
日本泌尿器学会 膀胱癌診療ガイドライン2019年版.医学図書出版
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2020)
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書