腎臓がんの基礎知識
腎臓がんとはどんな病気なのか、症状、罹患率、生存率など基礎知識を紹介します。
腎臓がんとは
腎臓は、血液をろ過して尿を作る臓器で、そら豆のような形をしています。腰のあたりの左右に1つずつ、腹膜と背中の間(後腹膜腔)に対称にあります。
腎臓は、「皮質」「髄質」「腎杯」「腎盂」で構成され、このうち「皮質」と「髄質」を腎実質といいます。一般的に腎臓がんといわれるのは、腎実質ががん化した「腎細胞がん」です。「腎盂」ががん化したものは「腎盂がん」といい、腎細胞がんとは性質や治療法が異なるため区別されます。
腎細胞がんは、細胞の形や集まり方などにより何種類かの組織型に分類されます。最も多い組織型が「淡明細胞型腎細胞がん」で、腎細胞がんの約70~80%です。その他の組織型には、「多房のう胞性腎細胞がん」「乳頭状腎細胞がん」「嫌色素性腎細胞がん」「肉腫様がん」「集合管がん」などがあります。これらの組織型は混在することがありますが、その場合、分類は最も多くみられる組織型とされます。
腎臓がんの症状
初期の腎臓がんでは、自覚症状がほとんどなく、進行とともにさまざまな症状が現れます。
主な症状は、血尿、背中や腰の痛み、腹部のしこり(腹部腫瘤)、足のむくみ、食欲不振、体重の減少、吐き気、便秘、腹痛などです。このうち、血尿、腹痛、腹部腫瘤が3大症状とされています。
症状を自覚してからがんが発見されるのは約3割で、残りの7割は症状があらわれる前に発見されています。健康診断で見つかることが多く、他の病気の検査を受けて偶然見つかるケースも少なくありません。
腎臓がんの罹患率と生存率
国立がん研究センターのがん統計2023年によると、2019年に新たに腎臓がんと診断された人は、男性2万678人、女性9,780人、合計3万458人で、男女比が約2対1でした。男性は70歳前後をピークに、その後は減少傾向でしたが、女性は年齢とともに増加傾向でした。2021年に腎臓がんで亡くなった人は、男性が6,274人、女性が3,523人でした。
2009年~2011年に何らかのがんと診断された人全体での5年相対生存率は、64.1%でした。一方、腎臓がんに限って見ると、5年相対生存率は68.6%でした。
がん診療連携拠点病院等(都道府県推薦病院含)における腎臓がんの進行度による5年相対生存率(2013~2014年診断)は、以下の通りです。
- ステージ1:96.7%
- ステージ2:87.6%
- ステージ3:77.0%
- ステージ4:18.3%
腎臓がんの進行度による10年相対生存率(2009年診断)は、以下の通りです。
- ステージ1:90.3%
- ステージ2:79.2%
- ステージ3:64.8%
- ステージ4:10.8%
※各がんのがん罹患率、生存率の最新情報は、がん情報サービス「がんの統計」をご参照ください。
腎臓がんのリスク要因
腎臓がんの発症には、生活習慣・環境因子、遺伝因子が関わっているという報告がありますが、まだはっきりとわかっていません。断定的なものはありませんが、発症に関連する可能性が示されている因子を以下に紹介します。
生活習慣・環境因子
赤身肉の摂取量が多いほど腎臓がんを発症しやすいと報告されています。この傾向は女性に限定されるとの報告もあります。肥満や高血圧といった生活習慣病の多くががんのリスク要因となることが知られていますが、腎臓がんでも同じ傾向が認められます。若年者の肥満はリスクの上昇に関連すると報告されています。また、ナトリウム(塩分)摂取の過多は高血圧の発症を介して発がんリスクを上昇させると推測されています。飲酒をしない人と飲酒する人を比べた研究では、飲酒をする人のリスクの方が低かったという報告もあります。職業上の危険因子として、有機溶媒を用いる従事者で腎臓がんの発症率が高かったことが報告されています。
遺伝因子
腎臓がんの発症に関わる遺伝子変異は、複数報告されています。日本で行われた疫学調査研究では、「VHL遺伝子」に変異がある、
※1 VHL病は、多臓器に腫瘍やのう胞ができ、大きくなったり再発したりする、遺伝性疾患。
※「20代から多発性肺のう胞があり、高い率で気胸を繰り返す」「中高年になり腎臓がんを発生する」「顔面などに皮疹がある」の3つを特徴とする常染色体優性(顕性)遺伝の疾患。
参考文献:
日本泌尿器学会編 腎癌診療ガイドライン2020年UPデート版.メディカルレビュー社
がん情報サービス.冊子「がんの統計」2023