胆道がんの検査・診断

胆道がんの疑いが…となったら、どんな検査を受けることになるのか、診断とステージ分類を紹介します。

胆道がんの検査

 胆道がんのリスク因子※1や胆道がんが疑われる症状※2がある場合は、一次検査として、血液検査や腹部超音波検査が行われます。

 一次検査で「胆管がん」「胆のうがん」「十二指腸乳頭部がん」と診断された場合は、それぞれの部位に応じた二次検査が行われます。

 胆管がんや胆のうがんと診断された場合の二次検査では、CTMRIによる画像検査が行われます。十二指腸乳頭部がんと診断された場合の二次検査では、上部消化管内視鏡検査、生検、CTやMRIによる画像検査が行われます。

 胆管がんの三次検査では、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)が精密検査として有用とされています。そのほか、管腔内超音波検査法(IDUS)、経口胆道鏡(POCS)、超音波内視鏡検査、PET検査、PET-CT検査、生検、細胞診が行われます。

 胆のうがんの三次検査では、超音波内視鏡検査が有用とされています。そのほか、ERCP、POCS、PET検査、PET-CT検査、生検、細胞診が行われます。

 十二指腸乳頭部がんの三次検査では、超音波内視鏡検査が有用とされています。そのほか、ERCP、IDUS、PET検査、PET-CT検査が行われます。

※1「膵・胆管合流異常」「原発性硬化性胆管炎」「肝内結石」「化学物質」「肝吸虫」「胆のう胆石」「胆のうポリープ」「感染症」「胆のう腺筋腫症」など。

※2黄疸、右上腹部痛、体重減少など。

血液検査

 胆道がんの一次検査として行われる血液検査では、胆管の閉塞による胆道系酵素の上昇を調べます。早期胆管がん患者さんの約70%でALPやγ-GTP値が高くなりますが、高値でも胆管がんとは限りません。腫瘍マーカーとしてはCA19-9の上昇が、日本人の胆道がん患者さんの約69%で見られたという報告があります。

超音波検査(EUS)

 超音波検査は、体の表面から超音波を出す機器をあて、跳ね返ってきた超音波を画像化し、臓器の形状、がんの位置、形などを調べる検査です。

 肝外胆管がんに対する超音波検査の診断率は、感度89%、正診率80~90%とされています。感度は検査で陽性と判断される割合で、正診率は、正しく診断される確率です。胆のうがんの正診率は70~90%で、十二指腸乳頭部がんの正診率は27%とされています。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)

 ERCP検査は、内視鏡を使って胆管や膵管の形状を調べる検査です。ERCP検査ではまず、口から十二指腸まで内視鏡を入れます。続いて膵管と胆管の開口部である十二指腸乳頭部からカテーテルと呼ばれる細い管を入れ、膵管や胆管に造影剤を注入します。そのうえでX線撮影を行い、胆管や膵管の形状を画像化し調べます。

 膵管や胆管の形状がわかったら、ERCP下でさまざまな器具を挿入し、胆管や膵管の内側を調べる検査(IDUS、POCS)に進むこともあります。例えば、十二指腸に入れた内視鏡から、さらに細い内視鏡カメラを挿入し、胆菅や膵管の内部を観察することもできます。また、内視鏡の先端からガイドワイヤーを出し、そのガイドワイヤーに沿って生検用の器具を入れ、病変部の組織を採取することもできます。

管腔内超音波検査(IDUS)

 管腔内超音波検査は、ERCP下で胆管や膵管に細長い超音波機器を入れ、胆道の内側から精密な超音波画像を撮影する検査です。胆道がんの良性や悪性を判断する場合に用いられます。また、悪性であれば病変の浸潤の程度を調べることができるため、手術を行うかどうかを判断するための検査として有効とされています。

経口胆道鏡検査(POCS)

 経口胆道鏡検査は、十二指腸乳頭部から細い内視鏡を胆管に挿入し、胆管の内側を観察する検査です。ERDP下で胆道鏡を胆管内に挿入する方法と、細い内視鏡を直接胆管内に挿入する方法があります。ERCPのみでは判別不能な胆管粘膜にある病変の診断や、胆道がんの浸潤の範囲などを調べるのに有用とされています。

CT/MRI検査

 造影CT検査は造影剤を使ったX線による画像検査で、MRI検査は磁気を使った画像検査です。これらの検査では、腫瘍の大きさや広がりだけでなく、リンパ節、肺、肝臓などの転移を調べます。

 胆管がんや胆のうがんの二次検査として行われるCT検査は、病変が胆管や胆のう内にとどまっているか、また、どこまで浸潤しているかなどを診断するために有用とされています。

 MRI検査は、造影剤を使わずに胆管の状態を画像化することができます。胆管狭窄や閉塞により直接胆管内を造影できない胆管枝まで画像化できるため、CT検査とともに必要に応じて行われます。

 十二指腸乳頭部がんに対して行われるCT検査は、病変の浸潤の範囲、リンパ節転移、遠隔転移などの診断に有用とされています。また、進行がんの進展度の診断に有用とされている一方で、小さな病変に対しては検査としての有用性は示されていません。

PET検査

PET検査は、がん細胞に取り込まれる造影剤を使って、がんの広がりを調べる検査です。リンパ節や遠隔転移、再発や治療効果を調べるために行われることがあります。

生検

 生検は、採取した細胞を顕微鏡で観察し、異常な細胞がないかを調べる検査です。胆道がんの生検ではERCPを使って、生検用の機器を挿入し病変の一部を採取して調べます。

診断アルゴリズム
診断アルゴリズム
出典:胆道癌診療ガイドライン改訂第3版.第II章.1.診断アルゴリズムより作成

胆道がんのステージ分類

 胆道がんのステージは、病変の大きさや浸潤の程度(T分類)、リンパ節への転移(N分類)、遠隔部位への転移(M分類)を総合的に判断して決定されます。分類は、肝外胆管がん(肝門部領域胆管がんと遠位胆管がん)、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんで異なります。肝門部領域胆管がんは肝臓から胆のうまでの胆管にできたがんで、遠位胆管がんは胆のうから十二指腸までの胆管にできたがんです。

TNM分類

  • T:病変の大きさや浸潤の程度
  • N:病変周辺にあるリンパ節への転移
  • M:遠隔部位への転移の有無

肝門部領域胆管がんのステージ分類

T分類

TX腫瘍評価不能
T0腫瘍が明らかではない
Tis上皮内がん
T1胆管壁までの浸潤
T2a胆管壁を超えるが他臓器への浸潤なし
T2b肝実質への浸潤
T3胆管浸潤優位側の門脈あるいは肝動脈への浸潤
T4門脈本幹あるいは左右分枝(両側)への浸潤:左右肝動脈(両側)固有肝動脈
総肝動脈浸潤:浸潤が片側肝内胆管二次分枝におよび、対側の門脈あるいは肝動脈に浸潤

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.I.肝門部領域胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

N分類

NX評価が不可能
N0領域リンパ節への転移なし
N11~3個の領域リンパ節への転移
N24個の領域リンパ節への転移

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.I.肝門部領域胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

M分類

M0遠隔転移なし
M1遠隔転移ありし

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.I.肝門部領域胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

肝門部領域胆管がんのステージ分類

N0N1N2M1
Tis0
T1(T1a、T1b)13C4A4B
T2a、T2b23C4A4B
T33A3C4A4B
T43B3C4A4B

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. D.胆道癌の臨床分類と所見の記載法.IV.臨床進行度分類より作成.

遠位胆管がんのステージ分類

T分類

TX腫瘍評価不能
T0腫瘍が明らかではない
Tis上皮内がん
T1胆管壁に深さ5mm未満で浸潤
T2胆管壁に深さ5mm~12mmまでの間で浸潤
T3胆管壁に深さ12mmを超えて浸潤
T4腹腔動脈、上腸間膜動脈、総肝動脈、門脈に浸潤

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載. II.遠位胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

N分類

NX評価が不可能
N0領域リンパ節への転移なし
N11~3個の領域リンパ節への転移
N24個の領域リンパ節への転移

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載. II.遠位胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

M分類

M0遠隔転移なし
M1遠隔転移ありし

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載. II.遠位胆管癌.3TNM臨床分類より作成.

遠位胆管がんのステージ分類

N0N1N2M1
Tis0
T112A3A4
T22A2B3A4
T32B2B3A4
T43B3B3B4

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. D.胆道癌の臨床分類と所見の記載法.IV.臨床進行度分類より作成.

胆のうがんのステージ分類

T分類

TX腫瘍評価不能
T0腫瘍が明らかではない
Tis上皮内がん
T1粘膜固有層または固有筋層に浸潤
T1a粘膜層までの浸潤
T1b固有筋層までの浸潤
T2漿膜下層あるいは胆のう床部筋層周囲の結合組織に浸潤
T2a腹腔側
T2b肝臓側
T3漿膜浸潤(腹腔側)、肝実質浸潤(肝臓側)および/または1か所の他臓器浸潤(胃、十二指腸、結腸、膵臓、大網、肝外胆管)
T4門脈本幹あるいは総肝動脈・固有肝動脈浸潤、あるいは肝臓以外の2か所以上の他臓器浸潤

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.III.胆嚢癌.3TNM臨床分類より作成.

N分類

NX評価が不可能
N0領域リンパ節への転移なし
N11~3個の領域リンパ節への転移
N24個の領域リンパ節への転移

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.III.胆嚢癌.3TNM臨床分類より作成.

M分類

M0遠隔転移なし
M1遠隔転移ありし

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.III.胆嚢癌.3TNM臨床分類より作成.

胆のうがんのステージ分類

N0N1N2M1
Tis0
T1a1A3B4B4B
T1b1B3B4B4B
T2a2A3B4B4B
T2b2B3B4B4B
T3(T3a、T3b)3A3B4B4B
T4(T4a、T4b)4A4A4B4B

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. D.胆道癌の臨床分類と所見の記載法.IV.臨床進行度分類より作成.

十二指腸乳頭部がんのステージ分類

T分類

TX腫瘍評価不能
T0腫瘍が明らかではない
Tis上皮内がん
T1a乳頭部粘膜層(M)あるいはOddi括約筋層(OD)※までの浸潤
T1bOddi括約筋層を超えて浸潤(括約筋周囲に浸潤する)、および/または十二指腸粘膜下層に浸潤
T2十二指腸の固有筋層に浸潤
T3膵臓または膵周囲組織への浸潤
T3a5mm以内の膵実質浸潤
T3b5mmを超えた膵実質浸潤、または膵周囲組織あるいは十二指腸漿膜への浸潤(腹腔動脈や上腸間膜動脈までは進展していないもの)
T4上腸間膜動脈、腹腔動脈、総肝動脈、門脈に浸潤

※十二指腸下行部に開口する総胆管および膵管の出口に当たる、大十二指腸乳頭周囲にある括約筋。大十二指腸乳頭は、胆膵管が十二指腸に合流するところにある十二指腸の内側に向かって飛び出した形になっている部分。 出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.IV.乳頭部癌.3TNM臨床分類より作成.

N分類

NX評価が不可能
N0領域リンパ節への転移なし
N11~3個の領域リンパ節への転移
N24個の領域リンパ節への転移

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.IV.乳頭部癌.3TNM臨床分類より作成.

M分類

M0遠隔転移なし
M1遠隔転移ありし

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. B.UICC第8版胆道癌TNM分類に細分類を加えた胆道癌取扱い規約第7版記載.IV.乳頭部癌.3TNM臨床分類より作成.

十二指腸乳頭がんのステージ分類

N0N1N2M1
Tis0
T1a(M、OD)1A3A3B4
T1b1B3A3B4
T21B3A3B4
T3a2A3A3B4
T3b2B3A3B4
T43B3B3B4

出典:日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版. D.胆道癌の臨床分類と所見の記載法.IV.臨床進行度分類より作成.

参考文献
日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版.金原出版
日本肝胆膵外科学会胆道癌診療ガイドライン作成委員会編 胆道癌診療ガイドライン改訂第3版.医学図書出版.

最新のがん医療情報をお届けします。

無料で 会員登録
会員の方はこちら ログイン