胆道がんの治療
胆道がんのステージ分類に応じた治療選択と治療法を紹介します。
胆道がんの治療選択
胆道がんの治療法を決めていくに当たり、まず手術可能かどうかが判定されます。
手術可能
手術可能な場合、術前評価により必要に応じ、術前処置として「術前胆道ドレナージ」「術前門脈塞栓術」「術前残肝予備能評価」が行われます。広範囲な肝臓の切除を伴う場合は術前胆道ドレナージ、50~60%以上の肝切除が予定される場合は術前門脈塞栓術が行われます。肝切除を伴う胆道がんでは、CTによる予定残肝容積の測定、ICG排泄試験※による術前残肝予備能評価が行われます。
※緑色の色素インドシアニングリーン(ICG)を注射し、15分後に血液中のICGがどの程度排出されたかを調べる検査で、肝臓の解毒能力を調べるために行われます。
手術不能(切除不能)
「全身状態が不良で手術に耐えられない」「肝予備能の低下」「遠隔転移がある」など、手術ができない場合は「化学療法」「放射線治療」「化学放射線治療」「緩和ケア」のいずれかが選択されます。
切除不能の遠位胆管がんで胆管に閉塞がある場合は、治療前に「自己拡張型金属ステント」が行われます。また、切除不能の肝門部胆管がんで胆管に閉塞がある場合は、「プラスチック ステント」または「自己拡張型金属ステント」のどちらかを行うことが考慮されます。
胆道ドレナージ
胆道ドレナージは、たまった胆汁を排出するために行われます。がんにより狭くなったり閉塞した胆管を広げるためにステントやチューブを挿入して胆汁を体外に排出します。ステントは、プラスチック製と金属製があります。金属製のステントは網目状になっており、カバーで覆ったものとカバーのないものがあります。また、胆道ドレナージには「外瘻術」と「内瘻術」の2つの方法があります。外瘻術は、胆汁を体の外へ流す方法で、内瘻術は腸管内に流す方法です。
外瘻術
外瘻術には2つの方法があります。1つは「経皮経肝胆道ドレナージ」で、腹部から肝臓内を経由して胆管に針を刺し、そこにチューブを入れます。胆道にたまった胆汁は、チューブを通って体の外に出て行きます。もう1つは「経鼻胆管ドレナージ」で、ERCPを使って十二指腸乳頭部から胆管にチューブを入れ、チューブの反対側を十二指腸、胃、食道を通して鼻から出し、たまった胆汁を体外に排出します。
内瘻術
内瘻術は、内視鏡を使い十二指腸乳頭部から胆管が塞がっている部分にステントを入れる方法です。外瘻術と比べて、体から外にチューブが出ていないため日常生活への影響が少ないのが特徴です。また、胆汁を体内に流すため、脱水や低ナトリウム血症の心配もありません。一方で、ステントが詰まりやすいというデメリットもあります。ステントは外瘻術で使われるチューブのように簡単に交換できます。
肝葉以上の切除※を伴う胆道がんの手術前には、内視鏡を使った胆道ドレナージが推奨されています。切除不能の遠位胆管がんで胆管に閉塞がある場合は、治療前に「自己拡張型金属ステント」が推奨されています。自己拡張型金属ステントの中では、留置後の位置調整や再挿入する際に、取り出しやすいカバー付きの金属ステントの選択が考慮されます。
※肝臓は大きく右葉と左葉の2つに分けられます。肝葉切除は、肝臓の半分を切除する治療法です。
胆道がんの手術
胆道がんの根治的治療法は手術です。手術法は、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんのそれぞれで異なります。
胆管がんの手術
門脈部領域胆管がんで門脈に浸潤している場合は、門脈合併切除が行われます。また、肝動脈合併切除の有効性を示す報告もあり、専門病院では行われることが多くなってきています。一方で、肝動脈合併切除のエビデンスはまだ十分ではないため、胆道癌診療ガイドライン改訂第3版では推薦しない旨が記載されています。
また、広範囲に浸潤した胆管がんに対しては、肝葉切除を伴う十二指腸切除を行うことが考慮されます。しかし、合併症が起こる可能性が高いため、安全性を十分に配慮して行われます。
胆のうがんの手術
胆のうがんでは、原則として開腹による手術が行われます。肝外胆管に浸潤のない場合は、肝外胆管の予防的な切除は原則として行わないように提案されています。肝臓への浸潤が疑われる胆のうがんでは、十分な余地をとり胆のう床(胆のうと肝臓が接している部分)切除を行うことが提案されています。
十二指腸乳頭部がんの手術
十二指腸乳頭部がんに対する局所的乳頭部切除は、深達度TisとT1aに限られます。しかし、深達度を正確に診断することが困難なため、膵頭十二指腸切除術が標準治療とされています。
胆道がんの放射線治療
切除不能な胆道がんに対する放射線治療は、「延命」「ステント開存性の維持」「減黄(黄疸に対する治療)」「疼痛緩和」などを目的に行われます。また、化学放射線治療の有効性を示す報告もありますが、併用のタイミング、併用する薬剤の種類や用量など、まだ十分なエビデンスがなく研究段階とされています。
胆道がんの薬物療法
切除不能な胆道がんに対する初回治療は、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法とゲムシタビン+S-1併用療法が推奨されています。また、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法とゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法を比較した第3相試験「KHBO1401」試験の結果、3剤併用療法の優越性が示されたため、新たな治療選択肢の1つとして推奨されています。
術後補助化学療法に関しては、胆道癌診療ガイドライン改訂第3版では、「現時点では、エビデンスのある推奨される術後補助化学療法はないが考慮しても良い」とされています。
参考文献
日本肝胆膵外科学会編 胆道癌取扱い規約第7版.金原出版
日本肝胆膵外科学会胆道癌診療ガイドライン作成委員会編 胆道癌診療ガイドライン改訂第3版.医学図書出版.