肉腫の基礎知識
肉腫とはどんな病気なのか、症状、罹患率など基礎知識を紹介します。
肉腫とは
全身の骨や軟部組織(筋肉、脂肪、神経など)から発生する腫瘍を骨軟部腫瘍といいます。このうち、悪性の骨軟部腫瘍を肉腫(サルコーマ)といいます。さらに、肉腫のうち、骨から発生したものを悪性骨腫瘍(骨の肉腫)、軟部組織から発生したものを悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)といいます。
肉腫の種類
代表的な悪性骨腫瘍には、「骨肉腫」「軟骨肉腫」「ユーイング肉腫」「脊索腫」などがあります。代表的な悪性軟部腫瘍には、「脂肪肉腫」「悪性線維性組織球腫」「粘液繊維肉腫」「平滑筋肉腫」「滑膜肉腫」「悪性末梢神経鞘腫瘍」などがあります。
肉腫の症状
悪性骨腫瘍の主な症状には、「疼痛」「発熱」「腫瘤および・腫脹・関節可動域制限」などがあります。その他、正常な歩行ができない跛行(はこう)症状や、麻痺や感覚異常などの神経症状が起こることがあります。
骨肉腫やユーイング肉腫など悪性度の高い悪性骨腫瘍では、発症から医療機関を受診するまでの数週間~4か月程度、疼痛などの症状が続くことが多いとされています。しかし、発症から確定診断までに6か月以上かかることも多く、特にユーイング肉腫では、確定診断までの期間が長いとう報告があります。軟骨肉腫などの悪性度の低い悪性骨腫瘍では、症状の持続期間が数か月から数年単位と比較的長いとされています。
一方、悪性軟部腫瘍の主な症状は、しこりや腫れで、痛みを伴わないことが多くあります。神経近くや神経そのものに発生した場合は、麻痺やしびれなどの神経症状が起こることがあります。
良性の腫瘍は比較的ゆっくりと大きくなるため、症状の持続期間は数年単位におよびますが、滑膜肉腫や類上皮肉腫などの悪性軟部腫瘍でも年単位という比較的短い期間に腫瘍が大きくなることがあります。
肉腫の罹患率
2006~2012年に登録された全国骨・軟部腫瘍登録によると、悪性骨腫瘍の罹患数は2,773人で、男性にやや多く(56%)、年齢は10代と60代に2つのピークがありました。
発生部位は、下肢48%、体幹部37%、組織型は骨肉腫42%、軟骨肉腫26%、ユーイング肉腫8%、脊索腫7%でした。
また、悪性軟部腫瘍の罹患数は、8,288人で、男性にやや多く(55%)、年齢は60代がピークでした。発生部位は下肢(53%)が最多で、組織型は未分化多形肉腫(20%)、高分化型脂肪肉腫(19%)、粘液型/円形細胞型脂肪肉腫(9%)、平滑筋肉腫(7%)、粘液線維肉腫(6%)、滑膜肉腫(6%)でした。
参考文献:
日本整形外科学会監修.原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022.南江堂
日本整形外科学会監修.軟部腫瘍診療ガイドライン2020改訂第3版.南江堂
日本整形外科学会/国立がん研究センター.全国骨・軟部腫瘍登録2006~2012