肉腫の治療・骨腫瘍

悪性骨腫瘍と診断された際の、治療選択と治療法を紹介します。

悪性骨腫瘍の治療選択

 悪性骨腫瘍の基本的な治療は、手術です。悪性骨腫瘍の種類に応じて、薬物治療や放射線治療が追加されます。治療選択は、ステージ1~3とステージ4で異なります。

ステージ1~3の治療選択

 ステージ1~3で、骨肉腫やユーイング肉腫など、薬物治療が適応となる腫瘍の場合は、術前・術後に薬物治療が行われます。治療効果判定により、治癒的切除が可能となった場合、広範切除術と再建手術が行われます。治癒的切除が困難となった場合は、切縁切除術と再建手術、切断手術、もしくは放射線治療が行われます。

 手術で腫瘍を完全に切除できれば、経過観察となります。腫瘍を完全に切除できなかった場合は、必要に応じて放射線治療や薬物治療が行われます。

 ステージ1~3で、薬物治療が適応とならない腫瘍の場合、治癒的切除が可能なら広範切除術と再建手術が行われます。治癒的切除が困難な場合は、切縁切除術と再建手術、切断手術、もしくは放射線治療が行われます。

悪性骨腫瘍ステージ1~3の治療選択
悪性骨腫瘍ステージ1~3の治療選択
出典:日本整形外科学会監修.原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022.前文.図2bより作成

ステージ4の治療選択

 ステージ4の悪性骨腫瘍に対する標準治療は確立されていませんが、ステージ4と診断された場合でも、根治的切除が可能かどうかの判定が行われます。

 根治的切除が可能で薬物治療が適応となる場合は、薬物治療後に原発巣と転移巣の切除術が行われます。根治的切除が可能でも薬物治療が適応とならない場合は、原発巣と転移巣の切除術のみ行われます。

 根治的切除が困難で薬物治療が適応となる場合は、薬物治療後に切除できるかどうかが判定されます。切除可能と判定された場合、原発巣と転移巣の切除術が行われます。切除できないと判定された場合は、緩和的な治療が行われます。

 根治的切除が困難で薬物治療も適応とならない場合は、緩和的な治療が行われます。

悪性骨腫瘍ステージ4の治療選択
悪性骨腫瘍ステージ4の治療選択
出典:日本整形外科学会監修.原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022.前文.図2cより作成

悪性骨腫瘍の治療

 悪性骨腫瘍の治療は、ステージや組織型、病態に応じて、手術、薬物治療、放射線治療などを組み合わせた集学的治療が行われます。

 骨肉腫やユーイング肉腫では、手術の前後の薬物治療が推奨されています。それ以外の悪性骨腫瘍に対しては、積極的な薬物治療による有効性を示すエビデンスが乏しいため、原則として「十分な切除縁を確保した手術」が標準治療とされています。

手術

 悪性骨腫瘍の手術では、「広範切除術」「辺縁切除術」が行われます。広範切除術は、病変を取り残さないように腫瘍を周囲の正常な細胞で包み込ようにひと塊に切除する方法です。一般的に2cm程度のマージン(安全域)をとって切除が行われます。

 切除手術後には、機能を温存するための再建手術が行われます。再建は、「患肢短縮」「人工関節置換」「自家骨」「処理骨」「同種骨」による手術が行われます。「自家骨」「処理骨」「同種骨」を用いた再建手術は、骨が癒合されれば長期の安定した機能温存が期待されますが、その有用性はまだ明らかにされていません。

薬物治療

 悪性骨腫瘍にはさまざまな組織型があり、薬剤に対する感受性が異なるため、組織型に合わせた薬剤が選択されます。

 骨肉腫に対する補助化学療法の有用性は、1980年代に行われたランダム化比較試験(MIOS試験)で確認され、現在に至るまで大きく変わることなく標準治療とされています。

 MIOS試験では、補助化学療法として高容量メトトレキサート、ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシンDが用いられ、手術単独と比較した結果、有効性が示されました。

 ユーイング肉腫は、薬剤感受性が高いため薬物治療が強く推奨されています。限局性のユーイング肉腫を対象に、ドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド(VDC療法)とVDC療法にイホスファミドとエトポシドを追加したVDC-IE療法を比較した臨床試験では、5年生存率がVDC療法61%、VDC-IE療法72%でした。しかし、強度の高い薬物治療のため、有害事象には細心の注意が必要とされます。

放射線治療

 悪性骨腫瘍に対する放射線治療は、手術を中心とした集学的治療の一環として行われています。

悪性骨腫瘍の転移・再発治療

 悪性骨腫瘍は、初期治療後に約4割の患者さんが再発します。また、初発時に転移がある患者さんが約3割おり、転移のない患者さんと同様の治療が行われます。なお、ステージ4の悪性骨腫瘍に対する標準治療は確立されていません。

 遠隔転移は、肺転移が最も多く、切除可能であれば肺転移巣の切除手術が行われます。切除不能な場合は、薬物治療が行われます。

 切除不能な再発・進行性高悪性度の骨肉腫に対する薬物治療は、現状では有効性が有害性より優れているとは言えないとされていますが、小児やAYA世代の患者さんも多いため、高容量のイホスファミド単剤、あるいはイホスファミドとエトポシド併用療法(IE療法)、イホスファミド、エトポシド、カルボプラチン併用療法(ICE療法)を行うことが考慮されます。

 転移性ユーイング肉腫と初めて診断された人のうち、20~25%は予後不良とされています。原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022では、薬物治療の強化や、使用する薬剤の違いによる生存率の改善が認められたエビデンスがないため、現時点では薬物治療を強化することは推奨しないとされています。

 再発・原発性難治性ユーイング肉腫で使用される4つの薬物治療を比較したrEECur試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会2022で発表されました。比較された治療法は、「トポテカン+シクロホスファミド」「イリノテカン+テモゾロミド」「ゲムシタビン+ドセタキセル」「高用量イホスファミド」です。このうち、試験の初期段階で「イリノテカン+テモゾロミド」「ゲムシタビン+ドセタキセル」の2つは、イホスファミドより有効性が劣ることがわかったため、比較対象から除外されました。最終的に、「トポテカン+シクロホスファミド」と「高用量イホスファミド」を比較した結果、「高用量イホスファミド」は「トポテカン+シクロホスファミド」より、全生存期間の改善が認められました。今後、再発・難治性のユーイング肉腫に対する標準治療となる可能性が示されました。

参考文献:
日本整形外科学会監修.原発性悪性骨腫瘍診療ガイドライン2022.南江堂
Martin McCabe et al. Phase III assessment of topotecan and cyclophosphamide and high-dose ifosfamide in rEECur: An international randomized controlled trial of chemotherapy for the treatment of recurrent and primary refractory Ewing sarcoma (RR-ES).Journal of Clinical Oncology.2022

最新のがん医療情報をお届けします。

無料で 会員登録
会員の方はこちら ログイン