「異なる立場の少なくとも二人のお医者さんの意見を聞いて」辻比呂志先生インタビュー

本記事は、株式会社法研が2011年7月24日に発行した「名医が語る最新・最良の治療 前立腺がん」より許諾を得て転載しています。
前立腺がんの治療に関する最新情報は、「前立腺がんを知る」をご参照ください。

ほかの放射線治療法では治らないがんが、どんどん治る。ここに最大の魅力を感じています。

辻比呂志

 辻先生は福岡県の生まれですが、大学は北海道大学に進みました。北海道の大地に憧(あこが)れがあったといいます。
 「放射線科を選んだのは、もともと物理的なことに興味をもっていたことと、放射線科の先生がとても魅力的だったからです。一人は当時の放射線科の教授だった入江五朗先生。もう一人は講師だった辻井博彦先生。辻井先生は最近まで放射線医学総合研究所の理事を務めておられた方です」
 辻先生は筑波大学で陽子線によるがん治療に取り組んでいましたが、さらに一歩先をいく重粒子線治療に関心を抱き、放射線医学総合研究所への異動を希望したそうです。
 「当時、重粒子線治療は放射線医学総合研究所でしか行われていませんでした。重粒子線治療は炭素イオンの原子核を加速して治療に用いるのですが、陽子線治療で使う水素よりも粒が大きく、質量も大きい。このため治療効果も高いのです。たとえば、重粒子(炭素イオン)線はX線より3倍強いといういい方をしますが、X線を3倍量当てても、炭素イオン線と同じ治療効果が得られるわけではありません。ほかの放射線療法では治らないがんが、重粒子線治療ではどんどん治る。これは非常に大きな魅力でしたね」
 辻先生はこれまで骨肉腫(こつにくしゅ)や食道がんなど前立腺以外のがんも治療してきています。そんななかで、前立腺がんの患者さんには、特徴があるといいます。

前立腺がんの患者さん特徴とは
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辻比呂志(つじ・ひろし)先生

辻比呂志先生

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター
融合治療診断研究 プログラムリーダー
1956年福岡県生まれ。北海道大学医学部卒。道内の病院勤務を経て、筑波大学で陽子線によるがん治療に取り組む。1995年スイスポールシェラー研究所へ留学。1997年から放射線医学総合研究所。2007年から現職。前立腺がんのほか、眼球悪性黒色腫、涙腺がんも専門としている。