がん遺伝子MYCN 肝臓がんの再発予防・予後予測のバイオマーカーの開発に期待
2018/05/01
文:がん+編集部
肝臓がんの再発とがん遺伝子の関係があきらかになりました。肝臓がんの再発予防薬や予後予測のバイオマーカーの開発が期待されます。
がん遺伝子MYCNと肝臓がんの再発率に相関関係が
理化学研究所は4月24日、肝臓がんの再発を予防する世界初の薬として治験が進められているペレチノインが、がん遺伝子MYCNを発現している肝臓がんのがん幹細胞を選択的に排除していることを突き止めたと発表しました。本研究は、同研究所生命医科学研究センター肝がん予防研究ユニットの小嶋聡一ユニットリーダーや秦咸陽研究員らの共同研究グループによるものです。
ペレチノインは、1981年に岐阜大学の武藤泰敏教授が発表した合成レチノイドで、肝臓がんの治療後の患者さんを対象として1年間投与したところ、投与終了後4年にわたり、肝臓がんの再発が抑制されたといいます。世界初の肝臓がんの再発予防薬として期待されていました。これまで、小嶋ユニットリーダーらは、肝臓がんの細胞を選択的に死滅させる仕組みを明らかにしてきましたが、ペレチノインが肝臓がんの幹細胞にどのように作用するかはわかっていませんでした。
今回、共同研究グループによる臨床研究では、ペレチノインを高濃度(600mg/日)に投与したグループの約70%で、MYCN遺伝子の発現が抑制されていたといいます。また、MYCNの発現が肝臓がんの再発率と相関していることもわかりました。
肝臓がんは、世界的にも全がん種の中でも死亡率が高く死因の第2位です。日本でも肝臓がんによる死亡者は年間3万人を超えており、予後の悪いがんといわれています。肝臓がんは、外科的な切除をしても残った肝臓にあるがん幹細胞から新たながんが生じる可能性があり、再発率も高いがんとして知られています。
肝臓がん患者さんのMYCNの発現量を検査することで、肝臓がんの再発リスクの予測やペレチノインの効果予測となる可能性が期待されます。