治療

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の治療法をご紹介します。

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の化学療法

 フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫で行われる化学療法は、「寛解導入療法」と「寛解後療法(地固め療法と維持療法)」の2ステップがあります。

寛解導入療法

 初期治療として行われるのが、ビンクリスチン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、プレドニゾロン、L-アスパラギナーゼなどの5種類程度を併用する多剤併用療法が一般的です。

寛解後療法(地固め療法と維持療法)

 寛解導入療法で寛解が得られた場合、わずかに残った可能性のある白血病細胞を消滅させるために行われるのが地固め療法です。寛解導入療法で使用した抗がん剤にメトトレキサートやシタラビンなどの代謝拮抗薬を併用した治療が数か月間行われます。中枢神経系への浸潤予防のためには、髄腔内にメトトレキサート、シタラビン、ステロイドなどが投与されます。

 地固め療法により減少した白血病細胞を、さらに叩くために行われるのが維持療法です。少量のメトトレキサート、メルカプトプリン、ビンクリスチン、プレドニゾロンなどを組み合わせた治療を約1~2年間継続し、寛解が維持されていれば治療は終了です。

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の救援療法

 寛解導入療法で寛解が得られなかった場合、または寛解後に再発した再発・難治性の患者さんに対して行われるのが救援療法です。初期治療で治療効果があれば、同じ抗がん剤が使われますが、効果がなかった場合は別の抗がん剤が試されます。

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の分子標的薬治療

 フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫に対しては、Bcr-Ablタンパク質を標的とした分子標的薬「チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)」による治療が行われます。65歳以下の成人患者さんに対する寛解導入療法は、TKIと多剤併用化学療法が選択されます。65歳以上の高齢患者さんには、多剤併用化学療法の代わりにステロイド療法が併用されます。

 TKIは複数の薬剤がありますが、第一選択薬は、イマチニブ(製品名:グリベック)です。第二世代のTKIとして、ニロチニブ(製品名:タシグナ)、ダサチニブ(製品名:スプリセル)、ボスチニブ(製品名:ボシュリフ)があります。第三世代のポナチニブ(製品名:アイクルシグ)は、上記の薬に対して耐性が起きたときに使用します。

 再発・難治性の急性リンパ性白血病で、がん細胞の表面に「CD22」というタンパク質が発現している場合、イノツズマブオゾガマイシン(製品名:ベスポンサ)という分子標的薬が使用されます。CD22は、B細胞性の急性リンパ性白血病のほとんどで発現しており、治療効果が期待できます。

 また、再発・難治性のB細胞性急性白血病に対する分子標的薬として、ブリナツモマブ(製品名:ビーリンサイト)が承認されています。ブリナツモマブは、がん細胞の表面に発現している「CD19」というタンパク質とほぼすべてのT細胞に発現しているT細胞を活性化する「CD3」というタンパク質の両方と結合する分子標的薬です。がん細胞と活性化T細胞を物理的に近づけ、抗腫瘍効果を発揮します。

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の造血幹細胞移植

 急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫に対する造血幹細胞移植は、大量化学療法や放射線治療により、白血病細胞も含めて骨髄細胞を破壊した後、白血球の型が一致したドナーから採取された正常な骨髄を患者さんの静脈から移入して、血液の元となる骨髄を正常なものと入れ替える治療法です。化学療法で十分な効果が得られなかった場合や、化学療法のみでは治癒が困難とされた場合に選択され、第一寛解期と第二寛解期の2つのタイミングで検討されます。第一寛解期は、寛解導入療法後の地固め療法終了後、第二寛解期は、再発後に化学療法により治療効果が得られたときを指します。

 高齢者や、合併症などがあり強力な化学療法が行えない患者さんに対しては、少し弱めの化学療法後に、ミニ移植と呼ばれる造血幹細胞移植が検討されます。

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫の放射線治療

 T細胞系のリンパ芽球性リンパ腫では、左右の肺の間にある縦隔(じゅうかく)に腫瘤(しゅりゅう)ができていることが多くあり、局所再発予防を目的として縦隔に放射線治療が行われることがあります。治療開始前に縦隔に大きな病変があった場合、または化学療法に対する反応が遅い場合、治療後に病変が残った場合などで検討されます。しかし、縦隔への放射線治療は、放射線を照射することで起こる二次性がんのリスクや、心臓への影響があるため、慎重に検討されます。

 急性リンパ性白血病の再発予防を目的とした脳と脊髄への予防的全脳照射を行うことがあります。認知機能の低下、内分泌異常、髄膜腫などの二次性がんを発症する可能性もあるため、慎重な検討が必要です。

参考文献:般社団法人日本血液学会編. ”造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版”.金原出版,2018.

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