脳腫瘍の検査・診断
脳腫瘍の疑いが…となったら、どんな検査を受け診断が行われるのかを紹介します。
脳腫瘍の術前検査
脳腫瘍の疑いがある場合は、症状の経過を確かめるための「問診」、腫瘍が発生した部位を推定するための「神経学的検査」、腫瘍の大きさを調べるための「画像検査」が行われます。また、血管と腫瘍の関係を調べるために「脳血管造影検査」が行われることがあります。
これらの検査を行うことで、脳腫瘍の種類や性質、悪性度などをある程度推測することができます。脳腫瘍を確定診断するためには、手術により摘出した組織を調べる「病理組織検査」が行われます。
神経学的検査
脳腫瘍は、腫瘍が発生した部位によりさまざまな症状が起こります。そのため、問診、視力検査、聴力検査、運動検査などが行われます。これらの一連の検査を神経学的検査といいます。
腫瘍が大きくなると、頭蓋内の圧力が高くなり、頭痛、吐き気、言葉がでない、手足の麻痺、しびれ、感覚障害、ふらつき、痙攣などの頭蓋内圧亢進症状が出現します。こうした症状は、「両上肢挙上試験」「片足立ち試験」「指鼻試験」などで調べることができます。
両上肢挙上試験では、手のひらを上にして両腕を前方に持ち上げます。このとき、麻痺している側の腕は内側を向いて下がります。
片足立ち試験では、手を左右に伸ばして上げ、バランスをとりながら片足を上げます。バランスがとりづらいときは、机などに手をついて片足を上げます。麻痺している側の足では立てません。
指鼻試験は、左右の手をまっすぐ横に伸ばし、片方の手を曲げ、人差し指で鼻の頭を繰り返し付けるように触ります。障害があると、指先が鼻の頭からずれてしまいます。
画像検査(CT・MRI検査)
画像検査では、X線を使ったCT検査と磁気を使ったMRI検査が行われます。造影剤を利用することで、腫瘍の広がりや悪性度なども推定することができます。
ほとんどの脳腫瘍の診断はCT検査で行われますが、小脳や脳幹の病変はわかりにくいことがあります。
MRI検査では、脳腫瘍の診断だけではなく、脳浮腫の広がりも調べることができます。また、脳腫瘍の治療方針を決定するために、MRI検査は必須の検査です。
脳血管造影検査
脳血管造影検査は、腫瘍が言語野の近くにある患者さんに対して、手術を安全に行うために重要な検査です。脳は左右に分かれており、言語や高次機能に優位な側があります。例えば右利きの人は、左前頭葉や側頭葉に言語機能があります。左利きの人の言語機能は、約7割が左側に約3割が右側にあります。左右の脳のどちらに言語が関係しているかを調べために、脳血管造影を行い頸動脈からカテーテルを挿入し「プロポフォール」という麻酔薬を投与する「プロポフォールテスト」が行われます。
術中迅速検査(病理組織検査)
脳腫瘍と確定診断するためには、手術により摘出した組織を調べる「病理組織検査」が行われます。この検査は、治療方針を決定するために手術中に行われます。
脳腫瘍の診断
各検査の結果、すぐに治療の必要がないと診断された場合は、定期的なMRI検査による経過観察となり、治療の必要があると診断された場合は、手術可能かどうかが判定されます。
良性腫瘍と診断された場合は摘出手術が行われ、完全切除されればMRI検査による経過観察となります。完全切除できなかった場合は、放射線治療や薬物療法が行われます。
手術可能な悪性腫瘍と診断された場合は、手術後に放射線治療と薬物療法が行われます。手術不可能と診断された場合は、放射線治療や薬物療法が行われます。
参考文献:
日本脳腫瘍学会 日本脳神経外科学会 脳腫瘍診療ガイドライン2019年版.金原出版
日本脳腫瘍学会 日本脳神経外科学会 臨床・病理 脳腫瘍取扱い規約第4版.金原出版