肝臓がんの治療

肝臓がんの治療選択と治療法を紹介します。

肝臓がんの治療選択

 肝臓がんの治療選択は、「肝予備能」「肝外転移」「脈管侵襲」「腫瘍数」「腫瘍径」の5つの因子を基に決定されます。肝予備能は、「Child-Pugh分類」で評価され、肝切除の選択は「肝障害度」により判定されます。肝外転移、脈管侵襲、腫瘍数、腫瘍径は、画像診断に基づいて判定されます。

 まず、Child-Pugh分類でAまたはBと判定された患者さんと、Cと判定された患者さんで治療選択が分かれます。Child-Pugh分類でCと判定された患者さんで、肝移植が可能なら移植手術が行われ(青の矢印)、移植不能と判定された患者さんは緩和ケアが選択されます(緑の矢印)。

 移植の可否は、「ミラノ基準」あるいは「5-5-500基準」により判定されます。どちらかの基準内で65歳以下の患者さんでは、肝移植が推奨されています。

ミラノ基準

  • 腫瘍数が3個以下で腫瘍径が3cm以内
  • 腫瘍数が1個で、腫瘍径が5cm以内

5-5-500基準

  • 遠隔転移や脈管侵襲なし
  • 腫瘍径5cm以内かつ腫瘍数が5個以内かつAFP値500ng/ml以下

 Child-Pugh分類でAとBと判定された患者さんでは、肝外転移有無により、治療選択が分かれます。Child-Pugh分類Aで肝外転移がある患者さんは、薬物療法が選択されます(黄の矢印)。肝外転移がない患者さんは、次に脈管侵襲の有無で判定されます。Child-Pugh分類Aで肝外転移がなく、脈管侵襲がある場合は、切除可能なら切除手術、切除不能なら薬物療法が選択されます(紺の矢印)。

 Child-Pugh分類でAとBと判定された患者さんで、肝外転移や脈管侵襲がない場合は、以下の3つの条件により治療選択が分かれます。

  • 1. 腫瘍数1~3個、腫瘍径3cm以内なら、肝切除またはラジオ波焼灼法が選択されます(紫の矢印)。
  • 2. 腫瘍数1~3個、腫瘍径が3cmを超える場合は、第1選択として肝切除、第2選択として肝動脈塞栓療法が推奨されます(茶の矢印)。
  • 3. 腫瘍数4個以上の第1選択は肝動脈塞栓療法、第2選択は肝動注化学療法、または薬物療法が推奨されます(赤の矢印)。
肝臓がんの治療選択
肝臓がんの治療選択
出典:出典:一般社団法人日本肝臓学会 肝がん診療ガイドライン2021年版.第2章 治療アルゴリズムより作成

肝臓がんの手術

 肝臓がんの切除手術は、手術後に十分な肝機能を残す必要があるため、切除可能かどうかは「肝臓の機能」と「がんの数・大きさ・位置」によって判定されます。また、肝臓がんの手術では、根治性を高めるため、枝分かれしていく血管(門脈)の広がりを考慮した「解剖学的切除」が行われます。最近は腹腔鏡下手術による肝臓切除も、行われるようになっています。切除手術は、がんを確実に取り除けるという点では、最も優れた治療法ですが、患者さんの身体的な負担が大きいため、入院期間も比較的長くなります。

肝臓の機能判定

 肝機能を調べる基本的な検査は血液検査です。血液中のタンパク質の一種「アルブミン」量や、血液の固まりやすさである凝固能の指標となる「プロトロンビン活性値」を調べることで肝機能の状態がわかります。

 またICG(インドシアニングリーン)という検査薬を使った「ICG停滞率テスト」が行われます。体重に見合った量のICGを注射し、15分後に血液を採取して、どれだけ肝臓がICGを排泄できたかを調べます。肝機能が低下しているほど、肝臓での取り込みと排泄が遅れるため血液中の量が高いままになります。ICGが体内に残っている割合が10%未満なら肝機能が正常と判定され、肝臓を3分の2まで切除することができます。10~19%なら3分の1程度、20~30%未満なら、6分の1、30%以上では、病変のみの切除となります。

がんの数・大きさ・位置の判定

 肝癌診療ガイドライン2021年版では、がんの個数が1~3個の場合に切除手術が推奨されています。がんが1個の場合と、1個でも腫瘍径が3cmを超える場合は、切除手術が第1選択とされています。病変の位置に関しては、肝臓の深いところにあるほど、肝臓の切除量が多くなるため、肝機能が悪い患者さんでは切除ができないと判定されることもあります。また、主要な血管などに侵襲がある場合、切除可能かどうかは侵襲の程度により判定されます。

肝臓がんのラジオ波焼灼法

 ラジオ波焼灼法は、超音波でがんの位置を確認しながら電極付きの針を差し込み、針先から照射するラジオ波の熱でがんを死滅させる治療法です。ラジオ波の熱は60℃と比較的低温です。がん細胞は50℃で死滅するため、焼き殺すというより熱で凝固させて死滅させるというイメージです。

 ラジオ波焼灼法の最大のメリットは、手術と比べて体への負担が少ないことです。針を刺す際の傷口は5mm程度で、1回の焼灼時間は8~12分ほどです。治療は局所麻酔下で行われ、通常、治療終了後2時間後から飲水が可能になり、6時間後から歩行も可能です。

 肝癌診療ガイドライン2021年版では、がんの個数が1~3個で腫瘍径が3cm以内での場合に、切除手術とラジオ波焼灼法が治療選択として推奨されています。

肝臓がんの肝動脈塞栓療法

 肝動脈塞栓療法(TAE)は、肝動脈にカテーテルを入れ、肝動脈を詰まらせることでがん細胞への血流を遮断して兵糧攻めにする治療法です。また、肝動脈塞栓療法と同様に肝動脈にカテーテルを入れ、抗がん剤とがん細胞に取り込まれやすい造影剤を投与し、肝動脈を詰まらせる物質を注入する肝動脈化学塞栓療法(TACE)があります。

 メリットは身体的な負担が軽いため肝機能や全身状態が良くない患者さんでも行うことができることです。ただし、切除手術と比べると再発リスクは高くなります。

 がんの個数が1~3個で腫瘍径が3cmを超える場合で、切除手術ができない患者さんに対して行われます。また、4個以上または脈管侵襲があり切除できない患者さんの治療選択となります。

肝臓がんの薬物療法

 手術などの局所療法が行えない患者さんに対して、全身治療として薬物療法が行われます。薬物療法は、「肝動注化学療法」と「免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使った薬物治療」があります。

肝動注化学療法

 肝動注化学療法は、脚の付け根部分などから血管にカテーテルを入れ肝動脈にまで送り込み、抗がん剤を注入する治療法です。肝外転移や脈管侵襲がなく、がんの個数が4個以上の患者さんで、肝動脈塞栓療法や肝動脈化学塞栓療法が適応とならない場合の、第2選択として行われます。

免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬

 肝細胞がんに対する薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬1剤と分子標的薬6剤から適する薬剤が選択され使用されます。

 外科手術、肝移植、ラジオ波焼灼法、肝動脈塞栓療法、肝動脈化学塞栓療法などが適応にならず、全身状態が良好かつChild-Pugh分類Aの患者さんに対して、これらの薬剤による薬物療法が推奨されています。1次治療では、自己免疫性疾患の有無により、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の適応となるかが判定されます。自己免疫性の疾患がある場合は、適応とならないため、ソラフェニブもしくはレンバチニブによる治療が選択されます。

 アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法後に、進行・増悪した場合の2次治療では、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブのいずれかの分子標的薬による治療が行われます。

 1次治療としてソラフェニブによる治療を受けた患者さんの2次治療では、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブのいずれかの分子標的薬による治療が行われます。

 1次治療としてレンバチニブによる治療を受けた患者さんの2次治療では、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、カボザレゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブのいずれかの分子標的薬による治療が行われます。

 2次治療としてソラフェニブによる治療後に進行が認められ、ソラフェニブの治療に忍容性を示したChild-Pugh分類Aの患者さんでは、レゴラフェニブが推奨されています。また、ソラフェニブ治療後に進行や副作用により治療が中止され、Child-Pugh分類A でAFP400ng/mL以上の場合は、ラムシルマブが推奨されています。ソラフェニブの治療歴があり、全身薬部治療法後に増悪したChild-Pugh分類Aの患者さんに対しては、カボザンチニブが推奨されています。

肝細胞がんの薬物療法アルゴリズム
肝細胞がんの薬物療法アルゴリズム
出典:出典:一般社団法人日本肝臓学会 肝がん診療ガイドライン2021年版.第7章 薬物療法.薬物療法アルゴリズムより作成

肝臓がんの肝移植

 Child-Pugh分類Cと判定され、「ミラノ基準」あるいは「5-5-500基準」内と判定された患者さんは、肝移植が考慮されます。がん自体の摘出とともにがんが発生するもととなっている肝硬変も治療できる治療法です。

 ミラノ基準は、腫瘍数が3個以下で腫瘍径が3cm以内、もしくは腫瘍数が1個で、腫瘍径が5cm以内です。

 5-5-500基準は、遠隔転移や脈管侵襲がなく、腫瘍径5cm以内かつ腫瘍数が5個以内かつAFP値500ng/ml以下です。

肝臓がんの放射線治療

 体幹部定位放射線治療は、1回に大量の放射線を照射することで、3~10回という少ない照射回数で行われます。1回の治療は30分程度で、治療期間は3~12日程度です。比較的小さな腫瘍を対象に、高精度に狙いを定めて治療するため、大線量を照射する範囲は小さく、そのため短期間に苦痛なく外来通院でも行える、患者さんにやさしいとされる治療法です。

 肝癌診療ガイドライン2021年版では、脈管侵襲にかかわらずがんの個数が1~3個の患者さんで、切除手術やラジオ波焼灼法など穿刺局所療法が困難な場合、Child-Pugh分類A~B(7点)、腫瘍径が5cm以下なら体幹部定位放射線治療を行ってもよいとされています。また、切除手術や穿刺局所療法が困難な場合、陽子線や重粒子線による粒子線治療を行ってもよいとされています。

 骨転移に対する疼痛緩和を目的に、放射線治療が推奨されています。また、脳転移に対しても放射線治療が推奨されています。

参考文献
日本肝臓学会 肝臓がん診療ガイドライン改訂委員会編.膵癌診療ガイドライン2019年版.金原出版

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