リンパ浮腫の検査・診断

 リンパ浮腫の検査、診断、ステージ分類などを紹介します。

リンパ浮腫の検査

 リンパ浮腫の確定診断で最も有用とされている検査として、リンパシンチグラフィがあります。リンパシンチグラフィは、外科的治療の前後の評価としても行われことがあります。インドシアニングリーン(医療診断に使用されるシアニン色素)を用いたリンパ管の造影検査は、体表から2cm程度の深さまでならリンパ管の状態を観察することができます。また、超音波検査は、簡便で非侵襲的に皮膚下の水分の有無の程度を調べることができます。

 併存疾患や虚血肢※1の除外診断、鑑別診断を行うための検査として、CT検査、MRI検査、上肢・足関節血圧比検査、生体電気インビーダンス法※2での検査などが行われます。

 他疾患との鑑別診断を行うための検査として、血液生化学検査、胸部レントゲン検査、心電図検査。超音波検査などが行われます。

リンパ浮腫の検査一覧

確定診断
(機能、重症度、解剖学的位置の確認など)
リンパシンチグラフィ
SPECT-CTリンパシンチグラフィ
ICGを用いた蛍光リンパ管造影
MRリンパ管造影
局所の超音波検査
病状の確認
併存疾患の除外
鑑別診断
CT検査
MRI検査
上腕・足関節血圧比
生体電気インビーダンス法
他疾患との鑑別診断血液生化学検査
胸部レントゲン検査
心電図検査
超音波検査(心臓・血管・腹部・骨盤内など)

赤文字は、2024年2月現在、リンパ浮腫の診断方法としては日本では保険適用外。
出典:リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版.総論.表2より作成

※1動脈硬化によって動脈が狭くなったり詰まったりして、血行障害をおこす閉塞性動脈硬化症です。

※2からだに微弱な電流を流し、その際の電気の流れやすさを計測することで体組成を推定する方法。

リンパ浮腫の鑑別・確定診断

 片側性の浮腫は、以下の疾患で起こることがあります。

  • 急性深部静脈血栓症
  • 静脈血栓症後遺症
  • 関節炎
  • がんの存在または再発

 また、両側性の浮腫は、以下の疾患で起こることがあります。

  • うっ血性心不全
  • 慢性静脈機能不全症
  • 廃用性浮腫、うっ血性浮腫
  • 肝機能障害
  • 腎機能障害
  • 低タンパク血症
  • 甲状腺機能低下/粘液水腫
  • 薬剤の副作用
  • 脂肪性浮腫

 そのため、リンパ浮腫の確定診断では、まず浮腫が起こる全ての疾患との鑑別診断が行われます。ほとんどの場合、鑑別診断では病歴が診断材料となるため問診が重要とされています。他の疾患による浮腫が除外されたら、リンパシンチグラフィによる検査で確定診断が行われます。

リンパ浮腫のステージ分類

 リンパ浮腫のステージ分類は、複数の基準がありますが、リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版では、国際リンパ学会分類を採用しています。

 国際リンパ学会分類では、ステージ0、1、2、2後期、3の5段階に分類されます。

リンパ浮腫のステージ分類(国際リンパ学会)

ステージ病態
0リンパ液輸送が障害されているが、浮腫が明らかでない潜在性または無症候性の病態。
1比較的タンパク質成分が多い組織間液が貯留しているが、まだ初期であり、四肢を挙げることにより軽減する。圧痕がみられることもある。
2四肢の挙上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり、圧痕がはっきりする。
2後期組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。
3圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮病のほか、アカントーシス(表皮肥厚)、脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。

出典:リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版.総論.表3より作成

参考文献:日本リンパ浮腫学会編.リンパ浮腫診療ガイドライン2024年版.金原出版

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